いよいよ4月。木々が芽吹き、花という花が一斉に咲き始めるこの季節は、何となく浮き浮きした気分になってくる。が、そんな気分に浸れるのもつかの間、否が応でも現実の厳しさを実感させられる、そんな4月になりそうである。
4月は値上げラッシュと、社会保障・税制・住宅・環境・エネルギー・食品など、暮らしに関わる制度変更が相次ぐ。その中で私たちの一番の関心事は、年金支給開始年齢の引上げだろう。厚生年金支給開始が1歳遅くなって男性は60歳から61歳となり、女性は5年遅れで引き上げられる。今後も段階的に引き上げられ、2025年度には65歳からの受給となる。そのため企業は希望者全員の65歳までの雇用確保を義務付けられ、定年延長や継続雇用で対応するという。
エネルギーで気になるのは電力・ガス料金の値上げである。電力10社は28日、5月分の家庭用の電気料金が、平均的な使用量の家庭では4月分と比べ少なくとも28~183円値上がりすると発表した。また、5月分からは太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電力を電力会社に買い取らせる制度による上乗せ金が増額されるため、値上がり幅、料金ともにさらに増えるという。
そして、都市ガス大手4社も同様の制度で全社が98~140円の値上がりとなる。電気、ガスの全社で値上がりとなるのは2か月連続。4月分は昨年11月から今年1月までの燃料費をもとに算出しているが、5月分は為替相場で円安が進行した昨年12月~今年2月の燃料費を加味するため、値上がり幅が拡大したという。
食品では、食用油が家庭用、業務用ともに10~15%程度、4月1日出荷分から値上げされる。円安と原材料高の影響が原因だが、店頭価格にすべて反映されるかはまだ分からないという。また、国内で消費される小麦の9割を輸入に依存している日本は、安定供給のため政府が一元的に買い入れ、その後、製粉会社などに売り渡している。その引渡し価格が平均9.7%引き上げられるそうで、小麦を使った食品の値上げが予想される。
円安の影響は、ナフサを原料とする合成繊維や石油化学製品にも波及しており、東レは3月出荷分からポリエステル繊維やナイロン繊維国内卸価格を10%引き上げた。また、ポリ袋や容器に使うポリエチレン樹脂は、日本ポリエチレンが6%値上げを発表している。トイレットペーパーも日本製紙クレシアと大王製紙が4月出荷分から現行価格に比べ15%以上の値上げを実施するという。
そして、自賠責保険が4月の契約分から全車種平均で13.5%値上げされる。生命保険の終身保険も各社によって異なるが、明治安田生命保険は0.1~0.3%程度、日本生命は約1割値上げするという。
このところの円安・株高に、景気が回復したかのようなマスコミ報道があるが、こうした値上げ分を吸収できるほどの景気回復が実感できるようになるのはいつのことだろうか。今のところ「アベノミクス」のご利益に与っているのは株取引や為替相場に手を出している人たちだけ。円安の恩恵を受けているのも大手企業だけで、中・小・零細企業はそのおこぼれに与るところまでには至っていない。それでも株取引で儲けた人が大散財してくれれば、少しは世の中にお金が回るのだろうが、昔から金持ちに限って財布の紐が固いというし、儲けた金はまた投資してさらに利益を上げようとするだろう。結局、金持ちがますます金持ちになるだけである。
我々庶民はこの値上げラッシュに一層財布の紐を固くし、賃金アップで安心して消費に回せるような本物の景気回復を待つしかない。桜の時期の「花冷え」は、庶民の懐の「花冷え」になりそうである。
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