ガンジス・河の流れ

インド・ネパール。心の旅・追想

保釈・・・12

2016-02-17 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

「はい、彼はぼくの選任弁護士です」
「よろしい、明後日、11日は刑務所外の病院へ行ってもらう。その病院のドクターには私から連絡を入れておくから何も心配する事はない。ドクターの指示通りしていれば良い」
診察室をでるとアフリカ人が
「トミー具合が悪いのか?」
「あぁ、大分悪いようだ」
ワードへ帰りながらぼくは考え続けていた。9月6日に十五万ルピーがバクシ弁護士に支払われて今日で3日目だ。彼は動き出している。確かな手応えをぼくは感じた。彼のシナリオ通りぼくが動けば必ず成功する。

   9月11日(月曜日)
 ぼくは数名のインド人と一緒に小型護送車に乗って病院へ向かった。着いたのは大きな総合病院だった。ぼくは通算で6年半くらい旅をしてきたが幸い大きな病気に罹った事はない。歯科と不眠で睡眠薬の処方をして貰う為、町のクリニックに行った事がある程度で一般的な下痢は病気とは言えない。刑務官に連れられ病院の玄関に入ったぼくは人間の多さに驚かされた。何処が受付でどういう手続きをして何処に行けば診察を受けられるのか、もしぼくが個人的に治療を受ける為この病院へ来たとしたら諦めて帰っただろう。廊下には診察を待っている患者だろうか座り込んだり壁に凭れ掛った人間で溢れていた。その間を刑務官とぼくは歩いて行ったが刑務官も行き先が良く分からないのか何度か病院の職員らしき人に場所を聞いていた。やっと目的の診療科に着いたのだろう刑務官は受付のシスターに来た目的を説明した後、書類を渡した。一度、席を外したシスターが戻って来るとぼくは診察室の中へ案内された。

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保釈・・・11

2016-02-16 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

  9月9日(土曜日)
 11時頃だろうか、刑務所にある診療所のドクターがぼくを呼んでいると模範囚のジャクソンが知らせてくれた。
「ぼくはどこも悪くない、何故だ?」
「トミーを連れて来いとドクターに言われただけだ」
あれこれ考えても分からないものは分からない。スタッフやビリを私物の中に隠し急いで診療所へ向かった。屋外公会堂の舞台にはアフリカ人やインド人が診察の順番を待っていた。ジャクソンはそれに関係なく診察室に入りドクターにぼくを会わせると戻って行った。ドクターは助手に指示してぼくの体重や身長の他に身体的特徴を調べさせた。それが終るとドクターはぼくに机の前の椅子に座るように言った。有り触れた質問で名前、生年月日、国籍、宗教等をドクターは書類に書き込んでいる。外国人収監者の健康診断だろうか、そんな事を考えていた。問診に入ってからドクターの質問は医学用語を含めている為、ぼくに理解できる部分は少なかった。そんなぼくを気にする風でもなく、時々ぼくの顔を見たり質問をしたりしながら書類を書き続けていた。終ったのだろうペンを机の上に置いたドクターはぼくの顔を見て机の上に身を乗り出し、小さな声で
「君は、バクシ弁護士を知っていますね」 と聞かれた。

小雪舞う寒い一日 何もすることがない 雪を見ながら朝からちびちび呑んでいた
呑んべぇTさんからワカメどうなとぅ と電話があった ワカメの新芽は柔らかく美味しい
寒波がねぇ~ それが過ぎてから採りに行こう ワカメは逃げんもん
そいでも人が採るばい 心配せんでよか なんぼでもあるっちゃ
あんた 呑んどらせんねぇ 臭うねぇ なんいうとん電話ばい これは
そうだった 少し酔うとるかもしれん

   
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保釈・・・10  大使館からの手紙

2016-01-22 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

  9月8日(金曜日)
   
9月6日、バクシ弁護士、ミス・マリーが来訪し、貴殿の要求通り十五万ルピーを支払いました。

[バクシ弁護士にお金が渡ったら問題は進む] フィリップス、マリーを信頼する。


琴奨菊~~福岡の男なら1度で良い、大輪を咲かせてください
どん底まで落ちたま松鳳山、幕下から応援していました
魁皇に続いて・・・応援しています        tomy

 
 
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保釈・・・9  エマは組織の人間 

2016-01-21 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

   9月6日(水曜日)
 昼12時の施錠時、エマがぼくの3房に入って来た。これは刑務官の了解を得れば何の問題もない。エマの1房が1名欠員で3房が1名増えたという確認だけで済む。昼食が終った後エマはおもむろに下着の中からベビーハムぐらいの大きさの黒いビニールでラッピングされた物を取り出した。ぼくはそれが何であるか直ぐに分かった。スタッフ50gの大パケだ。ぼくは扇風機を止めた。広げた新聞紙の上にパケからスタッフが出された。刑務所内には正確なスケールはない。かなりいい加減な匙加減で10gの中パケが素早く作られていった。ぼくはサンプルとしてそのスタッフを吸ってみた。エマには5gの中パケを2~3個、作ってくれるよう頼んだ。ぼくが使用する分についてはエマがストックし、残りは他のストッカーへ回すようだ。エマはやはり組織の人間だ、ぼくはそう確信した。
No2Wardで最悪の状況に追い込まれた。要注意のへび目にパケを押収された。
[誰からか?話せ。今、話せばパケは返してやる] ぼくは話せない。
奴がSPにレポートを提出したら・・・ぼくは組織のすべてをゲロする。
組織は壊滅するだろう・・・翌朝、ジャクソン、トビキ、 エマに呼ばれた、
心配するな問題はなかった 友達じゃないか 組織の結束は固い。
支払い能力のある欧米、日本人からの収入に頼るしかない、それが裁判費用に必要なのだ
 ぼくはスタッフへの依存の深みに入り込んでいた。今では小パケではなく5g単位で買いダイクと吸い続けていた。この状態が続けば何れぼくは肉体的にも金銭的にも破綻してしまうだろう。早くここから出なければならない。


こどもは風の子 雪も雨も風になって遊ぶ
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保釈・・・8   マリーの面会

2016-01-06 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

マリーが大使館からの5日付手紙をぼくに渡してくれた。短い文面だが確認をする、じっと手紙を読んでいるぼくに
[何て書いてあるの?] 
[うん 良い知らせだょ、フィリップスを呼んでくれる]
十五万ルピー支払いの準備が出来た事をフィリップス、マリーに伝えた。
「今日これからバクシ弁護士に会う、明日の約束は取れるだろう。彼も早い決着を望んでいる、同行して大使館に行くことになるだろう。弁護士への支払いが済めば裁判の動きが早くなる。判決文が出るのも早いだろう、至急、日本からの送金の手配をしてくれ。バクシ弁護士が裁判官から得た感触では保釈預託金は約4ラークだと言っている。この件については裁判所から預託金預り証明書が出され不正の心配はない」
 今回、五千ドルの送金は済んでいる。現在、大使館に保管されているぼくのお金は約3ラーク。日本からの送金一万ドルは必要ないが、保釈後の生活費やシンジケートへの支払い等を考えれば度々、大使館口座を使う煩わしさを避ける意味を含めて大使館への依頼は一万ドルとした。

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保釈・・・7  大使館からの返信

2016-01-05 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

送金の件を再度、大使館に依頼する手紙と、日本の姉へ裁判が近々終了し帰国する事を伝える手紙をマリーに託した。これで保釈まで本当にいけるのか?次回の出頭日は9月25日、後、20日ぐらいで全て決着をつけたい。もしこれで失敗したら保釈の機会はなくなる。駄目だったら第4刑務所のアシアナ医療監房に再度入院してドラッグを断ち長期に備えるか、それともボブのように首でも吊るか、いつ出られるとも分からない日々を唯じっと
待ち続けるなんてぼくにはとても我慢できない。

   9月5日(火曜日)
   
9月4日付け貴殿作成の手紙を読みました。
貴殿要求の弁護士等の登録諸費用十五万ルピーについては既に準備済みです。弁護士が来訪した際には支払っておきます。
           お体を大切に。

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保釈・・・6  大使館宛の手紙

2016-01-04 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

  9月4日(月曜日)
   
  いつもご迷惑をお掛けし申し訳ありません。次の件よろしくご対応の程、お願い致します。
一、大使館の方ですでに準備されています、私名義の保管金より十五万ルピーを左記の者へお支払い下さ
  い。  
  ラジン・バクシ弁護士。
  (本人、弁護士であることを確認できる証明書を持参します)
  同行者、ミス・マリー
二、保釈の件について
  裁判所へ保釈預託金を納めてから2週間くらいで判決文が出されると弁護士より報告を受けています。
  次回、裁判所出頭日は9月25日です。それまでに保釈預託金が完納されなければ保釈は行われません。
  正確な金額ではありませんが最終的には日本からの送金を一万ドルぐらいと考えております。
三、私生活について
  ご指摘の通り弁解の余地がありません。ご心配をお掛けし申し訳ありません。

  
 
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保釈・・・5  大使館からの返信

2015-11-24 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

  8月29日(火曜日)
   大使館からの返信
28日あなたの手紙を確かに受け取りました。現在、高裁における保釈に向けて手続き中との事、事情よく分かりました。
要求金額については、あまり高額につき至急手続きを進めますが、本日は支払う事は出来ませんでした。
又、来月早々、刑務所を訪問する予定ですので、その時までに。
一、今後どのような手続きで保釈を進めるのか。
二、刑務所内での生活
  特に借金が相当あるようですが、どういう理由か。(私的な事とは?)
三、選任した弁護士について、選任の経緯。これらの点について手紙を書いて下さい。
  
  8月31日(木曜日)
   大使館からの手紙
一、依頼通り、本邦からニューデリー東京銀行に五千ドル相当を振込んでもらいました。(8月29日)
二、弁護士が大使館へ赴いた際には確実に手数料等として支払っておきます。
三、仮に裁判が順調に進行したと仮定して、あなたの裁判に関し、いかなる理由があろうとも大使館は身元保証人となれないことを理解しておいて下さい。
四、9月上旬、刑務所を訪問予定です。
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保釈・・・4  大使館への手紙

2015-11-11 | 5章 デリー中央刑務所  保釈

  8月25日(金曜日)
大使館からの三点についての説明要求にぼくは苦慮した。日本から送金される五千ドルについては
一、十万ルピーは裁判所への保釈金のアドバンス。
二、五万ルピーは弁護士の弁護費用のアドバンス。
と説明した。裁判所へ保釈金の一部を納める事によって保釈日はその日から2~4週間以内に決まる。しかし保釈されるにはその間に裁判所へ納める保釈預託金を用意し完納しなければならない。これで日本からの送金理由と裁判進行状況の説明になると考えた。しかし残るもう1点、五万ルピーの使途についての説明は出来なかった。監房用のテレビを一台、買ったが千ルピーでしかない。シンジケートへのドラッグ代の支払いが溜まっていた。プッシャーであるフィリップスはその件について一切請求はしない、が奴の立場を考えると何とかしなければならない。ぼくは苦し紛れで私的使用と書いた。
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保釈・・・3   大使館からの返信

2015-10-26 | 5章 デリー中央刑務所  保釈


   大使館からの返信(22・Aug・1995)
22日、あなたの手紙を持参したミス・マリーに会いました。あなたの要求について伺いたいので、至急ご返事を下さい。
一、要求の五万ルピーの使途は。
二、本邦からの送金、五千ドルの使途は。
三、裁判の進行状況と保釈の件。
お返事をお待ちしております。
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