【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

虎の威を借る狐/『馘首はならぬ仕事をつくれ』

2008-09-24 18:40:47 | Weblog
虎の威を借る狐/『馘首はならぬ仕事をつくれ』
 某府知事は、「知事の権力」を他人に向かって振り回すのがお好きなようですが、つまりは「自分の実力」「自分の魅力」ではなくて「知事の権力」の威を借りている行動と言えます。そういえば最近盛んに教育委員会を攻める(責める)のに使っている全国学力テストも国の行事として行われたのだから「国の威」も借りているようですね。

【ただいま読書中】
馘首はならぬ仕事をつくれ』辻本嘉明 著、 叢文社、2002年、1600円(税別)

 出光石油創業者出光佐三の伝記です。終戦後すぐ、外地からの引き揚げ者や復員で出光に人があふれる状況ででも仕事がない、幹部は人減らしを進言しますが、そこで出光佐三が言ったことばがタイトルになっています。
 一読、感銘を受けるのは「反統制」の姿勢を貫いているところです。戦前は国際資本・日本の元売り・軍部・政府などがそれぞれ自分の利益を最大にしようとするところで「反統制」で動くものですから、まあ、叩かれる叩かれる。それでも出光佐三は自分の道を歩み続けようとします。戦後も同じ。「統制」を使用とする相手が、GHQ・国際資本・日本の元売り・政府、に変わっただけでやってることは基本的に同じです。「利益追求」のためにカルテルでも何でも結ぶ大企業の姿勢は変わりませんし、その「利益」と結びつくあるいは「権限」を振り回したい官僚の態度も戦前戦後で変わりません。軍の戦略の問題もありますが、官僚があの戦争の“敗因”かも、とも思ってしまいます。

 で、普通は“創業者礼賛”で終わるよな、と思いながら読んでいたら、最終章でどんでんが。著者は取材を通して感じた疑問を列挙しているのです。かつての出光での労働争議での要求の一番目の項目が「就業規則の公表」であることを見ると、企業を手放しで礼賛するのはやめた方がよさそう、と思ってしまいます。「皇室を崇拝すること」とは就業規則には書きにくいだろうとは思いますけどね。