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届いてみたプーリーを、早速エンジンの軸に差し込んでみると…、あれ?入らない?いや…嘘でしょ?
ちょっとキツイ、とかではなく、もう本格的に入らない!
20mmのシャフトになんで20mmの穴のプーリーが入らないの?
ノギスで測ってみても、20mmと20mmで間違いない。
これは自分の注文のミスなのか?それともなんらかの加工での手違いなのか?
ミスミに問い合わせてみると、電話を3人ほどまわされてやっと話が通じて、それで結局「自社加工ではないので、加工したところ(NBK)に問い合わせてみます」とのことで、しばらくして返ってきた返事は「注文どおりに作ったそうです」とのこと、こちらの注文ミスだったとして、はめあい公差はどのように指定したらよかったのか?と聞いてみたが、どうもぼんやりとした答えしか返ってこない。
だったらもう、加工をした鍋屋バイテックに直接聞いてみるしかない!
と、いうわけで鍋屋バイテックに電話すると、若干緊張気味の若い女性が出たので、てっきり電話をつなぐオペレーターの方かと思い「この度プーリの追加加工をしてもらい、かくかくしかじかで、はめあい公差についてお聞きしたいので、担当の方につないでいただきたいのですが」と伝えると
「あ、はい、では私が承ります!」と、意外な答えが。大丈夫なのかなーと思い、そのまま聞いてみると、ゆっくりたどたどしいながら、でも、ちゃんとはめあい公差の知識を把握していて、こちらの知りたいことを、隅々まできちんと答えてくれました。ようやく理解できて頭の中がすっきり!!
<はめあい公差まとめ>
というわけで、関連書籍も図書館には見当たらず、ネット上を右往左往しても、結局よくわからなかったはめあい公差について、自分なりにまとめてみることにしました。
まず、はめあい公差とはなにか?わかりやすくシンプルに言うならば、
「軸と穴の大きさ(太さ)を決めるときの、仕上がりのキツさと精度」
ということになるかと思います。
精度を要する設計にとって、1mmの幅は広い!同じ20mmの中にもブカブカだったり、キツキツだったり、いろいろある、ということです。
これは、気温や湿度による収縮や膨張を前提につくる木工とはまた別の世界ですね。
順に、『すきまばめ(=ブカブカ)』→『中間ばめ』→『しまりばめ(=キツキツ)』と呼ばれます。
さて、下のリンク先の表を見ていただくと、表の縦と横にアルファベットと数字が並んでいるかと思います。
→鍋屋バイテックホームページより「寸法公差及びはめあいの方式」
まず、『大文字と小文字』があるのは、
大文字→穴のはめあい公差
小文字→軸のはめあい公差
で、H(h)を基準寸法として
穴大きい←F G H I J→穴小さい
軸細い ←f g h i j →軸太い
と、なります。
『数字』は等級=精度を表していて、数字が小さくなるほど精度が高くなります。
今回の注文では、加工にかかる費用はどれを選択しても一緒ですが、普通は精度が上がるほどコストがかかるので、予算とのかねあいで、このくらいで、というところに決めます。
次に下のリンク先の表の見方は
基準となる寸法が大きければ大きいほど、精度の誤差も大きくなっていくので、
縦が基準となる軸の太さ、と横がそれに対応したそれぞれの誤差範囲を表しています。
→鍋屋バイテックホームページより「多く用いられるはめあいの穴の寸法許容差 」
今回のケースで言うと、基準となる軸の寸法が20mmなので、縦軸の「18を超え、24以下」のところをみて、誤差範囲は、H6なら0~+13μm 、H7なら0~+21μm、H8なら0~+33μmとなります。
詳しくはコチラですっきりわかりやすくまとめられています。
→大塚商会「公差域クラスの記号の意味と記入テクニック」
と、こういったことを踏まえて、今回どうすればよかったか?
今回の注文では、まず、エンジンの軸ありきだったので、軸の基準寸法20mmで考えます。
この時に、軸の公差までわかっていればよかったのですが、わかったのは、公差について理解したあとでした。
軸の公差がわからないときは、なんとも言えないので、安全範囲を多めにとります。
ギュウギュウではこまるけど、ブカブカでもこまるので、H8(0~+33μm)とか、G7(+7~+28μm)くらいがいいところだったのでは、と思います。
とにかく、基準となる軸(や穴)のはめあい公差がわからない場合は、どう設定すべきかはなんとも言えず、どうしても出たとこ勝負になってしまうとのことです。
というわけで、なんとかはめあい公差が理解できたので、その後、シャフトの注文は問題なくこなすことができました。
結局、プーリーはエンジンのシャフトを紙ヤスリで削ってうまく入れることができて一件落着でした。
お次はついに組み上げ作業に入ります。
続く…