【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

800の次

2012-08-06 17:59:54 | Weblog

 水泳は50、100、200、400、800。陸上は100、200、400、800。どちらもその次は1500メートルとなります。なんで1600mにしないんでしょうねえ。ほとんど1マイルでキリが良いと感じるのですが。
 もっとも、オリンピックが終わったらこのこともすぐに忘れてしまって、次のオリンピックの時に思い出すのですが。

【ただいま読書中】『鬼の宇宙誌』倉本四郎 著、 講談社、1991年、1748円(税別)

 まずは、大自然への畏怖あるいは共同体からの追放、という観点から、西洋の狼男と日本の鬼に共通点があることが指摘されます。先日読んだ『もののけの正体』にあった「鬼伝説と鉱山の密接な関係」がここでも紹介され(原本は『鬼伝説の研究』(若尾五雄))、採鉱・精錬で使われたタタラの火が「鬼が生息する地獄の業火」に結びついたのではないか、と推測されます。
 地獄で鬼が亡者を責めるのに使っているのは、鍛冶屋の道具や大工道具です。では、鍛冶屋と大工にどんな共通点が? もともと彼らは渡りの職人でした。つまり、特殊技能を持った他界の人、です。
 東西の史料を幅広く渉猟し、まるでユングの原型を論じているかのように東西の「鬼」について著者は述べます。ただし、史料を駆使する、というよりは、自身の奔放な想像力に駆使されている、といった感じで話がどんどん展開していきます。「鬼退治は男性原理と女性原理の対立ではないか」など、思いつきにしては本当に面白い話題なのですが、話を広げる前にもう少し深く掘ってほしい、と感じました。せっかく東西の史料をここまで読んでいるのですから。また「風」が世界を構成する元素、というところにもちょっと違和感が。陰陽五行で「気」を説明するのだったらまだ頷けたのですが、まあこの辺りは瑕疵というべきでしょう。私が陰陽五行のファンなのがいけないのです。
 「文明」の力で、人は「自然」から離れることができました。それは人の生活にとっては福音だったはずですが、「自分から遠く離れてしまった自然」だけではなくて、「自分の中に存在する自然」からの声さえも人は聞きづらくなってしまった、そのことに気がついた人は鬼のような妖怪を生みだしたのかもしれません。だとすると、現代社会(自然とは無関係に暮らすことさえ可能な社会)での「鬼」は一体何のメタファーになってしまうのでしょう?