確かに彼はインド人との付き合いが多かったしインド人社会に入り込んでいた。ショッカンは5000ルピーを裁判所に支払えばリリースされると言っていた。他の3名もその程度のドラッグ事犯なのだろう。ディクソンの刑は長いのかもしれない。それはポーランド人のダニエルと関係しているからではないだろうか、そんな気がする。ディクソンとダニエルはどこかで繋がっている。カマルはインド人だがポーランド国籍を持っている、どんな理由で、何の目的があってそうしたのか。ニューデリーのメインバザールでロシア語を話す太った白人の男女を良く見かけた、明らかに運び屋だ。何を持ち込み何を運び出しているのかぼくは何も知らない。インドの豊富な物資と安い価格、タジキスタンからパキスタンを通ればインドは近い、何らかの物資ルートがあるのではないだろうか。ディクソンは第8収監区に替わって良かったと思う、第5収監区にいればスタッフの誘惑もある、刑務官のチェックは度々あり危険だ。インド人のワードで静かに刑の終了を待った方が良い、大人しい人の良いスリランカ人だった。
アフガン人のプランはピーターの4房に入っていた。ここ2~3日ピーターはぼくに会う度、愚痴をこぼしていた、プランの盗みに閉口しているようだ。房の外へ出る時スタッフやビリを持ち歩く訳にはいかない、私物の中に隠しているのだがその間にプランが隙を見てはそれを盗むらしい。奴が来る前にはそんな事は一度もなかったとピーター。プランを追求しても俺はそんな事やっていないと逃げる。盗みの現場を押さえるしかないのだが捕まえても刑務官を呼ぶ訳にはいかない、盗まれた物がスタッフやビリだからだ。逆にピーターが刑務官から追求されるのが落ちだ。手の打ちようがない、ただ早くプランがリリースされる日を待つしかなさそうだ。犯罪者だけを集めた刑務所だ、盗みや詐欺のプロがごろ々している。ぼくも何度、盗まれ騙された事か。