極右20~30代の根を探れ…極右教会が生み、
ユーチューブが育成=韓国
退行的な意識はどのように生じたのか
反共、反中、不正選挙、白骨団…。「従北(北朝鮮追従)」フレームさえ時効を迎えたように思われた2025年、韓国社会の青年たちの間に荒唐無稽でなじみのない「極右の単語」が出回りはじめた。「従北勢力の清算」を掲げた大統領尹錫悦(ユン・ソクヨル)による非常戒厳宣布とその後の抗弁は、支持者を刺激し、法治主義の砦たる裁判所への乱入と物理的威嚇にまで至らしめた。逮捕者の半数以上を占める青年たちは、拘束されて捜査を受ける容疑者の身となった。
第6共和国憲法の基準と常識の線をはるかに越えた危険千万な声は、どのように作られ、どのように拡散して青年へと向かったのか。専門家たちは、「教会」と「ユーチューブ」を通じて続いてきた極右勢力と主流保守政界の相互作用を指摘する。徐々に勢力を拡大していた彼らの声は、ほかならぬ共和国の大統領によって破壊的なかたちで爆発した。
■反共の揺りかご、極右プロテスタント
「ハレルヤ」、「アーメン」。ソウル漢南洞(ハンナムドン)の大統領官邸前の尹大統領支持集会の舞台発言が終わる度にあふれた叫びは、一部の極右系教会の相も変わらぬ影響力を表している。資金力不足で弱体化した「枯葉剤戦友会」や「父母連合」などの伝統的な右派官辺団体とは異なり、教会は現在も「極右青年」を活発に養成している。官邸前の集会現場では、チョン・グァンフン牧師によって作られた清教徒霊性訓練院のチョッキを着た青年を見つけるのはたやすい。
1989年の韓国キリスト教総連合会(韓基総)の結成で政治的結集を開始した保守キリスト教は、「共産主義=反キリスト教」という論理を政治と社会現象全般に適用した。キリスト研究院ネヘミヤのペ・ドンマン院長は、「韓国の保守プロテスタントは、李承晩(イ・スンマン)政権から軍部独裁までの間中ずっと既得権との癒着関係を続けてきたことで、根深い反共主義を抱くようになった。彼らにとって信仰より重要なのは反共」だとして、「依然として多くの教会が子どもから老人に至るまで保守ヘゲモニーを注入するとともに、フェミニズムのような世の中の変化を『反キリスト教的』であると教育している」と指摘する。
彼らの影響力は主流保守政治勢力との蜜月関係に育まれ、教会を越えて広がっていった。初の政権交代期である金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権の時代、その動きは本格化した。金大中政権の太陽政策に「容共(共産主義を容認)、親北朝鮮」のレッテルを貼り、盧武鉉政権時代には私立学校法の改正に対抗して当時の保守野党と動きを共にした。民主党政権に対する攻撃で勢いづいた彼らは2008年、組織的に「李明博(イ・ミョンバク)長老」を大統領に当選させるために結集する。この時、「李明博長老に投票しなければ命の書から消してしまうぞ」と説教して「行動隊長」となり、後に韓基総の会長にまで登り詰める人物こそ「チョン・グァンフン牧師」だ。
彼らは朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾後も「太極旗集会」を続け、主流政界に影響力を行使しようとした。「ファン・ギョアン伝道師」を2019年の自由韓国党代表に続き大統領候補の一人として据えることに注力した。自由韓国党は「国民の力」へと党名を変更し、極右教会勢力との線引きを試みたが、緊密な関係は簡単には清算されなかった。
この時期、過激な保守プロテスタント勢力は、嫌中感情にもとづいた陰謀論を語りはじめた。コロナ禍での中国に対する反感と、「共に民主党」の総選挙での圧勝に対する反発を、「中国とつながる野党」という陰謀論へと発展させたのだ。現在、尹大統領が暗示し、支持者が既成事実化している「中国共産党による不正選挙」陰謀論が芽生えたのだ。
■青年への拡散、ユーチューブ
朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾以降、過激なプロテスタント勢力を受け継いで「極右の産室」役を果たしたのはユーチューブだ。極右ユーチューバーはこの10年あまりの間に着実に規模を拡大し、一つの収益モデルとして定着する一方、刺激を提供して若年層を集めた。今月1日の「私はユーチューブの生配信でみなさんの頑張る姿を見ている」との尹大統領のメッセージは、「彼ら独自のメディア」として定着したユーチューバーの影響力を示している。
極右ユーチューバーは中国、移民、性的マイノリティー、フェミニズムに対する嫌悪にもとづいたメッセージを発信し、影響力を強めてきた。既存の極右プロテスタント系の主張と通じるが、より「大衆性」があるため底辺が広がりやすいという特徴がある。民主党が最近、内乱を宣伝した疑いで告発したシン・ヘシク、ペ・スンヒ、コ・ソングクら10人のユーチューバーの登録者数は、合計1017万人(22日現在)にのぼる。
当初は、保守政界の中でもユーチューバーは距離を取るべき存在とみなされていた。2022年に大統領室のカン・スンギュ市民社会首席(当時)が極右ユーチューブチャンネルに出演し、大きな批判を浴びたのが代表的な例だ。だが尹錫悦政権の発足以降、その境界線は徐々に薄れた。最近は国民の力のユン・サンヒョン議員ら主要政治家が極右ユーチューブチャンネルに頻繁に出演しているが、批判の対象にもならない。与党との交流は「主流政治から認められた」ものとして受け止められた。これは「間違っていない」、「少数ではない」という極右勢力の思いを強めた。
■極右の急浮上、引き金を引いた尹錫悦
主流保守政界との関係を続けながら徐々に底辺を広げていった教会とユーチューブを中心とする極右的主張は、12・3内乱後、突如として韓国社会の表舞台に登場した。主流保守政党である「国民の力」の極右化をも導いている。「出版&研究集団サンヒョンジェ」のチャン・ソクチュン企画委員は「不正選挙論はオンラインや教会内で散発的に議論されていた極右的な考えの接着剤的な役割を果たしており、それに対して国民の力系列の保守政党の代案的イデオロギーは不在」だとし、「米国や欧州の場合は、極右が徐々に進化していくかたちをとってきたが、韓国は突如として尹錫悦の親衛クーデターによって飛び出してくることで、社会全体の破壊的な様相として爆発している」と語った。
12・3内乱の与えた憲政蹂躙(じゅうりん)の衝撃だけでなく、それに続く「思想戦争」を専門家たちが懸念する理由はここにある。ソウル大学のパク・チョンヒ教授(政治外交学)は、「韓国は1987年に民主化したが、依然として第6共和国の憲法が身体化できておらず第5共和国にとどまっているような市民がこの国で共存している。今回の非常戒厳は『第5共和国の市民』が支持する内乱」だとし、「憲法は概略的ガイドラインに過ぎないため、それをどのように解釈し、適用するかは市民が決める。第5共和国の市民が現在へとやって来られないと、私たちはこのような不安定な事態に直面し続けることになるだろう」と懸念を表明した。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます