埋め立てが「人類の利益」なら、いっそ瀬戸内海を全部埋め立てちゃうのはどうでしょう。四国は文字通り“地続き”になるし、新しい広大な土地が出現するし、メリットがいっぱいありそうです。さすがに全部埋め立てるのは行きすぎでしょうから、東と西と、それから真ん中も埋め立てて、残った部分は“生け簀”として鯨などの養殖に使ったら有効利用できそうですよ。
【ただいま読書中】
『わが骨を動かす者へ ──1611年のシェイクスピア(下)』マイケル・グルーバー 著、 冨永和子 訳、 エンターーブレイン、2008年、1800円(税別)
ブレイスガードルはスパイとして首尾良くウィリアム・シェークスピアのブラックフライヤー座に潜り込みます。任務は宗教がらみ(清教徒vsローマカトリック)の陰謀(プラス神を冒瀆する「芝居」を潰すことも狙っています)。国王の命と思わせてシェークスピアに世間を騒がせる戯曲の脚本を書かせようというのです。
アメリカの著作権法(とそれに群がる知的財産権専門弁護士)についてきつい皮肉が登場します。「本来著作権法は、その著作物を生み出した人が利益を得る(他人がそれを不正使用することを防止する)ことを法の精神としているのに、実際の訴訟の過半数はその反対の方向に判決が出ている」と。さて、シェークスピアの時代には“著作権”はどうだったのでしょう? シェークスピアは「ハムレット」を10ポンドで売ったそうです。
ジェイクとクロセッティは、二人とも“詐欺”にあい、その真相を究明する過程で思わぬ交錯をします。二人はそれまで「好奇心」で動いていました。しかし、二人を思うように誘導しまんまと欺し物笑いの種にした黒幕に対する「復讐劇」もまた動き始めます。さらに活劇も始まります。二人があって情報交換をしている場にギャングどもが銃を片手に乱入し、狭い室内で銃撃戦。しかし、武器を持ったギャングの行動があまりに間抜けすぎますな。
やがて一行はイギリスに出向きます。隠された謎のヒントを得るために。ただしそこでも彼らには尾行がつきます。
上巻の感想でジェイクには集中力の障害があるのか、と書きましたが、下巻でもその傾向は顕著で、せっかく目の前に広げられた貴重な情報から実に簡単に(それも何回も)注意を逸らしてしまいます。いくらなんでも、それはやり過ぎだろう、と思うくらい。
1611年の世界でも動きがあります。陰謀は露見しかけ、シェイクスピアのところでスパイしていたブレイスガードルは窮地に追いやられます。シェイクスピアは新しい脚本を焼こうとしますが、彼に心服するようになっていたプレイスガードルは、政治に翻弄されて美しい作品が失われることを惜しみ、秘密の場所に隠します。
そして謎解きですが、あまりにあっさりと“真相”が露見して、もの足りません。また、設定が“贅沢”すぎます。なにしろ「巨大な敵に追われる素人」が助けを求めるために(家族・友人として)プライベートで独自に使える人材が、警官・弁護士・司祭・街のチンピラ・情報検索のエキスパート・暗黒街とのコネ・英文学の教授・古文書の専門家・暗号解読の専門家……いくらフィクションでもここまで揃えるのはちょっと作りすぎと言って良いでしょう。
なお、プロットとしても作品の構成としても「小さなウソに拘泥して大きなウソをうまくつけなかった」本ですが、訳文にも問題が。編集が甘い本で、キーワードである「暗号」があちこちで「暗合」になっていたり、脱字も目立ちます。そういった細部が気になる人は読まない方がよいかもしれません。我慢して読んで最後にとっても嬉しい気分になれるかどうかは微妙ですから。
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『わが骨を動かす者へ ──1611年のシェイクスピア(下)』マイケル・グルーバー 著、 冨永和子 訳、 エンターーブレイン、2008年、1800円(税別)
ブレイスガードルはスパイとして首尾良くウィリアム・シェークスピアのブラックフライヤー座に潜り込みます。任務は宗教がらみ(清教徒vsローマカトリック)の陰謀(プラス神を冒瀆する「芝居」を潰すことも狙っています)。国王の命と思わせてシェークスピアに世間を騒がせる戯曲の脚本を書かせようというのです。
アメリカの著作権法(とそれに群がる知的財産権専門弁護士)についてきつい皮肉が登場します。「本来著作権法は、その著作物を生み出した人が利益を得る(他人がそれを不正使用することを防止する)ことを法の精神としているのに、実際の訴訟の過半数はその反対の方向に判決が出ている」と。さて、シェークスピアの時代には“著作権”はどうだったのでしょう? シェークスピアは「ハムレット」を10ポンドで売ったそうです。
ジェイクとクロセッティは、二人とも“詐欺”にあい、その真相を究明する過程で思わぬ交錯をします。二人はそれまで「好奇心」で動いていました。しかし、二人を思うように誘導しまんまと欺し物笑いの種にした黒幕に対する「復讐劇」もまた動き始めます。さらに活劇も始まります。二人があって情報交換をしている場にギャングどもが銃を片手に乱入し、狭い室内で銃撃戦。しかし、武器を持ったギャングの行動があまりに間抜けすぎますな。
やがて一行はイギリスに出向きます。隠された謎のヒントを得るために。ただしそこでも彼らには尾行がつきます。
上巻の感想でジェイクには集中力の障害があるのか、と書きましたが、下巻でもその傾向は顕著で、せっかく目の前に広げられた貴重な情報から実に簡単に(それも何回も)注意を逸らしてしまいます。いくらなんでも、それはやり過ぎだろう、と思うくらい。
1611年の世界でも動きがあります。陰謀は露見しかけ、シェイクスピアのところでスパイしていたブレイスガードルは窮地に追いやられます。シェイクスピアは新しい脚本を焼こうとしますが、彼に心服するようになっていたプレイスガードルは、政治に翻弄されて美しい作品が失われることを惜しみ、秘密の場所に隠します。
そして謎解きですが、あまりにあっさりと“真相”が露見して、もの足りません。また、設定が“贅沢”すぎます。なにしろ「巨大な敵に追われる素人」が助けを求めるために(家族・友人として)プライベートで独自に使える人材が、警官・弁護士・司祭・街のチンピラ・情報検索のエキスパート・暗黒街とのコネ・英文学の教授・古文書の専門家・暗号解読の専門家……いくらフィクションでもここまで揃えるのはちょっと作りすぎと言って良いでしょう。
なお、プロットとしても作品の構成としても「小さなウソに拘泥して大きなウソをうまくつけなかった」本ですが、訳文にも問題が。編集が甘い本で、キーワードである「暗号」があちこちで「暗合」になっていたり、脱字も目立ちます。そういった細部が気になる人は読まない方がよいかもしれません。我慢して読んで最後にとっても嬉しい気分になれるかどうかは微妙ですから。