「はい、彼はぼくの選任弁護士です」
「よろしい、明後日、11日は刑務所外の病院へ行ってもらう。その病院のドクターには私から連絡を入れておくから何も心配する事はない。ドクターの指示通りしていれば良い」
診察室をでるとアフリカ人が
「トミー具合が悪いのか?」
「あぁ、大分悪いようだ」
ワードへ帰りながらぼくは考え続けていた。9月6日に十五万ルピーがバクシ弁護士に支払われて今日で3日目だ。彼は動き出している。確かな手応えをぼくは感じた。彼のシナリオ通りぼくが動けば必ず成功する。
9月11日(月曜日)
ぼくは数名のインド人と一緒に小型護送車に乗って病院へ向かった。着いたのは大きな総合病院だった。ぼくは通算で6年半くらい旅をしてきたが幸い大きな病気に罹った事はない。歯科と不眠で睡眠薬の処方をして貰う為、町のクリニックに行った事がある程度で一般的な下痢は病気とは言えない。刑務官に連れられ病院の玄関に入ったぼくは人間の多さに驚かされた。何処が受付でどういう手続きをして何処に行けば診察を受けられるのか、もしぼくが個人的に治療を受ける為この病院へ来たとしたら諦めて帰っただろう。廊下には診察を待っている患者だろうか座り込んだり壁に凭れ掛った人間で溢れていた。その間を刑務官とぼくは歩いて行ったが刑務官も行き先が良く分からないのか何度か病院の職員らしき人に場所を聞いていた。やっと目的の診療科に着いたのだろう刑務官は受付のシスターに来た目的を説明した後、書類を渡した。一度、席を外したシスターが戻って来るとぼくは診察室の中へ案内された。