【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

余力

2012-08-05 19:04:30 | Weblog

 21世紀に19世紀型の戦争を起こすとして、植民地をきちんと経営する余力がある国って、現在の地球にどのくらいあるでしょう? 少なくとも今の日本は、無理ですね。自分の国でさえきちんと経営できていないのですから。

【ただいま読書中】『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』林總 著、 ダイヤモンド社、2006年(07年9刷)、1500円(税別)

 父の急死で突然アパレル会社の社長に祭り上げられてしまったデザイナーの由紀が、傾きかけた会社を建て直すために公認会計士のコンサルタントの下、会計を基礎から学ぶ、という体裁の本です。
 まずは「会計は『だまし絵』だ」で話が始まります。ルビンの壺のように、見方を変えたら別のものが見えてくる、と。
 「会社の活動」とは「現金を使ってそれ以上の現金を生みだすこと」です。バランスシートの左側にある「固定資産」は「現金と現金製造器」、「流動資産(在庫や売掛金)」は「投入した現金が新たな現金に変換される前の状態」です。問題は「現金製造器」が大きければ大きいほど「維持費用」がかかること。バランスシートの右側は「資金をどこから調達したか」が書かれています。返却しなければならない「他人資本」(取引業者から調達した買掛金、銀行からの借入金)と「自己資本」(株主からの資本金と資本剰余金、会社の儲け(利益剰余金))。ただし重要なのは、「現金」はバランスシートの「左側」に書かれるが、「利益」は「右側」に書かれることです。つまり「現金=利益」ではない。むう、なんだか話がややこしくなってきました。お財布に現金があったので気が大きくなってでかい買い物をしてしまったら、実はその現金は行き先が決まっていた、といった感じかな?(与党も野党も、消費税を増税したら「増えた現金」を公共投資に充てようと思っているのも、「現金=利益」と思っているからでしょう)
 決算書を読むときに重要なのは、「総資産利益率(ROA)」(経常利益を総資産(流動資産+固定資産)で割ったもの=その企業がいかに効率的に現金を運用しているかの指標)と「自己資本利益率(ROE)」(経常利益を自己資本で割ったもの=自己資本をいかに有効に使っているかの指標)だそうです。
 そこで舞台は鮨屋へ。コハダと大トロ、どちらが「儲かる」か? ここで取り上げられるのは「キャッシュ・フロー」です。現金を製造する(利益を生む)ためにどのくらいのキャッシュをどのくらいの期間寝かしておかなければならないか、増加した現金をどこに投入するか。その決断をするのが経営者の仕事です。そして「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」。損益分岐点の概念と計算方法、業種別の利益構造がレクチャーされます。
 原価計算で紹介されるのは「活動基準原価計算」。「ムダ」をいかに可視化して省くようにするか、という発想からの新しいやり方だそうです。
 本書で繰り返し説かれるのは「数字の裏側にある事実」です。ある期の数字は「単なる数字」です。他の期と比較したら「変動する数字」が見えます。しかしそこで考えるべきは「なぜ変動したのか」。会計報告はそこまでは教えてくれません。そこからが「人間」のお仕事のようです。会計とか経営というのは私にはあまり縁のない世界ですが、いろいろ面白いものが埋まっているようですね。