俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

製造業と小売業

2009-05-12 13:23:03 | Weblog
 昔から日本は「経済一流・政治二流」と言われて来た。しかし経済でも一流なのは製造業だけであり、小売業も金融業もサービス業も三流ではないだろうか。そうなってしまった原因を現代史に基づいて考えたい。
 製造業は常に国際競争に晒され続けた。戦後しばらくは欧米の製品と、その後はNICSや中国などと国際レベルでの競争をせざるを得なかった。それだけではない。昭和46年のドルショックや昭和48年の石油ショックも乗り越えた。こうして厳しい経営環境の中で優秀な経営者が育った。
 一方、小売業は昭和30年代および40年代前半は、商品さえ並べておけば売れる時代だった。40年代中盤の石油ショックや狂乱物価も「売上増」という追い風に繋がった。こういう楽な経営環境の中で無能な経営者が増殖した。
 50年代の小売業は「行け行けドンドン」の時代だった。売り場を増やせば収益も増える。こぞって拡大戦略を採った。そごうと西武百貨店とダイエーやマイカル(ニチイ)はこの路線を続けたためにその後破綻した。
 平成不況を迎えて無能な経営陣と彼らに育てられた無能な後継者達は何ら手を打てなかった。そのまま現在に至り、勝ち組とされるセブン&アイでさえセブンイレブンの加盟店のロイヤリティ収入で稼いでいるだけで本体は火の車だ。デパートはボロボロ。小売業で元気なのはユニクロだけだ。
 ユニクロは製造・小売業だからこそ強い。安楽な経営で人材が育たなかった小売業と違って、レベルの高い製造業のノウハウに基づいているから小売業で唯一の勝ち組となった。
 「艱難汝を玉にす」と言われるとおり苦労をした業界は能力を持ち、苦労しなかった業界では多くの企業が破綻へと向かう。

長所と短所

2009-05-12 13:10:49 | Weblog
 クロックスというブランドの靴がある。この靴は昨夏には危険な靴として話題になった。
 この靴の特長はその素材だ。特殊なプラスチックを使っているため滑りにくく、柔らかく、丈夫で、軽い。これらの特性は通常は長所となる。しかしエスカレーター上での事故においては欠陥となった。
 この靴がエスカレーターに巻き込まれる実験をテレビで見た。まるで軟体動物のような不思議な動きをして一瞬でエスカレーターの隙間に吸い込まれた。
 滑りにくいから隙間にも密着する。柔らかいから隙間から入り込む。丈夫だからちぎれずに足まで巻き込んでしまう。
 通常考えれば長所としか思えない特性が、不適切な使い方をすれば欠陥になってしまう。この靴が製造禁止や販売自粛にならないのは「適切に使う」なら安全な靴だからだろう。言わばガスや電気と同様、正しく使えば安全だという訳だ。
 しかし子供はしばしば正しくない使い方をする。遊ぶ場所ではないエスカレーター上でふざける子供が正しい使い方をするとは思えない。従って子供靴については製造・販売を自粛しても良かろう。それとも「ルールを守らない子供の自己責任だ」と突っぱねるつもりだろうか。

1万年後

2009-05-12 12:53:55 | Weblog
 1万年後には人類は滅んでいるだろう。
 こんな予測が無責任だということは重々承知の上だ。1万年後に私がいる訳ではないし責任を問われる可能性も無い。従って全く無責任な放言に過ぎない。しかし1万年後を考えて現在を生きることは全く無意味ではなかろう。
 なぜ人類は滅ぶのか。戦争か、ウィルスと薬のイタチごっこの末か、大量殺戮兵器の誤操作か、星との衝突か、それは分からない。しかし1万年後に人類が滅亡していることはほぼ間違い無かろう。1万年後どころかそれは100年後のことかも知れない。
 人類は500万年ほど前に生まれたが文明時代は約5000年に過ぎない。人類の進化と文明の進歩は余りにもアンバランスだ。文明は継承されるから先人の築いた文明に基づいて進歩するが人類そのものは徐々にしか進化しないし時には退化する。巨人の肩に乗ったちっぽけな人間が巨人の築いた文明をもて遊んで、人類を破滅させることは間違いない。
 人類はいずれ滅ぶ。万世一系の王朝も滅ぶ。我々の子孫も(多分)惨たらしい死を迎える。そんな未来が分かっているなら現代の我々は何をすべきだろうか。
 哲学は「死を考える」ことが重要な課題だ。死を考えることを通じて「生の意味」が問われるからだ。それなら人類絶滅といういささかSF的なテーマについて考えることも充分哲学的な課題たり得るだろう。