俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

働きアリ

2011-01-07 12:31:42 | Weblog
 働きアリの2割ほどが殆ど働かないそうだ。ではこれは怠け者の「働かない働きアリ」なのだろうか。どうやらそうではないらしい。と言うのはこの「働かない働きアリ」ばかりを集めて巣を作らせるとやはり8割が働いて2割が働かないらしい。一方、よく働いているアリばかりを集めても同じように2割が「働かない働きアリ」になってしまうそうだ。
 社会性昆虫の代表とも言えるアリにこんな奇妙な性質があるのはなぜだろう。何か合理的な理由がある筈だ。
 有力な仮説の1つとして「予備」という考え方がある。全員が働いていると突発的な出来事に対応できないということだ。
 アリでもやはり働くと疲れる。疲れたアリでは非常事態には対応できない。そのために予備役が常にいるという訳だ。
 これはサッカーのスーパーサブに似たシステムだ。両チームの選手に疲れが出る終盤に瞬発力のある選手を投入することにとってゲームの流れを一気に変える。これがスーパーサブの役割だ。出ずっぱりの選手にはこんな芸当はできない。
 現代の企業は全員を満遍なく働かせようと躍起になっている。グータラ社員も昼行灯も見かけなくなってしまった。これは果たして企業にとって良いことなのだろうか遮二無二働かせるばかりでは創造性を失う元になるのではないだろうか。もっとアリの社会から学んだほうが良い社会になるのではないかと思う。

統制と硬直

2011-01-07 12:17:07 | Weblog
 韓国統計庁の発表によると2009年の韓国の名目国民総所得は北朝鮮の37倍だったそうだ。朝鮮戦争の直後の時点では北朝鮮のほうが経済力があったが、70年代の後半に逆転してその後差は開き続けているとのことだ。
 北朝鮮のこの停滞の原因は「金王朝」の無能だけが原因ではない。統制社会の宿命とさえ思える。
 統制された社会では新しい芽は育ちにくい。以前に実績のあった物だけが良い物と評価される。旧ソ連の戦闘機に真空管が使われていたことに象徴されるように技術は革新されずそれまでの延長上で物が作られる。
 生物が多様なのは多様なほうが変化に対応できるからだ。ヴァリエーションが乏しければ変化に対応できずに全滅する。
 生物と同様に社会もまた構成員が多様であるほうが変化に対応できる。統制された社会は必ず硬直した社会になる。硬直した社会はいつまででも同じことを繰り返す。まるで縄文式土器を延々と作り続けるようなものだ。
 統制されない社会では新しい物を作ろうとする。統制された社会とは逆に新しい物を作ることに価値があるからだ。
 最も統制された社会は中世のヨーロッパだろう。キリスト教によって統制された民衆は羊のように従順になり文明も文化も衰退した。
 自由は単に個人の権利ではない、社会にとっても必要なことだ。個人の自由が無ければ社会は硬直化する。多様な価値観があってこそ社会は発展する。

精神病

2011-01-07 12:00:00 | Weblog
 最近では精神病は脳の病気と捕らえられているようだ。脳が精神を支配しているのだからそう考えても差し支えない。
 脳の病気について考える前に、より馴染みのある体の病気について整理しておこう。
 まず内因性と外因性とに分けられる。内因性の病気は臓器の障害であり栄養の過不足や様々な生活習慣などや老化が原因となる。
 外因性の病気は更に2種類に分けられる。病原菌の感染によるものと傷害によるものだ。後者は多くの場合病気とは呼ばれず「怪我」と呼ばれる。
 精神病についても同様に3種類に分けるべきだろう。
 脳の内因性障害としては脳そのものの機能障害や老化によるアルツハイマー症候群などが挙げられる。
 2番目は感染症だ。日本脳炎ウィルスや狂牛病プリオンなどが感染する。
 3番目は傷害によるものだ。フロイトの理論では心的外傷という奇妙な言葉に翻訳されているが要するに「心の傷」のことだ。
 これら3つが一緒くたにされていることが現代の精神医療の問題点だ。
 鬱病は外的要因と内的要因の複合疾患と思える。外からのショックによって内臓(脳)が機能不全を起こしている状態だ。この症状に対してハッピードラッグとも呼ばれるSSRIなどを投与するだけの治療は明らかに片手落ちだ。これは骨折の患者に痛み止めを投与して治療を終えるようなものであり、骨折そのものの治療が行われていない。原因を治療せずに不快感の緩和だけを図っていれば悪化しないほうが不思議だとさえ思える。100%内因性の鬱病でない限り外因の治療を怠るべきでない。