【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ポイントの換算

2014-07-23 07:05:05 | Weblog

 クレジットカードとかポイントカードとかで、お買い物をしたら少しずつポイントが貯まるのは楽しいものです。使わないうちに期限が切れていたら悲しいものです。
 ところでアベノミクスで注目されている「物価が年率2%上昇」ですが、ここにポイントは含まれています? いくらかの割引でものを買っている場合、それは物価に反映されるのでしょうか?

【ただいま読書中】『エピデミック』川端裕人 著、 角川書店、2007年、1900円(税別)

 急激な高熱、鼻水、くしゃみ、喉の炎症、口内炎……この年のインフルエンザの最後の流行のはずですが、T市(おそらく千葉県館山市がモデル)の小児科医の黒部はイヤな予感を覚えます。海岸に散らばる何羽もの鳥の死骸を見たことも影響を与えているのかもしれません。たまたま近くに調査に来ていた疫学専門のケイトは知り合いの教授からの連絡でT市に入ります。市の総合病院には重症のインフルエンザ肺炎患者が3人運び込まれていました。皆同じ地区に居住しています。そして、黒部自身も重症肺炎に。
 ケイトは「確率密度の雲」の中をさ迷いながら“真相”を求めて漂います。「時間・場所・人」の基本を押さえて詳しく調べれば、手がかりは見つかるはず。しかしそれを妨害するのが、時間・記憶の蒸発・怠け者・縦割り行政・根拠のない楽観論・明白な私利私欲による妨害…… 人の思惑を越えて、病気は様々な姿を見せます。普通のインフルエンザ肺炎のような、あるいはSARSのような……さらに近くでは鳥インフルエンザも出現し、さらには新型インフルエンザの可能性まで出てきます。
 数日の小康期のあと、患者がどっと出始めます。感染の“爆発”です。患者の症状も“爆発”のようにどっと悪くなります。そして、動きの鈍い行政に業を煮やし、緊急対策チームも情報を“爆発”させます。「XSARS」と名付けられた新しい感染症の“流行源”は“保菌者となった子供たち”だ、と。さらに次の“爆発”も。人間に流行させた大元の動物が特定されたのです。それは……
 本書では「疫学」が「科学的な推理」であることが強調されます。その疫学で“武器”として使われるのが「観察」「推理」そして「オッズ比」です。ちょいとオッズ比が強調されすぎている気もしますが、統計に疎い人にインパクトを与えるためには仕方ないのかもしれません。
 『復活の日』(小松左京)では、破壊的な流行病によって滅びていく人類の姿が“ミクロ”よりも“マクロ”の視点で描かれそのことによって“ミクロ”の人間ドラマが浮き彫りにされましたが、本書では徹底して未知の病原体と戦う“ミクロ”の人間ドラマ(基本を貫こうとする人と、自分の思いを貫こうとする人と、右往左往する人たち、との交錯。責任を全うしようとする人と責任逃れをしようとする人との交錯、などなど)が描かれ、それによって「日本社会の病理」が浮き彫りにされています。役職にふさわしくない無知を露呈するお役人による切迫感のないお役所仕事や、ベテランほど“若造”の指示を無視する態度とかも笑わせてくれます。実際にこんなことが起きたら、笑っている場合ではないのでしょうけれど。