すでに主要自動車市場である欧州、米国、中国などでは、政府と自動車メーカーが積極的にEVへの転換を先導している。これにより、2030~2035年はEV市場の激変期となることが予測される。

2021-12-30 10:42:58 | 温暖化現象が原因、脱炭素目指して

世界は電気自動車の闘技場…

トヨタも「9年後には販売量600倍に」(1)

登録:2021-12-29 03:38 修正:2021-12-30 08:39
 
自動車市場に押し寄せる電気自動車 
 
躊躇していたトヨタの変身宣言 
昨年6000台→2030年には年間350万台に 
「bZ」シリーズなど30種を発売 
レクサスも2035年には電気自動車のみ生産 
バッテリーなどに4兆円投資 
 
気候変動を前に電気自動車への転換は必須 
「電気自動車市場は爆発的な成長、主戦場になる」
 
 
トヨタの豊田章男社長は14日、東京お台場の展示場で開かれた記者会見で、EV未来戦略を発表した。トヨタは今後発売予定の16種の電気自動車の実物を公開した=トヨタのウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

 「これでも電気自動車(EV)に積極的でないと言うのなら、どうすれば評価していただけるのか逆に聞きたいのです」

 今月14日、東京お台場のトヨタ自動車の展示場。今や薄れていきつつある日本の製造業の栄光を象徴する自動車メーカー、トヨタ自動車の豊田章男社長が自ら記者会見の場に立ち、同社の命運をかけた大胆な計画を発表した。わずか9年後の2030年には、昨年の実に600倍にものぼる年間350万台のEVを販売すると宣言したのだ。トヨタはこの目標を達成するため、小型・中型乗用車、SUV、スポーツカー、高級ブランドなど、様々な製品群において30種のEVを生産するという計画も同時に明らかにした。

 トヨタの昨年の決算報告書によると、過去1年間(2020年4月~2021年3月)に同社が販売したバッテリー電気自動車(BEV)はわずか6000台。これを350万台に引き上げるというのだが、この数値は世界首位を争うグローバル自動車メーカーたるトヨタの昨年の総販売台数(908万7000台)の39%にのぼる規模だ。

 豊田社長はこの日、オン・オフラインで行われた説明会で、今後発売予定の16種のEVの実物を公開し、計画達成に自信を示した。トヨタが最も力を入れているモデルは、来年の発売を待つEV「bZ(beyond ZERO)」シリーズだ。今年4月に中国の上海モーターショーで初公開された量産型モデル「bZ4X」だけでなく、小型、スポーツカーなどの様々なカラーとデザインの車が展示された。業界は、トヨタはEVに対する意志を示すために「確実な物証」を公開したとの反応を示した。

 豊田社長もこれを認識したかのように「bZ4X」を指し示しつつ「(愛知県にある)トヨタ元町工場は生産準備の真っ最中だ。皆さまのもとに間もなく届けられるだろう」と述べた。この「bZ4X」がいかなる成果を収めるかによって、EVに対する挑戦の成否が決まる見通しだ。トヨタはさらに、高級ブランド「レクサス」について、2030年には米国、欧州、中国などの中心市場で、2035年には世界のすべての市場で電気自動車へと転換することを明らかにした。それに向けて電気自動車の研究・開発に4兆円を注ぎ込み、このうち2兆円は電気自動車の核心であるバッテリーに投資する方針だ。豊田社長は「あらゆる人の幸せな暮らしのために、我々はできるだけ多く、可能なら直ちに、二酸化炭素を減らさなければならない。トヨタは実現に向け全力を尽くす」と述べた。

 しかし、これまでトヨタは「EVへの移行」に積極的だったわけではない。豊田社長は、脱炭素の代案としてEVが過度に注目されることについて「(我々が減らすべき)敵は炭素であって、内燃機関ではない」と述べ、たびたび不快感を表してきた。実際にトヨタは、内燃機関であるエンジンと電気モーターを共に使用するハイブリッド(HEV)車の「プリウス」を発売し、大きな成功を収めた。トヨタは昨年、ハイブリッド車(208万7000台)と、これに充電機能を搭載してEVに近づけたプラグインハイブリッド車(PHEV、5万9000台)を合わせて200万台以上を売っている。

 トヨタで変化が始まったのは5月だった。トヨタは5月に、2030年までにEVと燃料電池車(水素自動車)を合わせて年間200万台販売するとの計画を発表した。さらに4カ月後の9月には、EVなどに使われるバッテリーの生産・開発に、2030年までに1兆5000億円を投資すると発表。豊田社長は14日の記者会見で、7カ月前に発表したEV販売目標を大幅に引き上げ、3カ月前に明らかにしたバッテリーへの投資額を5000億円増額した。

 トヨタがこうした決断を下したのは、EVへの移行はもはや「選択」の問題ではないと判断したためとみられる。すでに主要自動車市場である欧州、米国、中国などでは、政府と自動車メーカーが積極的にEVへの転換を先導している。これにより、2030~2035年はEV市場の激変期となることが予測される。(つづく)

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

 

世界は電気自動車の闘技場…

トヨタも「9年後には販売量600倍に」(2)

登録:2021-12-29 03:38 修正:2021-12-30 08:39
 
 
トヨタの豊田章男社長は14日、東京お台場の展示場で開かれた記者会見で、EV未来戦略を発表した。トヨタは今後発売予定の16種の電気自動車の実物を公開した=トヨタのウェブサイトより//ハンギョレ新聞社

(1のつづき)

 グローバルな気候変動問題に積極的に対応している欧州連合(EU)は7月、2035年から新規の内燃機関車の販売を全面禁止すると発表した。禁止される車にはハイブリッド車も含まれる。2050年の炭素排出ゼロを目標とするEUは、世界の温室効果ガス排出量の16%(グリーンピースによる統計)を占める輸送部門の改善が切実に求められるとみている。これまでの「内燃機関の新車禁止」宣言はノルウェー、オランダなどの一国単位だったが、これをEUレベルに拡大したのだ。

 米国も、電気自動車(EV)への転換に向けた政策を相次いで発表している。米国のジョー・バイデン大統領は8月、「自動車産業の未来はEVだ。引き返すことはできない」と述べ、2030年に米国で販売される新車の半分をEVなどのエコカーが占めるよう支援するための行政命令に署名した。バイデン大統領は今月8日にも、2035年までに連邦政府が使用する車両を100%EVへと転換し、2050年には政府レベルの温室効果ガス排出をゼロ化するカーボンニュートラル(炭素中立)を達成すると発表している。13日には、EV普及に向けてEVの充電所を50万カ所設置することを決めている。

 中国も10月に、2035年までに内燃機関車の生産を中止するという計画を発表している。今後はEVを50%、プラグインハイブリッドを50%生産し、ガソリンエンジン車両は退出させる方針だ。韓国政府も今年8月に発表した「2050カーボンニュートラル実現の3つのシナリオ」で、2050年にはEVや水素自動車などの炭素排出ゼロ車両の割合を76~97%にするという目標値を明らかにしている。しかし欧州、米国、中国などとは異なり、2030年代に達成すべき具体的な数値目標は提示できていない。

 先月13日に閉幕した国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)でも、「無公害車転換宣言」がなされた。米国、中国、EU、日本は2035年までに、その他の国の市場は2040年までに、新車販売は電気自動車などの100%無公害車とするよう努力することを内容とする。自動車メーカーの中ではフォード、ゼネラルモーターズ(GM)、ボルボ、メルセデス・ベンツなどの6社が宣言に賛同している。トヨタ、フォルクスワーゲン、現代などの主要メーカーが抜けているものの、トヨタの変身宣言からも分かるように、「EVへの転換」という流れを止めるのは難しい状況となっている。

 実際に、宣言に署名したボルボ(スウェーデン)は、2024年までに世界市場での販売の50%をEV、残りの50%をハイブリッド車とする予定だ。2030年からはEVのみを販売する。米国最大の完成車メーカーであるGMも、2035年から内燃機関車の販売を中止するとの目標を掲げている。GMのメアリー・バーラCEO(最高経営責任者)は10月の番組のインタビューで「2025年までに少なくとも30種のEVを発売する予定だ。その時までには必ずテスラに追いつけるだろう」と述べた。

 このほか、フォルクスワーゲン(ドイツ)は、2029年までに79種のEVを発売し、2030年には新車の半分をEVとする。ホンダ(日本)も2040年からはEVと水素自動車のみを販売する計画だ。現代自動車は2026年のEVの販売目標を、従来の100万台から170万台へと引き上げた。2035年以降、欧州ではEVと水素自動車のみを販売し、2040年までに順次その他の主要市場へと広げていくという戦略だ。市場調査会社マークラインズの資料によると、昨年のEV販売台数は、首位のテスラ(米国)が45万8385台で2位以下を圧倒。ウーリン(中国、13万1517台)、BYD(中国、13万970台)、フォルクスワーゲン(12万8046台)、ルノー(フランス、11万1429台)、現代(8万553台)などが続く。内燃機関車より市場参入の敷居が低いため、新生企業の躍進が目立つ。

 もちろん、EVの普及拡大のためには充電インフラの拡大、サプライチェーン(供給網)の安定化、バッテリー開発、補助金なしでも購入しうる適度な価格など、解決すべき課題が山積している。しかし「脱炭素」という大義のために100年以上続いてきた内燃機関車の時代を強制的に終わらせ、EVの時代に足を踏み入れるという時代の流れを止めることは難しそうだ。「日本経済新聞」は「EV市場は爆発的に成長するだろう」とし「世界の自動車メーカーの間でEVが電動車の主戦場との見方が強まっている」と指摘している。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

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