俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

エイトマン走り

2007-11-14 20:19:55 | Weblog
 テレビで「世界陸上」を見ていて「エイトマン走り」を思い出した。
 随分古い話で申し訳ない。「エイトマン」とは昭和38年から少年マガジンに連載されたロボット漫画の主人公だ。人間の神経が秒速30mで伝わるのに対して秒速30万㎞の電子信号を使うことによって超高速活動ができるという設定だ。
 アニメは1秒間に24コマ使わないとスムーズな動きにならない。当時のコマは総て手描きだ。この漫画をアニメ化するに当って制作スタッフは工夫を凝らした。エイトマンが走るシーンの上半身と下半身を別々に描いた。上半身のコマ数は少なく従ってゆっくりと動き、下半身だけが猛烈なスピードで動いた。下半身のコマは早すぎて殆ど見えないほどだった。見えないほど早いから何度でも同じコマを使える。こうやってコマ数が少ないのにスピード感のあるアニメができた。
 このアニメのファンは上半身を殆ど動かさず足だけで猛スピードで走ることを「エイトマン走り」と呼んだ。これは多少馬鹿にしたニュアンスがあった。全身を使えばもっと早く走れるのに足だけで走っているという意味だ。当時は長距離走者も短距離走者も全身を使ってダイナミックに走っていたからだ。マラソンの君原健二選手などは上半身だけではなく首まで振り回しながら走っていたものだ。
 エイトマン走りの元祖と言えば同じマラソンの瀬古利彦選手だろう。全く上半身を揺らさず坦々と走っていた。「ロスの少ない理想的な走り方」という解説を聞いて吃驚した。
 今や一流ランナーはみんなエイトマン走りをしている。100m走のゲイもパウエルも、あるいは長距離ランナーに至るまでみんなエイトマンのようだ。あのアニメは先見性があったようだ。

1 コメント

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ストライベック (元鉄鋼商事関係)
2024-11-22 21:44:34
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、トレードオフ関係の全体最適化に関わる様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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