【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

しっかり

2012-02-12 17:41:02 | Weblog

 政治家が「これからしっかりやりたい」と口に出して言うということは、過去と現在の行動面では「しっかりやっていなかった」ことを意味しているようです。
 くりかえし「しっかり」と言っている場合は、言い続けている間中「しっかりやっていなかった」ようです。
 一国民としては別に精神論で「しっかり」やる必要を認めません。必要なものを過不足なく遅滞なくふつうにやってもらったら、それで十分です。

【ただいま読書中】『世界謎物語』ダニエル・コーエン 著、 岡達子 訳、 社会思想社(教養文庫1340)、1990年、505円(税別)

 世界のあちこちから「怪奇」について集めた本です。ただ「こんな怪奇現象がある。その影にはこんな真相が」といった本ではありません。「事実」は「事実」として扱い、そうでないものはそうでないとして「怪奇」になるべく理性の光を当てようとしています。だからといって「こんなのは非科学的だ」と一刀両断するわけでもありません。「こんな怪奇がかつてこの世に存在した」という「事実」を記録すると同時に、その怪奇に関わった人々がどのように動いたかに著者は関心を示します。たとえば「エル・ドラド」の章で語られるのは「エル・ドラドを求めた探険者たちの物語」です。
 「南極大陸が描かれている古代の地図」「ナスカの地上絵」「アーサー王の実在性」など魅力的な話が続きます。「ピラミッド」の項では、「ピラミッド学」という「学問、というかにせ学問」が紹介されます。ピラミッドの各部の寸法を測定したら、ノアの洪水の日付・キリスト生誕の時刻はおろか、未来もわかる、のだそうです。古代エジプト人もびっくり、ですね。
 「謎の人びと」もすごいラインナップです。イクナアトン、アナスタシア、カリョストロ、ブラヴァツキー夫人、ニコラ・フラメル、女教皇ジョーン、サン・ジェルマン伯、水脈探知人……あら、なぜか最後にアインシュタイン(の脳)。
 「錬金術」「カバラ」「魔術書」「インドの綱奇術」「空中浮遊」「バラ十字団」「魔女信仰」……これだけ羅列されると、なんだか「怪奇さ」が薄まってしまうように思えてきます。
 「怪奇」というのは「現象」だと私は思っていました。しかし、本書を読むと、「怪奇」は「他人と共有可能(あるいは不可能)な現象」だと思いを変えました。その「現象」が単独で存在するのではなくて、「それが存在する」と主張する人が周りの人間とコミュニケーションをするからはじめて「存在」できるのだ、と。誰も知らないものは「怪奇」以前に「存在しないのと同義」なのですから。