朝だけは気持ちよくスタッフを吸え、朝食も美味しく食べられる。その後だ、昼食を食べる頃になると吐気がする。もう粉を止めたい、ここを出て早くカトマンズへ戻りたい、日本に帰りたい。しかし日本へ帰る前に粉を断たなければならない、どこで、どうしてスタッフを抜くのか、地獄のスタッフを。もう何もかも嫌だ、ここの生活もうんざりだ。
夜中、ベッドの横のテーブルを引っくり返してしまった。ぼくの部屋は広い、出入り口のドア右横に照明と扇風機のスイッチがある。十月下旬だがスタッフを入れるとき以外は天井の扇風機は回している。ライターやロウソクは使えない、暗い部屋の中を恐る々歩いてスイッチを入れトイレへ行く。終れば照明を消してベッドへ戻る、何度も危ないなと思っていたのだが。灰皿やティーカップ、受け皿などがフロアーに落ちた。ベッドとテーブルの間に倒れぼんやりとチョッパルのパタ々する音を聞いた。
「どうしたの、トミー?」ぼくの部屋へ入るとマリーが照明のスイッチを入れた。
ベッドに近づいてフロアーと横たわるぼくを見ている。
「驚かしてごめん、ちょっと転んだだけだよ、後は自分で片付けるから」
膝を強く打ったようだ、直ぐには立ち上る事が出来ない。割れて飛び散ったティーカップや吸殻、ノート、本、破れたパケから零れたスタッフ。手の付けようがない、ベッドに座ってぼくはじっと見ていた。
ディワリ祭に入って裁判所への出頭日が二週連続で土曜日、翌週が木曜日と変更された。
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