【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

豊穣な世界には、雑草も豊富

2014-07-03 07:24:33 | Weblog

 戦前から先人が作っていた小道を通って手塚治虫が開拓したのは、「漫画の世界」という豊穣の大地でした。現在その世界には、その豊穣さゆえに雑草や毒草もたくさん生えています。ただ、安易にそういった“よくないもの”を否定してよいかどうかは疑問だと私は感じます。豊穣な世界が一つの“生態系”だとしたら、いろいろなものがそこに繁茂する必要があるでしょうから。

【ただいま読書中】『戦国武将の死亡診断書』酒井シヅ 監修、戦国☆保健委員会 編・著、 エクスナレッジ、2012年(13年2刷)、1300円(税別)

 戦国武将の最期は、戦死か自刃、とは限りません。本書では、有名な戦国武将37人の人生を「健康」の目で見、その死因を「死亡カルテ」の形で提示する、という面白い試みです。
 健康オタクとして有名なのは徳川家康ですが、伊達政宗も健康オタクぶりを発揮しています。二人の違いは、徳川家康は薬の調合に熱心で、伊達政宗は料理に熱心だった、ということ。どちらも「戦国大名」のイメージとはちょっと違いますが。面白いのは、伊達政宗が「健康法」として「一日三回の喫煙」をしていたことです。当時は煙草は「薬」だったのでしょう。
 推定ではありますが、本書には様々な死因があげられています。その中でちょっと特異なのが「梅毒」。これだけで一つの章が立てられています。そこに含まれている戦国大名は、加藤清正、結城秀康、黒田如水、前田利長、浅野幸長。梅毒が日本に上陸したのは1510年代。鉄砲伝来よりはるかに早いのです。しかも当時の梅毒スピロヘータは凶悪で、梅毒は「死に至る病」でした。その病気の進行にぴったりの症状を示す人がこの章に集められています。
 天寿を全うした人も一つの章に集められています。北条早雲、細川忠興、宇喜多秀家、真田昌幸、松平忠輝ですが、当然皆さんそれなりに長生きです。もっとも、八丈島に流されて死んだ宇喜多秀家とか、65歳で「老衰」で死んだとみられる真田昌幸とか、幸福な人生だったかと言えば、それはわかりませんが。
 西洋医学的にさまざまな「死に方」を分析していて見えてくるのは「ストレスの怖さ」です。戦国という時代、遠くから眺めるのは良いのかもしれませんが、その中で生きるのは、大変だったことでしょう。