市場で重視されるのは売り上げ高、テレビ番組でとても重要視されるのは視聴率の数字です。だけど、その「数字一つ」ですべてが表現できるものでしょうか。宣伝に乗って買ってみたけれどリピーターになる人がいなかった、とか、話題になった番組だから見てみたけれどちっとも面白くなかった、なんてことは「(短期的な)数字」では読めないと思うのですが。市場で重要なのは、「その商品の売り上げ」だけではなくて「それがどのくらい持続するか」、テレビ番組では「顧客の満足度(民放だったら、スポンサー(番組で流されたコマーシャル)に対する好意度アップ)」ではないかしら。
リピーターについてはちょっと調査が難しいですが、テレビだったら今はデジタルの時代、あの4色のボタンで視聴者の満足度を即座に測定可能なのではないかと思うのですが、それをやっている番組ってどのくらいあるのでしょう?
【ただいま読書中】『アルジェリア戦争 ──フランスの植民地支配と民族の解放』ギー・ペルヴィエ 著、 渡邊祥子 訳、 白水社(文庫クセジュ)、2012年、1200円(税別)
「アメリカ独立戦争」は、英国の植民地支配からの独立戦争であると同時に、アメリカン・ネイティブからの国土収奪の歴史のマイルストーンでもありました。そして「反植民地主義」の「アメリカ人」は、史上最大の「植民者集団」でもあったのです。対してフランスの植民地は、ちょっと事情が異なります。海上交通を妨害するトルコの海賊が根城にするアルジェをフランス軍は1830年に攻略、ついで「野蛮と貧困と混沌の地」アルジェリアに対する“慈善事業”として植民計画を始めます(これは皮肉や風刺ではなくて、そのまま当時のフランスの教科書にも書いてあるそうです)。19世紀のヨーロッパで、フランスは唯一「人口の伸びが止まった国」でした。それでも「大国の証明」として、フランスはアルジェリアを「フランスの州」にしようとします。
結果、アルジェリアは、3つの県からなるフランスの「州」になり、国会議員も送ります。ただし「フランス市民」は現地では少数派でした。100年で「フランス市民」は10万人から100万人に増加しましたが、その過半数は「ヨーロッパ出身の外国人の植民」と「現地のユダヤ教徒の同化」によるもので、その結果「外国人問題」が発生します。さらにアルジェリアでは「自治を要求する『アルジェリア人』ナショナリズム」も発生。さらに、ムスリム原住民の増加率はヨーロッパ系住民の増加率を上回っており、しかも彼らが、フランス国籍を有するのに市民権を持たず(フランス国内法ではなくてイスラーム法に従う)、農村または都市の最下層を形成することが、大きな問題となります。話を整理すると、ムスリム原住民はフランスからの独立を望みました。ヨーロッパ系“フランス人”も自治を望みました。そしてその両者は対立しているのです。
第二次世界大戦、そしてヴィシー政権の成立がアルジェリアに複雑な影響を与えました。終戦後、一時民族解放運動は弾圧で沈静化。しかし1954年のテロから「アルジェリア戦争」が始まります。
ムスリムの反乱派FLNは、平和的な解決を拒絶します。インドシナ戦争で疲弊したフランス政府は、穏当な解決を模索します。アルジェリアの「フランス人」は自分たちが無視されたまま事態が“解決”することに不安を感じます。本土のフランスでも、100年間の“投資”と努力と流された血がムダになることへの感情的反発が広がります。予備役が召集されてアルジェリアに派遣され、さらに徴兵期間が延長されたことはフランスでは不評でした。「テロリストによるテロ」「反テロリストによるテロ」が続きます。混乱は混乱を生み、事態を収束できなかった第4共和制はすべてをド=ゴールに託して終焉を迎えます。
ド=ゴールは自分の意図を小出しにしていましたが、ついに「フランスのアルジェリア」から「アルジェリア人のアルジェリア」への政策転換を明確にします。しかし「交渉」に賛成するフランス人とアルジェリア人の間の交渉はなかなか始まらず、そこに「フランスのアルジェリア」を支持するグループが絡んで三つ巴の争いが始まります。最後のグループは、アルジェで軍事クーデターを起こしさらにそれをパリにも広げようとしますが、失敗。アルジェリアでは各派の「意見が違う者へのテロ」がどんどん激しくなります。
ド=ゴールはついにFLNと停戦(と独立)協定を締結します。ただ、国内の政治情勢は安定しており、経済的にもフランスは上向きで、外的には交渉を急ぐ必要はありませんでした。ただ、「アルジェリアのフランス人(OAS(秘密武装組織))」がド=ゴールに激しく抵抗していたため、それに対しての処置を急いだ、という事情があったのかもしれません。ともかく彼の決断は、本国世論の大勢と一致していました。OASはFLNと政府の部隊を激しく攻撃し、FLNはテロで対抗します。「アルジェリア戦争」は解決ではなくて、「次の局面」に移行しました。
本書の最後に、金銭および人的な「収支決算書」が載せられていて、「戦争」がいかに国家に損害を与えるものか、よくわかります。そういえば「植民地」って、どのくらい「得」をするものなんでしょうね。