対北朝鮮制裁の監視も「半端」…新冷戦に突き進む尹政権の「偏向外交」
韓国政府は16日、米国、日本など11の友好国とともに、北朝鮮を監視する「多国籍制裁モニタリングチーム(MSMT)」を発足させた。ロシアの拒否権行使で発足が失敗に終わった国連安保理の北朝鮮制裁委員会専門家パネルの代替機関だ。MSMTに参加しなかったロシアは、プーチン大統領が北朝鮮と今年6月に締結した「包括的戦略パートナーシップ条約(朝ロ条約)」批准案を今月14日(現地時間)に下院(国家院)に提出している。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が「価値観外交」を標榜して米日との協力強化にしがみついている間に、朝ロが密着しつつあることで、朝鮮半島が「新冷戦」の真っただ中へと飲み込まれているとの懸念の声が上がっている。
16日に発足したMSMTには韓国、米国、日本、フランス、英国、ドイツ、イタリア、オランダ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの11カ国が参加する。政府は「グローバルサウス諸国などへと拡大していく」としているが、MSMTの立ち上げ過程ではロシアはもちろん、中国とも水面下の協議さえ行わなかったことが分かっている。「韓米日」対「朝中ロ」の対立構図がさらに鮮明になることが懸念される背景だ。中国は、対北朝鮮制裁の履行はもとより、北朝鮮とロシアの密着がさらに危険な状況へと進展しないよう管理する上でも、中心的な役割を果たしてもらうべき国だ。
韓米日は昨年8月のキャンプ・デービッド首脳会談以降、事実上の「3カ国軍事同盟」へと変容しつつある。今年6月末には中国を想定した定例の共同訓練「フリーダムエッジ」を初めて実施しており、1カ月後には「韓米日3カ国安全保障協力枠組み覚書」も交わしている。韓米日合同の海上訓練も複数回実施している。尹錫悦大統領は就任以来、一貫して韓米日を中心とする志を共にする国との連帯という方法を選んできたが、MSMTもやはり韓米日中心の「価値観外交」の延長だと解釈される。
MSMTが発足しても、中国とロシアの協力がなければ北朝鮮の国連安保理制裁違反行為を防ぐ方法はない。この日のMSMT発足式で米国のカート・キャンベル国務副長官は、「中国とロシアが抜けている中でMSMTが効果を発揮できるかは疑問」だと指摘され、「かつて、国連安保理の北朝鮮制裁委パネルの報告書活動はロシアなどの反対で困難に陥った。しかしMSMTの潜在力は非常に高い。我々がうまく追跡できれば、北朝鮮に責任を問えると思う」と曖昧に答えるにとどまっている。
その間に北朝鮮とロシアの協力はさらに強化されている。今年6月にはプーチン大統領が北朝鮮を国賓訪問し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と首脳会談をおこなった後に朝ロ条約を締結しており、近くロシア下院で批准手続きが進められる。この他にも、先月にはロシア国家安全保障会議のセルゲイ・ショイグ書記が平壌(ピョンヤン)を訪問して金委員長と会っており、北朝鮮のチェ・ソンヒ外相もロシアを訪問してセルゲイ・ラブロフ外相と会談し、その後、ユーラシア女性フォーラムに参加するなど、朝ロの高官の交流も活発に行われている。北朝鮮がロシアに対し、ウクライナ「特別軍事作戦」に必要な弾薬などの武器を提供している、との疑惑も絶えない。
世宗研究所のキム・ジョンソプ副所長は、「ロシアという穴が開いている状態では、北朝鮮に対する制裁は効果がない。朝ロの密着を防ぐには、米大統領選挙を起点としてロシアとの関係改善に積極的に動くしかない」と述べた。韓国外国語大学ロシア語科のチェ・ソンフン教授は、「特定の国を制裁によって屈服させた例は多くない。北朝鮮はロシアとの関係を改善し、重要な活路を得た。今の対北朝鮮政策をもってしては、朝鮮半島情勢は安定させられないという考えを、韓国政府は早く持つべきだろう」と述べた。
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