娘がＸマスケーキをはしゃいで落とした遠い想い出

２２歳で結婚した私の給料は当時は年功序列　生活をするのに必死だった
それでも僅かに出たボーナスで　クリスマスのケーキを買って家に帰った
チキンの足を銀紙で巻いてあるのがご馳走で　山と詰まれた店先から買う



娘は３歳　息子が５歳　家の戸を開けた途端　玄関に飛び出してきた
ホラ　ケーキだよ　娘に手渡す　息子はチキンの包装された箱を取る
わ～い　ケーキだ　ケーキだ　娘が小躍りする

月に２回しか休日が無く　残業も徹夜も若さで頑張っていた
この瞬間だけは　疲れも忘れ　幸せな家庭の空気の中に溶け込む
たが　次の瞬間　娘が躓いて倒れた

ケーキの箱は家具に当たり　そして下へ落ちた
潰れた箱を開けると　更に原型を失ったケーキが無残な姿を見せている
娘が泣き出す　責任を感じて　激しさが増してくるのだろう

大丈夫だよ　味は変わらないから泣くな
慰めても　なかなか泣き止まなかった
何とかローソクを一角に立てることが出来た

電気を消して　きよしこのよる　を歌う
娘の顔に涙がこぼれ　ローソクの光に揺れて光った
何故か　このシーンだけは　今でも鮮明に記憶から離れない



孫が出来ても　おじいちゃんらしいことは　何もして来れなかった
それでも娘は娘　私の心の中では　申し訳ないねといつも思う
今日は　どんなクリスマスイブを過ごすのだろうか

私の今日は　介護施設へ踊りのグループと訪れる
多くの　おじいちゃん　おばあちゃん　私と変わらない年齢の方も居る
ささやかなクリスマス会が　笑顔を呼ぶように感謝して歌の時間



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