流れのババが消えてから数日が経っている。ぼくはこのババが大好きだ。多くのサドゥと接してきたが彼ほどのサドゥらしいサドゥを見たことがない。彼と一緒にチラムを吸うと場の雰囲気が引き締まる。流れのババがいない間に一つの事件があった。
朝の瞑想が終るといつものように別館下へ行った。サドゥ達は朝、起きると寺院へ行っているのだろう、残っているババは少ない。片目のババはガンガの方を向いてぼんやりと坐っている。見ると片目のババの右目から涙のように赤い血が流れていた。ぼくは驚いて周りを見るが他のババ達は何事もないようにぼんやりとしている。「お前ら片目のババの目から血が流れているのに何だ、その態度は」とぼくは怒った。どうしたんだとババに聞いても、ヒンディー語の説明では事情は分からない。出店のババが近寄ってきて、駄目だという意味だろうか首を左右に振る。顔を強くぶっつけたのだろうか、それにしては眼鏡は毀れていない。何もしない周りのババ達に「お前ら、冷たいじゃないか」とぼくは頭にきた。だが考えてみれば、片目のババに何かをしてやろうと思ってもババ達には何も出来ない。彼を病院へ連れて行くお金なんて誰も持っていない。自分が生きていくだけで精一杯なのだ。インドの自然は厳しい、その中で生きていく為には強い生命力が求められる。それを失うと死は一気に襲いかかる。
朝の瞑想が終るといつものように別館下へ行った。サドゥ達は朝、起きると寺院へ行っているのだろう、残っているババは少ない。片目のババはガンガの方を向いてぼんやりと坐っている。見ると片目のババの右目から涙のように赤い血が流れていた。ぼくは驚いて周りを見るが他のババ達は何事もないようにぼんやりとしている。「お前ら片目のババの目から血が流れているのに何だ、その態度は」とぼくは怒った。どうしたんだとババに聞いても、ヒンディー語の説明では事情は分からない。出店のババが近寄ってきて、駄目だという意味だろうか首を左右に振る。顔を強くぶっつけたのだろうか、それにしては眼鏡は毀れていない。何もしない周りのババ達に「お前ら、冷たいじゃないか」とぼくは頭にきた。だが考えてみれば、片目のババに何かをしてやろうと思ってもババ達には何も出来ない。彼を病院へ連れて行くお金なんて誰も持っていない。自分が生きていくだけで精一杯なのだ。インドの自然は厳しい、その中で生きていく為には強い生命力が求められる。それを失うと死は一気に襲いかかる。