挫折を知らない人間は、どんな夢を抱くのでしょう。
世界征服?
【ただいま読書中】『剣嵐の大地(2) 氷と炎の歌3』ジョージ・R・R・マーティン 著、 岡部宏之 訳、 早川書房、2006年、2800円(税別)
死んだロバート王の命令にまだ忠誠を尽くしている軍団がいます。もうぼろぼろになっていますが。あるいは戦いに負けて膝を屈し、それまでの仲間から裏切り者呼ばわりをされる人もいます。反逆者として地下牢に放り込まれていたのに、突然貴族に列せられる人もいます。邪悪な魔女のはずなのに、人類の滅亡を防ぐために戦っている(かのように見える)人もいます。
そして失った王国を回復しようとするデーナリス・ターガリエンは、その途上の都市を攻略し続けます。目的は奴隷の解放。解放された奴隷たちはデーナリスを「母」と讃えます。彼女に従う人間はどんどん増え、あたりはさながら移動する王国のようになってきています。
エダード・スタークの子どもたちは(結婚させられた長女サンサ以外は)主に北部を移動し続け、その動線は時にきわどく接近することがあります。残念ながら交わることはないのですが。ただ、末っ子がずっと登場しません。これが何を意味しているのか……死んだのか、文字通りの伏線なのか、こちらにはまだわかりません。
さらには、それぞれの貴族はそれぞれの「王」に従っていたはずなのに、合従連衡が繰り返されて勢力図は複雑になり、放浪の軍団が事態をさらに悪化させます。もちろん陰謀は盛んに行なわれています。もう、誰が誰の味方なのか、わけがわかりません。旗印から味方と信じて近づいたら最近親玉と喧嘩別れをしたばかりで敵になっていた、なんてことが平然と繰り返されるのです。どの王国でも。戦国時代の習いとはいえ、これはしんどい状況です。情報不足の中で誰を信じるべきか瞬時に判断しなければならないのですから。「魔法の力」が欲しくなるのは、こういった時でしょう。別に魔力で天地を動かす必要はありません。少なくとも情報を仕入れることができたら大助かりなのです。
読者は幸いなことに、本書を読むのに魔法は必要としません。さまざまな局面で少しずつ情報を知らされます。ただし著者にじらされながら、ですが。「氷と炎の歌1」のときからずっと気になっていたジョン・スノウの母親のことも、ここでやっと名前が知らされます。ただしそれを知るのは、ジョンではなくてアリアですが。ただ、エダード・スタークの“恋物語”については、ブランも逃避行の途中に(中途半端に思わせぶりに)聞かされていることから見ると、けっこう世間には知られている様子です。知らないのはエダードの家族だけなのかも。
アリアがやっと兄と母親のすぐそば(まっすぐ歩けば数分間のところ)にたどり着いたとき、事件が勃発します。兄弟姉妹たちの動線は、またも交わりません。
一人の王が死に、そしてまた別の王が死にます。次に死ぬのは誰か? 暗い予感に満ちて物語は進んでいきます。「おう、あんた、何にも知らないんだね」と誰かに囁かれながら、読者はよろよろとそれについていきます。
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【ただいま読書中】『剣嵐の大地(2) 氷と炎の歌3』ジョージ・R・R・マーティン 著、 岡部宏之 訳、 早川書房、2006年、2800円(税別)
死んだロバート王の命令にまだ忠誠を尽くしている軍団がいます。もうぼろぼろになっていますが。あるいは戦いに負けて膝を屈し、それまでの仲間から裏切り者呼ばわりをされる人もいます。反逆者として地下牢に放り込まれていたのに、突然貴族に列せられる人もいます。邪悪な魔女のはずなのに、人類の滅亡を防ぐために戦っている(かのように見える)人もいます。
そして失った王国を回復しようとするデーナリス・ターガリエンは、その途上の都市を攻略し続けます。目的は奴隷の解放。解放された奴隷たちはデーナリスを「母」と讃えます。彼女に従う人間はどんどん増え、あたりはさながら移動する王国のようになってきています。
エダード・スタークの子どもたちは(結婚させられた長女サンサ以外は)主に北部を移動し続け、その動線は時にきわどく接近することがあります。残念ながら交わることはないのですが。ただ、末っ子がずっと登場しません。これが何を意味しているのか……死んだのか、文字通りの伏線なのか、こちらにはまだわかりません。
さらには、それぞれの貴族はそれぞれの「王」に従っていたはずなのに、合従連衡が繰り返されて勢力図は複雑になり、放浪の軍団が事態をさらに悪化させます。もちろん陰謀は盛んに行なわれています。もう、誰が誰の味方なのか、わけがわかりません。旗印から味方と信じて近づいたら最近親玉と喧嘩別れをしたばかりで敵になっていた、なんてことが平然と繰り返されるのです。どの王国でも。戦国時代の習いとはいえ、これはしんどい状況です。情報不足の中で誰を信じるべきか瞬時に判断しなければならないのですから。「魔法の力」が欲しくなるのは、こういった時でしょう。別に魔力で天地を動かす必要はありません。少なくとも情報を仕入れることができたら大助かりなのです。
読者は幸いなことに、本書を読むのに魔法は必要としません。さまざまな局面で少しずつ情報を知らされます。ただし著者にじらされながら、ですが。「氷と炎の歌1」のときからずっと気になっていたジョン・スノウの母親のことも、ここでやっと名前が知らされます。ただしそれを知るのは、ジョンではなくてアリアですが。ただ、エダード・スタークの“恋物語”については、ブランも逃避行の途中に(中途半端に思わせぶりに)聞かされていることから見ると、けっこう世間には知られている様子です。知らないのはエダードの家族だけなのかも。
アリアがやっと兄と母親のすぐそば(まっすぐ歩けば数分間のところ)にたどり着いたとき、事件が勃発します。兄弟姉妹たちの動線は、またも交わりません。
一人の王が死に、そしてまた別の王が死にます。次に死ぬのは誰か? 暗い予感に満ちて物語は進んでいきます。「おう、あんた、何にも知らないんだね」と誰かに囁かれながら、読者はよろよろとそれについていきます。
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