【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

一人

2010-05-17 18:41:11 | Weblog
「一人わびしく部屋で食事」というのはよく言われる言葉ですが、ではその逆で「一人朗らかに部屋で食事」をしているのは、どうでしょう? 一人でどんちゃんひたすら明るく食事をしている光景というのは、それはそれでちょっと怖いものを感じるのですが……

【ただいま読書中】『こちら異星人対策局』ゴードン・R・ディクソン 著、 斉藤伯好 訳、 早川書房(ハヤカワ文庫SF1224)、1998年、680円(税別)

銀河系には(知られている限りで)927の種族が住み、うち43が「進んだ種族」として銀河評議会を作っていました。
ファーストコンタクト後、地球には異星人対策局が作られました。そこにこれまでに例がない身分の高いオプリンキア人レジラが地球にやってくるという報せが。その接待を仰せつかったのが、さえない三等事務官のトム・ペアレントと妻のルーシー(と犬のレックス)。レジラは、ペットを飼っているごく普通の地球人の家族の家で一日を過ごしたい、とご所望なのです。
地球には、この“チャンス”を利用して、“後進星”の地球の地位を向上させよう、という目論見があります(戦後、日本が国連に入れて欲しかったのと似た状況です。ただし「差」はとてつもなく大きいのですが。オプリンキア人など、数万年前から宇宙旅行をしているのですから)。ただし防衛局は「異星人はなにか悪いことを企んでいるに違いない」と思いこんでいます。
で次の朝、二人は平凡な犬のレックスがテレパシーを使えるようになっているのを発見します。「ぼく良い子、フリスビーする?」と。大変な事態の勃発です。
ところがこれは、ただのオープニングにすぎませんでした。銀河でも有数の独裁帝国ジャクタルの大使館でのパーティーでは「ラ・マルセイエーズ」の大合唱が行なわれ、そのせいでトムとルーシー(とレックス)は無任所大使として、地球人で初めて銀河に旅立つことになってしまったのです。ところが“初仕事”は、暗殺者ギルドに強制徴募されて見習い暗殺者になること。そして銀河評議会の会場で決闘の申し込み。話はどんどんはちゃめちゃになっていきます。
ただ、銀河にでてからは、トムが論理と交渉と暴力の役割を分担してしまい、ルーシーの出番ががくんと減ってしまうのが残念です。取りあえずルーシーの“武器”は、超能力にまで昇華した“女の直感”。原理主義のフェミニストだったらそのへんに目くじらを立てるかもしれませんが、これだけはちゃめちゃに異星人の文化を紹介している本ですから、地球上の「男と女」という“異文化”のパロディーも狙っている、と読むのが正解なのかもしれません。本書では「地上最強のペア」で片付けられていますが。
さて、地球の抱える大問題を解決するためにクスクスシトル人の抱えているシャーク人問題を解決した二人は、そこからさらにもっと重大な問題、銀河全体を揺るがす(銀河の全生命が絶滅するかどうかの)問題に巻き込まれていきます。いやもう無茶苦茶でございまする。読んでいくうちに頭が気持ちよく空っぽになってしまいそうです。ほら、たたくとカーンといい音が。
……しかしレックスは、とうとう最後までフリスビーで遊んでもらえませんでした。可哀想だなあ。