【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

避難塔

2013-04-15 06:12:13 | Weblog

住民要望で2つ目の津波避難タワー 大紀町(三重県)」(中京テレビ)
第2津波避難タワー竣工式 」(CBC)
 歩いていける身近に避難する場所があるというのは、住民にとっては心強いことでしょう。ただ、ニュースではわからなかったので、気になることはいくつもあります。

・タワーの最上階は海抜24m、500人収容可能、だそうです。ただしこの地区での津波の予測は高さ16m。ということは16m~24mの間に500人収容可能、ということなのでしょうか。(扉を密閉したら水密になっていて1階から全部使える、ということなのかもしれませんが、津波に追われて避難民が続々押し寄せる状況でその鼻先でぴしゃりと扉を閉めることができます? あるいは、入り口に押しかけた人がぎゅうぎゅうになって閉めることができない状況では?)
・津波の後、周囲はぐちゃぐちゃですからタワーは孤立しています。その状況で何日間避難した人の体調が保つのでしょう。
・住民のタワーへの避難訓練もやっていましたが、「万全の準備をしての落ち着いた状況での訓練」だけではなくて、たとえば先日の淡路島での「午前5時33分頃の大地震」のような場合の訓練はしておかなくてもよいでしょうか(この場合、停電が組み合わさるでしょうから、避難条件が悪くなります)。
・タワーの耐久性はどれくらいで、その経時変化はどうなのでしょう。もちろん現時点では予測される津波には耐える設計でしょうが、それが永遠にもつわけではありません。これからのメインテナンスの予定と、何年経ったら建て替える、という計画は?

 ニュースを見ていて、映画のような場面が私の脳内に浮かびました。
 階段にぎっしりの人たち。「津波がくる」「もっと上がってくれ」「もっと詰めろ」「もう無理」……飛び交う怒号と悲鳴。「せめて赤ちゃんだけは」と手から手に渡されて階段を“上がって”いく乳児。その下方で、急激に上がってくる海面に飲み込まれる人々。
 想像するだけで、涙が出そうになります。

【ただいま読書中】『津波!! ──命を救った稲むらの火』小泉八雲 原作、高村忠範 文・絵、汐文社、2005年、1400円(税別)

 安政地震の時、村の長者浜口儀兵衛が、海岸の村人に急を知らせるために大切な稲むらに火をつけて、消火のために駆けつけた村人たちを津波から救った、という有名なお話です。この実話が有名になったのは、小泉八雲が実話を元に『生ける神』として創作を1897年に世の中に送り出し、その話に感動した中井常蔵という小学校教師が、当時文部省が募集していた「国語教科書に載せる作品」に『生ける神』を『稲むらの火』と書き改めて応募して採用され、1932年から10年間小学国語読本に掲載されたからです。私は(当然ながら)この国語読本で学んではいませんが、なぜかこの話は知っていました。
 ただここで見るべきなのは、もちろん儀兵衛の自己犠牲の精神も重要ですが、過去からきちんと学んで目の前の現実にその知識を適用する態度の方に注目するべきと私は考えます。それと、健全なアドリブの精神の重要性も。マニュアル絶対主義では不十分な場合があることをこうやって知っておくのは、どんな人生を歩むにしても大切な“教養”でしょう。今の小学校教科書にも載せて良いお話だと私は思います。