午後になるとおばちゃんの息子らしいガキが店番の交代にやってくる。多分、小学校の授業が終ってから来ているのだろうが何とも小賢しいガキだ。チャイの作り方はちゃんと知っているし味はおばちゃんが作ったチャイと変わらない。頭の回転が速そうな子供だ。ぼくがチャイを飲みながらそれとなく子供を見ていると店番をしているときの目は商売人になっている。客を品定めしてどじなおっさんぐらいだったら値段を誤魔化して小遣いを稼いでいた。おばちゃんが昼の食事と休憩が終って戻ってくるまでの間に何杯のチャイが売れたのか知っているのは子供だけだ。毎日ではないがチャイの売り上げが多い日がある。そんな日にはチャイの代金2杯分4ルピーくらいを半ズボンのポケットに隠しこんでいた。子供の小遣いとしては多過ぎるように思えるがおばちゃんに内緒でお金を貯めているのかもしれない。おばちゃんが店へ戻ってくると子供はすっと参道の方へ逃げていった。
日曜日はアシュラムのスケジュールは休みだ。ぼくはバザールの食堂で夕食を終え別館下へ向かって歩いているとチャイ屋を片づけているおばちゃんに会った。見るとおばちゃんは大きな風呂敷を広げて鍋からタバコ等一切を包んでいた。本通りの端に取り付けてある露店だから金目の物を置いていく訳にはいかない。毎日おばちゃんは商売道具一式を担いで行き来していたのだ。薄暗くなった通りを大きな風呂敷包みを肩に担いでおばちゃんはリシケシの町へ歩いて行った。