彼はぼくの書類にちらっと目を通し机の端に置いた。順番があるのだろうぼく達は椅子に座って呼ばれるのを待った。用件が済んだネパール人は出て行き新しい申請者が入ってきた。管理官の仕事は進んでいる、だが何故なのか彼はぼくが提出した申請書には手を出さない。進行しない状況に苛立ったぼくはスンダルを管理官のところへ事情を聞きに行かせた。スンダルは管理官の横に立ち話を切り出すタイミングを計っていた。立ち上がった管理官はスンダルに何か説明をすると事務室から出て行ってしまった。ビザ申請の手続きは進まない、昼になってしまった。ぼく達も横の通路に出た。
「どうなっているのか?」
「彼は入国記録がないのでサインは出来ないと言っている」
スンダルはそうぼくに伝えると難しい顔をした。
午後になった。ぼくは我慢できず直接、管理官の説明を聞きに行った。説明は同じだった。だが彼は一つの解決方法を教えてくれた。
「2階に出入国記録の保管倉庫がある。その中のスノウリ入国記録を調べて、君の記録があればそれをここへ持って来い」
ぼく達は2階の倉庫へ行った。どこをどう探してもぼくの入国記録は出てこない。それはぼくが一番よく知っている、密入国しているのだから。