特許庁は2012年1月24日、外部の有識者による「特許庁情報システムに関する技術検証委員会」がまとめた「技術検証報告書」を発表した。報告書は特許庁が5年前から進める基幹系システムの刷新プロジェクトについて、「いったん中断し、具体的な対応策を講じた上で再開することが妥当」と結論付けている。
ロシアの特許書
アメリカの特許書
特許庁の基幹系システム刷新プロジェクトは進行が遅れ、現時点で稼働のメドがついていない。2011年9月からは、技術検証委員会が特許庁およびプロジェクトに参加する東芝ソリューションとアクセンチュアの関係者に問題点などをヒアリングしていた。
中断の原因について、報告書では「設計書に修正すべき項目があり、それらを解消する見通しは立っていない」「仮に修正が2年で完了するとしても、その後の工程にかかる期間を勘案すると、2014年1月に稼働させるという現在の計画を実現するのはほぼ不可能」などと述べている。
報告書では「中断」という表現を使っているが、既に報じたように、特許庁は現体制によるプロジェクトを取りやめる方針を固めており、報告書を受けて中止を決めるとみられる(関連記事:特許庁、難航していた基幹系刷新を中止へ)。
特許庁はシステム設計とシステム基盤の構築を東芝ソリューションに99億2500万円で委託、アクセンチュアと30億円超のプロジェクト管理支援契約を結び、プロジェクトを進めてきた。ところが設計が始まると、現行の業務やシステムを理解した職員と技術者が足りない問題が表面化、進行が滞っていた。
2010年6月には特許庁の元職員がシステム関連情報の見返りに、現行システムを担当するNTTデータの元社員から200万円超のタクシー代を受け取り、収賄容疑で逮捕されている(関連記事:「システム入札情報入手に賄賂」、特許庁審判官とNTTデータ社員を逮捕)。
この事件を受けて、特許庁は外部の有識者による「特許庁情報システムに関する調査委員会」を設置。同委員会は2010年8月に事実関係を解明した報告書をまとめた。報告書はプロジェクトの進行について「遅延は生じたが、体制強化などによって改善傾向にあり、プロジェクト再開は可能」と結論付けていたが、結果的に改善することができなかった。
特許庁が5年前から進めてきた基幹系システムの刷新プロジェクトを中止する方針を固めたことが、日経コンピュータの取材で分かった。当初は2011年1月の稼働を予定していたが、業務分析の遅れなどから要件定義と設計が難航。稼働を3年遅らせたが、立て直すことができなかった。
政府が策定したレガシーシステムの刷新指針に基づき、特許庁は2004年10月に「業務・システム最適化計画」を策定した。この刷新指針は、特定のITベンダーとシステム保守などを長期契約することによるITコストの高止まりを解消する目的で策定されたものだった。同庁はさらに、入札に分割調達の仕組みを採用して競争原理を働かせることを目指した。
要となるシステム設計とシステム基盤の構築については、東芝ソリューションが入札予定価格の6割以下の99億2500万円で落札した。ところがプロジェクトが始まると、現行の業務やシステムを理解した職員と技術者が足りない問題が表面化、進行が滞った。特許庁はアクセンチュアと30億円超の契約を結び、同社にプロジェクト管理支援を委託していたが、それでも遅れは防げなかった。
特許庁のシステム刷新を巡っては、外部の有識者による「特許庁情報システムに関する技術検証委員会」が現在、プロジェクト継続の可能性を調査している。近々、同委員会が報告書をまとめる計画だ。システム刷新に携わる関係者によれば、報告書はプロジェクトの中止を促す内容になる可能性が高いという。報告書を受けて、特許庁はシステム刷新の中止を決めるとみられる。
ロシアの特許庁長官
サハリンマン