モンスーンに入り熱さの峠は越えた。ホワイトブルーの空を黒い雲が蔽い激しい雨を降らせた。房の入口に立ち流れる雨水を見ている、ひとつの夏を生き延びた。雨がやむと収監者達は外へ出て意味もなく歩き回った。大きな木の下の台座に座っていると木の葉から雨水が落ち身体を濡らす、気持ちが良かった。
フィリップスの釈放が8月14日と決まった。彼はやっと落ち着きを取り戻した。釈放の日、ぼくとフィリップスは台座に座って今後の方針を綿密に話し合った。
「俺が出たら1ヶ月以内にお前をリリースさせる」
その為に弁護士を替える。ラジン・バクシ弁護士の弁護費用は少し高いが保釈を専門とし、裁判所や病院それに刑務所内に広いパイプ網を持っている。彼に弁護を依頼するには15万ルピーくらいのアドバンスが必要だ。出来るだけ早く日本からの送金を手配しておいてくれ。バクシ弁護士が弁護を引き受けてくれたら直ぐ連絡をする。この日、夕方フィリップスは釈放された。房の出口でぼくの手を強く握り
「心配するな、友達じゃないか」
「分かった、お前に任せる」
ぼくが蛇のような目をしたリーダーにパケを取られ捕まった事があった。不安に落ち込んでいたぼくに
「心配するな、友達じゃないか」
と言ってジャクソンはぼくを助けてくれた。そして今、フィリップスは友達じゃないかとぼくに言った。全てを彼に任せよう。