【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

協議

2009-12-08 18:58:23 | Weblog
 6ヶ国協議を巡る調整や日本の連立協議を見ていると、どうして「小さい」ところがあんなに全体を振り回せるんだろう、と感じません? 自己主張ばっかりで「協議」をする気がないのに「協議の場」にいるのも不思議ですが。

【ただいま読書中】
サンウィング ──銀翼のコウモリ(2)』ケネス・オッペル 著、 嶋田水子 訳、 小学館、2004年、1600円(税別)

 父親の行方を求めて冬の荒野を飛んだシェードたちは「パラダイス」に到着します。寒さは遮られ安全で餌の虫は豊富な人間が作った施設です。そこでは太陽を眺めることさえできるのです。しかしシェードは苛立ちます。そこに父親がいなかったこともありますが、「与えられた快適」が自分が求めていたものとは明らかに違うと思えるのです。しかもコウモリたちは外から切り離されてしまい脱出はできない状態です。しかし仲間たちは「なにがそんなに不満なんだ」と現状に満足しています。フクロウに襲われることもなく、狩りの苦労もないのですから。
 「パラダイス」は、人間が作った研究所でした。コウモリやフクロウなどが集められて、研究材料となっていたのです。シェードが戦うべき相手は、フクロウや鳥たちではなくて、人間でした。(それと、人間に与えられる不自由さや苦痛をすべて「人間はコウモリの味方だ。切り刻まれたり変な装置を体につけられたりする苦痛などもすべて“計画”の一部なのだ」と人間に盲従しようとするコウモリたちも、ある意味“敵”と言えるでしょう) ちなみにその「装置」は発火装置です。第二次世界大戦中にコウモリを軍事利用する(小さな爆弾をくくりつけて敵の施設に送りこむ)研究が行なわれていたのでした。
 シェードは「ジャングル」に放り出されます。そこは肉食コウモリゴスの故郷でした。そしてゴスも“帰郷”していました。ゴスは群れを率いて北上し、自分をひどい目に遭わせた人間と北のコウモリたちに復讐しようと考えます。ややこしいことに、コウモリの神ソッソとノクターナの間にも争いがあり、結局、神々の争い・人間同士の戦争・空飛ぶものの戦争、といくつもの戦争がそれぞれ影響し合って進行していきます。北のコウモリたちはフクロウに冬眠場所を襲われ、南に避難を始めます。南では人間の戦争の影響でジャングルは荒らされ、動物たちは北へ避難を始めます。そして肉食コウモリたちは、神の指示に従いそれを追う準備を始めます。数日後に迫った日食に合わせて、彼らは重要な儀式を行なわなければならないのです。フクロウは北のコウモリを全滅させるつもりです。そして肉食コウモリは、人間からこの世界の支配権を奪いフクロウも北のコウモリも全滅させるつもりです。どちらにしても北のコウモリには逃げ場がありません。しかし、意外な味方が現れます。

 シェードは成長をしています。自分だけのことではなくて「世界」のことを考えるようになり、彩翼コウモリのマリーナに恋心を抱き、第一巻でシェードをいじめていた肉体派のチヌークとの間にも友情が芽生え(実はチヌークはシェードの頭の良さや機敏さをうらやましく思っていたことがこの巻になってわかります)、孤独に耐えて生きることが普通だと粋がっていたのが、本当に孤独になったときに泣くことができるようになります。自分のためではなくて、友のために。
 なんだか、コウモリに感情移入してしまうとは、ヘンテコな本です。褒め言葉ですけれど。