納税者はいわば国に金を出している「スポンサー」なのだから、その声(意向)を国がまるっきり無視するのはおかしい、と思いました。たとえば国がアンケートをして納税者の要望(「自分の税金は○○に優先的に使ってくれ」)を集計、それに前年度の納税額を係数としてかけて次の年度の税収入の使い道を決める、というシステムがあったら、面白そうに思いました。
ただ、これだと結局大口納税者、特に企業の声が国を動かすことになってしまいますね。ちょうど新聞が、個人購買者よりは大口スポンサーの方を向いて動くのと同じように。う~む、それではあまり嬉しい国になるとは思えませんね。これは困った。
【ただいま読書中】『杉(2)』有岡利幸 著、 法政大学出版局(ものと人間の文化史149-1)、2010年、2700円(税別)
強風が吹く地域では防風林や屋敷林の樹種として、マツやスギがよく使われています。本書に収載されている分布地図を見ると、青森から九州南部まで、日本中にスギの屋敷林が分布していることがわかります。面白いのは、「屋敷林の木が大きいほど家格が高い」と江戸時代には言われていたこと。だから「田を売っても屋敷林は切るな」なんて意味のことばが言われていたそうです。しかし明治以降価値観が変化し、家屋も風に強くなり、屋敷林はその存在価値を失ってしまいます。
昔から日本には大木信仰がありましたが、杉の巨木は常緑でまっすぐ天に向かって伸びることから、神木として扱われることが多く、神社の参道が杉並木とか本殿周辺に杉林、という例は多くあります。神社の名前に「スギ(杉、椙、須岐、須義)」が使われているのは「全国神社名鑑」によると全国に24社あるそうです。(ちなみに「松」は65社、「桜」は22社) “零細”神社を含めたらもっとあることでしょう。
日本の各地に杉並木がありますが、日光の杉並木は特に有名です。4つの街道に総延長は37キロメートル、平成10年に直径30センチを越えるものだけで1万3000本を数え、ギネスブックには「世界一長い杉並木」で登録されているそうです。
江戸時代の船大工は、船の部位によって樹種を使い分けました。ただし帆柱は杉の独壇場だったそうです。水に濡れるところも杉板が活用されましたが、杉の丸太のどこから取った板かによっても使い分けがあったそうです。また、船大工は板ではなくて「木」で杉を購入しました。それの目利きであることも大工の腕の一部だったそうです。
はじめて組織的な杉植林が行なわれ始めたのは、室町時代の京都北山地方です。江戸時代~近代には全国各地で杉の造林が行なわれるようになりました。山林はもともと村の総有(全体での保有)でしたが、巨大な資本が必要な造林は村だけの手には負えません。したがって村外の資本が入ってくることになります。しかし地元の山林への愛着があるため、たとえば吉野では「借地林」(資本家に山を貸す。作業は地元が行なう。木からの利益は契約で分ける)という制度が始まりました。
最終章はスギ花粉症です。これについても面白いことがいろいろ書いてあります。「隣家が植えたスギが自分の花粉症の原因だから、切れ」訴訟なんてものまで起されているそうです。ただ、スギ花粉は確かにスギ花粉症を起しますが、それなら昔は花粉症がなかったのはなぜか、昭和の末期頃の調査で国道沿いに花粉症が多かったのはなぜか、など、花粉以外の“原因”についても推測が述べられます。困ったことに花粉症は増えています。東京都では、1980年代半ばには10%くらいでしたが、96年には約20%になっています。特に子どもでの増加が目立つそうです。これは「自然が原因の病気」と単純に言えるものではなくて「現代社会の病気」として捉えた方が“対策”が立てやすいのかもしれません。なお、昨年富山県が発表した「無花粉スギ」の話題も載っています。
人気ブログランキングに参加しています。応援クリックをお願いします。
ただ、これだと結局大口納税者、特に企業の声が国を動かすことになってしまいますね。ちょうど新聞が、個人購買者よりは大口スポンサーの方を向いて動くのと同じように。う~む、それではあまり嬉しい国になるとは思えませんね。これは困った。
【ただいま読書中】『杉(2)』有岡利幸 著、 法政大学出版局(ものと人間の文化史149-1)、2010年、2700円(税別)
強風が吹く地域では防風林や屋敷林の樹種として、マツやスギがよく使われています。本書に収載されている分布地図を見ると、青森から九州南部まで、日本中にスギの屋敷林が分布していることがわかります。面白いのは、「屋敷林の木が大きいほど家格が高い」と江戸時代には言われていたこと。だから「田を売っても屋敷林は切るな」なんて意味のことばが言われていたそうです。しかし明治以降価値観が変化し、家屋も風に強くなり、屋敷林はその存在価値を失ってしまいます。
昔から日本には大木信仰がありましたが、杉の巨木は常緑でまっすぐ天に向かって伸びることから、神木として扱われることが多く、神社の参道が杉並木とか本殿周辺に杉林、という例は多くあります。神社の名前に「スギ(杉、椙、須岐、須義)」が使われているのは「全国神社名鑑」によると全国に24社あるそうです。(ちなみに「松」は65社、「桜」は22社) “零細”神社を含めたらもっとあることでしょう。
日本の各地に杉並木がありますが、日光の杉並木は特に有名です。4つの街道に総延長は37キロメートル、平成10年に直径30センチを越えるものだけで1万3000本を数え、ギネスブックには「世界一長い杉並木」で登録されているそうです。
江戸時代の船大工は、船の部位によって樹種を使い分けました。ただし帆柱は杉の独壇場だったそうです。水に濡れるところも杉板が活用されましたが、杉の丸太のどこから取った板かによっても使い分けがあったそうです。また、船大工は板ではなくて「木」で杉を購入しました。それの目利きであることも大工の腕の一部だったそうです。
はじめて組織的な杉植林が行なわれ始めたのは、室町時代の京都北山地方です。江戸時代~近代には全国各地で杉の造林が行なわれるようになりました。山林はもともと村の総有(全体での保有)でしたが、巨大な資本が必要な造林は村だけの手には負えません。したがって村外の資本が入ってくることになります。しかし地元の山林への愛着があるため、たとえば吉野では「借地林」(資本家に山を貸す。作業は地元が行なう。木からの利益は契約で分ける)という制度が始まりました。
最終章はスギ花粉症です。これについても面白いことがいろいろ書いてあります。「隣家が植えたスギが自分の花粉症の原因だから、切れ」訴訟なんてものまで起されているそうです。ただ、スギ花粉は確かにスギ花粉症を起しますが、それなら昔は花粉症がなかったのはなぜか、昭和の末期頃の調査で国道沿いに花粉症が多かったのはなぜか、など、花粉以外の“原因”についても推測が述べられます。困ったことに花粉症は増えています。東京都では、1980年代半ばには10%くらいでしたが、96年には約20%になっています。特に子どもでの増加が目立つそうです。これは「自然が原因の病気」と単純に言えるものではなくて「現代社会の病気」として捉えた方が“対策”が立てやすいのかもしれません。なお、昨年富山県が発表した「無花粉スギ」の話題も載っています。
人気ブログランキングに参加しています。応援クリックをお願いします。