【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

犯罪者の人権/『トロール・ミル(上)』

2008-09-13 18:20:37 | Weblog
 呼び捨てにせずに「容疑者」をつける、とかの話ではありません。
 かつて豊田商事事件というのがありまして、結局うやむやに終わってしまったのですが、それからしばらくしてからやはり同様の手口で詐欺を働いて逮捕された人間が何人か以前豊田商事で仕事をしていた、と報じられたことがあるのです。つまり「会社」は解散しても、その会社を支えていた人間は違う「看板」の下で同じことをやったわけ。今回三笠フーズも解散になるでしょうが、それで何か本当に“解決”するとは私には思えません。美味しい思いをした人間(の何割か)はまた同じことを繰り返すはずです。楽して稼げる手口を覚えてしまったのですから。
 これを言うと「一度犯罪を犯したら烙印を押されるのか」と人権問題化されるのは目に見えてはいますが、ではそのまま犯罪の犠牲者が新たに生じるのを放置して良いのか、とも思います。こういった詐欺的事件で甘い汁を吸った人間たち(少なくともその会社の幹部)は(天下りの禁止期間のように)何十年かは似た業種には就職禁止処分、なんてのはできないものですかね。

【ただいま読書中】
トロール・ミル(上) 不気味な警告』キャサリン・ラングリッシュ 著、 金原瑞人・杉田七重 訳、 あかね書房、2005年、1300円(税別)

 あれから3年、15歳になったペールは「家族」を得てヒルデの家で暮らしています。ところが、ペールの親友で漁師のビヨルンの美しい妻チェルスティンが、生まれたばかりの赤ん坊をペールに押しつけて海に飛び込んでしまいます。まるでアザラシのような姿になって。その夜、誰もいないはずの水車小屋で水車が突然回り始めます。まるで悲鳴のような音を立てながら。そしてトロール山ではトロールたちが古いひからびた骨を大量に集め始めます。せっかく得た平穏な暮らしだったのに、ペールはまた何かのトラブルに巻き込まれてしまったようです。
 「灰色アザラシ」の話がここで語られます。海の中ではアザラシ、しかし陸に上がると毛皮を脱いで人間の姿になれるもの。ところがその毛皮を人間の男に隠されると、アザラシ女は男の言いなりです。妻になり子供も産みます。しかし、隠されていた毛皮を見つけたら、女はアザラシにもどって海に帰り、残された男の心は砕けるのです。(羽衣伝説を思い出しますが、この手の話はもしかしたら世界中にあるのでしょうか)

 ペールはヒルデが好きですが、ヒルデはビヨルンの弟アーネに惹かれている様子です。自分がただの居候ではなくて何者かであることを証明したいペールは、朽ちようとしている水車小屋を復活させることを考えます。村一番の粉ひきになれば、ヒルデの目がこちらに向くかもしれませんから。
 沼の底に住む妖精(または妖怪)グラニー・グリーンティースはなぜかチェルスティンの赤ん坊を欲しがります。家付きの妖精ニースはなぜか赤ん坊を毛嫌いします。そして……

 そうそう、この本には隠し絵が仕込まれています。読んでいるうちにそれに気がついた子どもは、きっと大喜びでしょうね。