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映像で地域貢献 町内会の長老を主役にした作品を学生たちと制作中
【読者からの活動報告】読者会議メンバー・本谷英一さん
北海道でボランティア活動として町内の老人会や若い人たちの日常を動画に収め、映像作品を制作する読者会議メンバー・本谷英一さんから第二の人生リポートが届きました。
「バン・バン バンバン バン・バンバン」と太鼓の音と共に鉢が空を舞う。長老が半身裸で真剣に太鼓をたたく。その周りでは、子どもたちが浴衣姿で踊りを舞う。夕焼けが、その子どもたちの顔を照らす。町内会の夏祭りの光景です。長老は若い頃に炭鉱の盆踊り大会で太鼓を担当していたという。自信満々のその打ち型に、踊り子も玄人はだしで舞うのです。
町内の婦人が、マイク片手にベンチに立って歌っている。懐メロである。孫と思える児童が真下で見上げている。楽しそうな、三世代の絆がすけて見える。
大きなちょうネクタイを身につけた手品師が現れる。長い棒を振り回すと瞬時に花々が咲き乱れる。子ともたちは、大喝采で拍手を繰り返す。「パチ・パチ・パチ・パチ」
その日の夜に映像は、音声と共に動画配信サービスYouTube(ユーチューブ)に載せられて世界へ配信された。
大学の関係者から学生に映像関連の講義をして欲しいと依頼された。ボランティア活動なら受けると回答した。多少の謝金は出すと言う。しかし、金をもらうと拘束される恐れがあるので断る。過去に映像に携わった経験を学生に伝えることは、大切であると受け持った。
若き青年との作品制作「コラボ」は、楽しいものである。学部は映像とはまったく関係なく、獣医師を目指している青年である。YouTubeの世界で育った彼らはいとも簡単に素材を見つけて番組を作り出す。構成・撮影・編集・ナレーション・スケジュール管理・予算管理と見事に処理するのである。
「カット」との監督の声で演技者が演技を終える。演出者が的確な指示を演技者に与える。四十年余、映像の世界で暮らしてきた当方は面食らう。テレビの落とし子であり、ネット時代の主役たちに脱帽だ。ラジオを経て、映画からテレビに移行した背景を持つ当方としては、胸を打たれる。
最終日、大学関係者に伝えた。「私が指導する映像関連の講義は終わりました。次に挙げるのは一番大切なことです。時間を守る、約束を守る、仲間(スタッフ)を大切に」
現在は、町内会の長老を主役にした作品を学生とコラボ中。長老は若い頃は地方公務員を勤めていたが、三十代に転職して市内で飲み屋を経営している。町内では毎月第四土曜日に古本市「ブックストリート」が開催されている。長老はこの企画に賛同し、当日は飲み屋を開放してコンサートを開く。「地域で音楽活動ができる環境作りに貢献したい」と言うのだ。
コンサートは二部構成で計1時間。前半は若者を対象に「市内・近郊の音楽学選考の大学生」によるクラシック演奏。後半には、セミプロの音楽愛好家によるJAZZ演奏とのセッションだ。演奏者は長老からの手料理でもてなされる。
面白い組み合わせに、町内の若者も年長者もこの日を楽しみにやって来る。参加者は飲み物を一つ有料で注文する。ただ、金銭に少し余裕のある参加者は、出口にある「投げ銭箱」にいくばくかの金を入れる。システムはいたって簡素。すでに12月で開催回数も32回に及んでいる。
今年は新型コロナの影響で、半数が未公開になって残念だが、主催者の長老の心意気に刺激を受け、私も映像制作を続けているのです。11月末にはその映像をYouTubeで公開した。来年は、どんな映像が提供できるのか今から楽しみでもあります。