近畿

　大阪は厳密に言えば「近畿地方」ではない。近畿とは「畿」に「近い」地域を指し、具体的には滋賀・和歌山・（神戸より西の）兵庫・三重の名張地区のことだ。では大阪はどこに属するのか。「畿内」に当る。
　畿内とは山城国・大和国・河内国・和泉国・摂津国を指す。現在の区分で言えば大阪府と奈良県の全域に京都府の南部と神戸市以東の兵庫県が該当する。
　畿内がややこしくなったのは明治政府の策略に基づく。摂津国は経済的にも文化的にも強力で東京を凌ぎかねないほどの潜在力を持っていた。東京への一極集中を目論んだ明治政府は摂津国を東西に分断して、東摂津は河内国および和泉国と合併させて大阪府とし、西摂津は播磨国と合併させて兵庫県とした。これが現在も続いている区分だ。
　そのためにしばしば妙な誤解が生まれる。大阪空港は兵庫県にある。一部は豊中市と池田市にも溢れているがその中心は兵庫県伊丹市だ。甲子園球場は大阪には無い。兵庫県西宮市にある。どちらも昔の区分では摂津国だ。