尹政権がウクライナに供与した砲弾、
朝鮮半島危機の「ブーメラン」に
ウクライナへの砲弾支援を求める米国の要求を尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が受け入れてから、 朝鮮半島情勢を決定的に悪化させた朝ロの「戦略的接近」が行われたという情況がますます明らかになっている。尹錫悦政権の無謀な選択が、韓国の安全保障に「災い」をもたらす北朝鮮の弾道ミサイル技術の向上につながったものとみられる。
6月初めに始まったウクライナの「大反撃」の顛末を取り上げたワシントン・ポスト紙の4日(現地時間)付の特集記事で、最も注目を集めているのは、今年2~4月頃に行われたウクライナ砲弾支援をめぐる攻防だ。記事によると、ジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)の主宰で開かれた会議で、米国は友好国の中でウクライナ軍に155ミリ砲弾を供与できる能力を備えた唯一の国は「(その気になれば)41日以内に航空と船舶で33万発」を提供できる韓国だけだという結論を下した。
その後、米国が韓国に砲弾の供与を執拗に要求した情況はすでに公開されている。4月に流出し大きな衝撃を残した韓国大統領室国家安保室に対する米国の「傍受文書」には、当時のキム・ソンハン室長らが2月末頃、ポーランドを通じて砲弾33万発を供与する案を話し合った内容が含まれている。キム前室長は「ウクライナに弾薬を早く供与するのが米国の究極的な目標」だとし、ウクライナと国境を接するポーランドに砲弾を販売する案を示した。
同案は実際進められたものとみられる。この頃、米国を訪問したポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相は4月11日、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、自身が数カ月間にわたり韓国との砲弾供与協議に参加したことを明らかにし、「米国の介入がなければ、これは不可能だと思う」と述べた。また、ロシアの報復を予想したかのように「ジョー・バイデン米大統領が韓国に提供できる一種の安全保障がなければ、これは実現しないだろう」という意味深長な言葉も残した。
尹錫悦大統領の米国国賓訪問を控えていた韓国の最終的な選択は「砲弾供与」だった。 尹大統領は4月19日、ロイター通信とのインタビューで、ウクライナに対する韓国の支援が「人道支援や財政支援にとどまっており、それらだけを固執することは難しい」と述べた。武器供与もあり得るという事実上の宣言だった。
すると、1990年の国交正常化以後、友好関係を維持してきたロシアが激しく反発した。インタビューの翌日、ロシア外務省のマリヤ・ザハロワ報道官は「韓国がこのような行動を取るなら、朝鮮半島に対する我々のアプローチに影響を及ぼしかねない」と警告した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は約1カ月後の5月24日付記事で、米国政府当局者の話として「韓国がウクライナに数十万発の砲弾を移送する手続きを進めている」と報じた。
急変した韓国と対照を成しているのは日本の動きだ。日本は口ではロシアの侵略を強く非難しながらも、武器供与はおろか、液化天然ガス(LNG)供給の10%を占めるサハリンの天然ガス開発利権を手放さずにいる。
報復を公言したロシアが行動に出たのは7月末だった。ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相は、北朝鮮の戦勝節70周年を機に平壌(ピョンヤン)を訪れ、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と会談した。約2カ月後の9月13日には、ウラジーミル・プーチン大統領がロシア宇宙開発の象徴であるボストーチヌイ宇宙基地で金委員長に会った。プーチン大統領は、北朝鮮の人工衛星開発を支援するのかという現地メディアの質問に、「そのために我々がここに来たのだ」と答えた。
ロシアの警告が「虚言」ではないことがある程度実証されたのは11月21日だった。北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は同日夜、西海(ソヘ)衛星発射場で、偵察衛星「万里鏡1号」をロケット「千里馬1型」に搭載して打ち上げ、成功裏に宇宙軌道に安着させたと発表した。国家情報院は2日後の23日、国会情報委員会非公開全体会議で、「打ち上げの成功にはロシアの助けがあったと判断する」と明らかにした。ウクライナに「迂回供与」したとみられる砲弾が、ブーメランとなって韓国に災いを招いたのだ。
WP「韓国がウクライナに与えた砲弾、
欧州全体の支援量より多い」
韓国政府は表向きにはウクライナに殺傷兵器を支援しないという立場を維持しているが、韓国が米国を通じて「迂回支援」した砲弾の規模は、欧州全体が支援した物量の合計より多いと米国メディアが報道した。
米ワシントン・ポスト紙は4日(現地時間)、昨年2月末以降1年10カ月にわたり続いているウクライナ戦争の状況を点検する特集記事で、「韓国は究極的に欧州諸国全体の合計よりも多くの砲弾をウクライナに供給した」と報じた。
同紙によると、戦争が長期化するにつれ、ウクライナ軍が必要とする兵器と弾薬を適時に供給することが米国など西側諸国の主要課題として浮上した。2月3日、ホワイトハウスのジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)主宰で開かれた対応会議で浮上した問題は、ウクライナがロシアの防衛線を突破するのに必ず必要な155ミリ砲弾だった。
ホワイトハウスは、ウクライナが望む軍事的目的を達成するためには月9万発以上の砲弾が必要と計算したが、米国が増産しても必要量の10分の1程度しか供給できなかった。米軍がすでに保有している155ミリ砲弾を追加する方法もあったが、ロイド・オースティン国防長官はそれについて、国際的禁止対象となっている砲弾一発に小さな爆弾数十個が入ったクラスター弾であるとして供給に反対した。
結局、サリバン補佐官は米国が提供した砲弾を多く保有している韓国に支援を求める計画を立てた。米国防総省の計算によると、韓国はその気になれば保有する155ミリ砲弾33万発を41日以内にウクライナに供給できた。ただ、韓国には戦争地域に対する殺傷兵器の供給を制限する法律があるということが問題だった。米国高官らは、ウクライナに直接韓国が砲弾を供給しない「間接的方式」であれば米国の提案を受け入れる意思を明らかにした韓国政府と具体的な方法を議論した。
こうした過程を経て「今年初めから砲弾供給が始まり、結果的に韓国は全欧州諸国の合計より多くの砲弾をウクライナに提供した」とワシントン・ポストは伝えた。ただ、同紙は韓国が送った砲弾がウクライナに直接提供されたのか、米国を経由したのか、米国が自国保有分をウクライナに送り、韓国が提供したもので在庫を満たしたのか、など具体的な内容については言及しなかった。
このような内容は、今年4月に米マサチューセッツ州防衛軍空軍所属のジャック・テセイラ一等兵(21)を通じて流出した米国防総省の「盗聴文書」を通じてある程度公開されている。当時の文書を見ると、当時韓国大統領室のキム・ソンハン国家安保室長らは2月末頃、砲弾33万発をポーランドを通じて迂回支援する案を議論したという内容が出ている。
キム元室長は「ウクライナに弾薬を早く供給することが米国の究極的目標」だとし、ウクライナと国境を接するポーランドに砲弾を販売する案を提示した。この直後、韓国メディアも韓国が米国に最大50万発の砲弾を貸与することで合意したと報じた。さらにウォール・ストリート・ジャーナルは5月、「韓国がウクライナ向けの砲弾数十万発を移送中であり、これは殺傷兵器を支援しないという韓国政府の政策が変わったものだ」と伝えた。
しかし、韓国政府は今のところウクライナに殺傷兵器を支援しないという立場を維持している。韓国政府は、米国に砲弾を輸出しても、最終使用者は米国という条件をつけると明らかにした。韓国のチョ・テヨン国家安保室長は5月、国会運営委員会に出席し「ウクライナに直接支援するものではない。ポーランドを通じて迂回支援するということも事実ではない」と明らかにした。ただし今後は砲弾を支援するのかという質問に「戦況を見て他の状況を考慮して今後検討する予定」とだけ答えた。
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