もう、四半世紀前のことになるだろうか、震災で被災した仙台の近郊の小牛田、栗駒山にあった廃校を利用した縫製工場で、「ストーン・ウォッシュ・ジーンズ」の対米向けの生産・輸出を手がけていた頃、品質の良い、本物、付加価値のある商品は、必ずや、消費者に、受け入れられると確信を持ち、シアトルで、Brittania Jeansと商談に、望んだものである。(その頃は、未だ、あのGAPも、創設者達も若く、小さな会社だったが、、、)順調に数量が伸び始めた矢先に、メキシコ製、香港製の所謂、まがい物、外側の見てくれだけで、要するに、素材の善し悪しではなくて、外見のみで、「一発勝負」する商品が、出回り始めていたことが、商談を通じて、分かった。我々は、「王道」で、Basic, Authentic に、「本物志向」で、勝負するんだと、息巻いていたものである。未だ、円のレートが、305円の時代であった。それがアッという間に、250円、210円、終いには、180円にまで、急激な円高に、見舞われた。これに、反比例するかのように、海外生産品は、勢いを増し、結局、今で謂う「Fast Fashion」が、市場を席捲し、我々の商品は、窮地に、追い込まれた。成程、世の中の動きを、見ると、昨今の世界的な有名ブランドによる「Fast Fashion」の進出は、確かに、うなずけるものがある。(昔に較べると、品質、縫製技術も、格段に、向上している)、レナウンが、中国企業の軍門に降り、当時、大枚をはたいて買ったアクアスキュータムのコートも、今や、タンスの肥やしになり果てている。透明のビニール傘が、打ち捨てられているのを見る度に、往事のことが、偲ばれる。未だに,私は、ビニール傘を買うことに、抵抗を覚えてしまう。とうとう、円は、80円を割り込んだようだ。そして、工場で働いていた人達は、震災に、見舞われていないだろうか、雇用は大丈夫だろうかと、思わずにはいられない。