越川芳明のカフェ・ノマド Cafe Nomad, Yoshiaki Koshikawa

世界と日本のボーダー文化

The Border Culture of the World and Japan

第1回 幻のキューバ  サンティアゴのブルへリア(10)

2011年11月21日 | キューバ紀行

 

    品物の種類からすると、レイナルド君の店は特殊なほうで、

    ブルへリア通りでおもに売られているのはアフロ信仰で使う薬草木の枝や根

  生贄にする雄鶏や鳩、聖女バルバラや犬を連れた聖ラサロなどの聖人のフィギュアであり、

  民間療法(強壮剤、腹痛止め、喉痛止め、不妊症、水の浄化など)に使われるとか、厄払いに使われるものである。

 ガホスと呼ばれる薬草には、ベンセドル、ガラニュン、ロンペサラウェイ、サルビア、

 カモミール、エスコバ・アマルガ、ベルベナ、イゲレタ、マヤ、 シウヤラ、

 アブレ・カミノ、サルデ、イエルバ・ブエナ、ブラシル、アナム、アノン・デ・オホ、

 マル・パシフィコ、ブレウ、メヨ、ミージョ・パラ・サン・ラサロ、ミージョ・パラ・オチュン、アルバカ・モラダなどがある。

 その他に、いい香りのする白い小花をつけたアスセナもある。

 それらの草花たちは、それぞれおおざっぱに群れというか塊をなしている。

 まるで生き物が折り重なりあって休んでいるかのようだ。

 雑然としているように見えるが、実は、店の主人によってすぐに選り分けられるようになっている。

(つづく) 

 


 


第1回 幻のキューバ  サンティアゴのブルへリア(9)

2011年11月21日 | キューバ紀行

 

 とはいえ、袖触れ合うも多生の縁、レイナルド君の姉弟との関係にしても、運命の導くままに・・・。

 そのとき、私はそう考えた。

 レイナルド君の露店に中年の女性がやってきた。

 煙草の火を貸してほしい、と言っている。

 私はその機に乗じて、放し飼いのノラ猫みたいに、こそこそと隣の露店に移動した。

(つづく)

 

 

 


第1回 幻のキューバ  サンティアゴのブルへリア(8)

2011年11月21日 | キューバ紀行

 

 私はやっぱりそう来たか、と思った。

 おそらくレイナルド君はずっと思っていたはずだ。

 今度あの日本人が来たらダメもとで頼んでおこう。

 僕だって、あの人が買わないのを分かっていて、いろいろと教えてあげているんだから。

 私が思うに、レイナルド君は特にずる賢い少年というわけではない。

 私がスニーカーを買ってきてあげれば、もっと違う次元の深い付き合いになる可能性もある。

 たとえば、私たちの付き合いが意外な展開を見せて、将来、彼に子どもができたとき、

 その子のパドリーノ(代理父)になるっていうことも、まんざらあり得ない話ではない。

 だが、いまはどちらも深い関係を欲しているようには思えない。

(つづく)