汚いことばや汚い行動をする子どもは、それをテレビや漫画からだけではなくて、身近な大人からも学んでいるはずです。特に「自分は悪くない。子どもが悪くなったのは、テレビが諸悪の根源」と言いたがる親からは、大量に学んでいることでしょう。
【ただいま読書中】『パピヨン(下)』アンリ・シャリエール 著、 平井啓之 訳、 河出文庫、1988年、600円
パピヨンは、精神病になったふりをしてまんまと看守と医者をだまして、病棟に潜り込みます。病棟からは容易に脱出できるので、そこから大樽を二つ縛りつけた筏にまたがって大西洋に出よう、というわけです。しかし荒浪で樽は壊れ、相棒は死んでしまいます。這々の体で病棟に舞い戻ったパピヨンは、少しずつ“正気”に戻り、こんどは悪魔島へ移動します。ここは本来は政治犯のための島で、かつてはドレフュスの流刑地でもありました。
1941年、パピヨンは35歳になっています。捕まってから11年目。彼はまた脱獄の計画を練ります。こんどで9回目の脱獄を。
悪魔島の回りは荒磯で、泳いでの脱出は不可能とされていました。しかしパピヨンは、魚捕りを口実に島の回りを偵察し、一つのルートを発見します。まずは実験です。丈夫な麻袋に椰子の実を詰めたものを海に放り込むと、袋は引き波によって一度は沖に運ばれますが、すぐにまた島に打ち寄せられて岩にぶつかって木っ端微塵となりました。これではダメです。パピヨンは海を観察し続け、「7つめの波」が常に他の波より大きくそれが袋を島に投げ返すことを発見します。ならば、その「7つめの大波が砕けて引いていく流れに乗れば、沖に出られるはずです。念入りに実験を繰り返し、パピヨンはついに“それ”が可能である確信を得ます。しかも沖に出た袋はそのまま西(行きたい方向)に向かっています。
ついに脱走を決行。椰子の実を詰めた袋にまたがり、太陽にじりじりと焼かれながら、パピヨンはついに大陸に上陸します。しかしまだ「成功」ではありません。叢林の中を、誰にも見つからず、猛獣にも襲われず、「安全な地」まで移動しなければならないのです。まずパピヨンが目指すのは中国人専用監獄です。そこで早速仲間を得、こんどは本格的な船を手に入れて、さあ、出帆です。
そしてついに英領ギアナの首都ジョージタウンに上陸。戦前は強制送還をされましたが、今は戦時。パピヨンには幸いなことに、扱いが違っているのです。ただし、真っ当な商売で生きていくことは、大変です。パピヨンは仲間や恋人とさまざまな商売に手を出し、それぞれ成功を収めますが、やはりどうしても社会のはみ出しものとなってしまいます。パピヨンたちはジョージタウンからも脱走します。実はこれは重罪です。彼らは旅券をもっていないのですから。
嵐でボロボロになってたどり着いたのはヴェネズエラ。ここも様変わりしていました。以前は道路工事に使役されてからフランス流刑地に強制送還でしたが、戦時中は中立地帯。しかし「不審なフランス人(しかも徒刑場からの脱走者)」ということで、パピヨンたちはエル・ドラドの徒刑場に放り込まれてしまいます。しかしそこでもパピヨンは無駄働きをしません。川底の砂からダイヤモンドをいくつも見つけたりしています。
ヴェネズエラに革命が起き、ついにパピヨンは「自由」になります。1944年のことでした。そして彼の最後の「脱走」は、「反社会的な世界」から「真っ当な生活」への「脱走」でした。
パピヨン自体の人生も「強い物語」ですが、この物語のあちらこちらに散りばめられているいろいろな徒刑囚たちの人生もまた印象的です。「単なる犯罪者」はいないことが(犯罪者の目から)生き生きと描かれているという、珍しい本です。
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【ただいま読書中】『パピヨン(下)』アンリ・シャリエール 著、 平井啓之 訳、 河出文庫、1988年、600円
パピヨンは、精神病になったふりをしてまんまと看守と医者をだまして、病棟に潜り込みます。病棟からは容易に脱出できるので、そこから大樽を二つ縛りつけた筏にまたがって大西洋に出よう、というわけです。しかし荒浪で樽は壊れ、相棒は死んでしまいます。這々の体で病棟に舞い戻ったパピヨンは、少しずつ“正気”に戻り、こんどは悪魔島へ移動します。ここは本来は政治犯のための島で、かつてはドレフュスの流刑地でもありました。
1941年、パピヨンは35歳になっています。捕まってから11年目。彼はまた脱獄の計画を練ります。こんどで9回目の脱獄を。
悪魔島の回りは荒磯で、泳いでの脱出は不可能とされていました。しかしパピヨンは、魚捕りを口実に島の回りを偵察し、一つのルートを発見します。まずは実験です。丈夫な麻袋に椰子の実を詰めたものを海に放り込むと、袋は引き波によって一度は沖に運ばれますが、すぐにまた島に打ち寄せられて岩にぶつかって木っ端微塵となりました。これではダメです。パピヨンは海を観察し続け、「7つめの波」が常に他の波より大きくそれが袋を島に投げ返すことを発見します。ならば、その「7つめの大波が砕けて引いていく流れに乗れば、沖に出られるはずです。念入りに実験を繰り返し、パピヨンはついに“それ”が可能である確信を得ます。しかも沖に出た袋はそのまま西(行きたい方向)に向かっています。
ついに脱走を決行。椰子の実を詰めた袋にまたがり、太陽にじりじりと焼かれながら、パピヨンはついに大陸に上陸します。しかしまだ「成功」ではありません。叢林の中を、誰にも見つからず、猛獣にも襲われず、「安全な地」まで移動しなければならないのです。まずパピヨンが目指すのは中国人専用監獄です。そこで早速仲間を得、こんどは本格的な船を手に入れて、さあ、出帆です。
そしてついに英領ギアナの首都ジョージタウンに上陸。戦前は強制送還をされましたが、今は戦時。パピヨンには幸いなことに、扱いが違っているのです。ただし、真っ当な商売で生きていくことは、大変です。パピヨンは仲間や恋人とさまざまな商売に手を出し、それぞれ成功を収めますが、やはりどうしても社会のはみ出しものとなってしまいます。パピヨンたちはジョージタウンからも脱走します。実はこれは重罪です。彼らは旅券をもっていないのですから。
嵐でボロボロになってたどり着いたのはヴェネズエラ。ここも様変わりしていました。以前は道路工事に使役されてからフランス流刑地に強制送還でしたが、戦時中は中立地帯。しかし「不審なフランス人(しかも徒刑場からの脱走者)」ということで、パピヨンたちはエル・ドラドの徒刑場に放り込まれてしまいます。しかしそこでもパピヨンは無駄働きをしません。川底の砂からダイヤモンドをいくつも見つけたりしています。
ヴェネズエラに革命が起き、ついにパピヨンは「自由」になります。1944年のことでした。そして彼の最後の「脱走」は、「反社会的な世界」から「真っ当な生活」への「脱走」でした。
パピヨン自体の人生も「強い物語」ですが、この物語のあちらこちらに散りばめられているいろいろな徒刑囚たちの人生もまた印象的です。「単なる犯罪者」はいないことが(犯罪者の目から)生き生きと描かれているという、珍しい本です。
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