今回ホイロは自分が担当し、セイロは父に作ってもらいました。
これは初々しき「ての市」でのデビュー当時の写真。まだ試作品の部分もあります。蓋も綺麗ですね。
この角セイロ、買うと本体、台す、蓋、それぞれ一万円くらいするのです!
構造自体はとてもシンプルそうなのに何故?自分で作れるんじゃないだろうか?
というわけで父と相談しながら設計して、制作を父にお願いしました。
ところがこれが見た目同じように作れても、実際に蒸しに使ってみると丸セイロとは勝手が違い、わからないことだらけでした。
しかも出回っている情報量が圧倒的に少なく、暗中模索、右往左往でしたが、いろいろやってもらってやっと満足いく完成度のものができました。
<セイロ本体>
こちらが今回作ってもらったセイロ本体、『身』というそうです。
木の枠にスノコを乗せる棒が渡されているだけの、実にシンプルな構造です。
↑市販の角セイロです。
市販のものは、組んだ木の出張った部分の持ち手がついていますが、うちはセイロのまま発酵器に入れるのと、番重として使う際にも邪魔だったので、ただの箱型にして省スペース化しました。材は市販のものと同じく『サワラ』です。
中に敷くスノコは市販のもの(千円くらい)を使っています。まんじゅうが種類を問わず4×4=16個並ぶ大きさの39センチ×39センチのスノコに合わせて寸法を出しました。
組んだ木は木釘で止めてあります。
<台す>
丸セイロはちょうどよい大きさの鍋があればそのままつかえますが、
角セイロは下が大きく四角く開いているので、このような『台す』が必要になります。
真ん中に蒸気を通す穴が空いています。
裏面。鍋の当たる方です。
市販のものは裏も表もまっさらなただの穴のあいた板ですが、後から説明する理由で、裏表共に木枠がつけてあります。
表の木枠は後から付け加えてもらったのでステンレスのネジ止めです。
蒸気の穴も、丸セイロの場合は、鍋全体から蒸気が上がってくるのに対して、角セイロ台すの市販品は真ん中に小さい穴が一つあるだけです。果たして一つの穴でいかにして全体に蒸気をまわすのか?
そのままだと、真ん中のまんじゅうにだけ直接蒸気が当たってしまい、蒸しあがりにムラができてしまいます。そこで…
台すに、背の低いスペーサー用のセイロと、蒸し皿を置いて…
その上にセイロを置いて…
これで蒸気が全体に上手くまわるようなりました。
蒸気の出口にワンクッション置くアイディアは、農家さんの家に角セイロ用のガス蒸し器を見させてもらい、参考にさせていただきました。
<蓋>
後付けでいろいろやった為にフランケンシュタインみたいになってしまいましたが、このツギハギだらけの蓋が、一番思い入れがあります。
取っ手は、父も初挑戦の『蟻(あり)ホゾ』止めです!
これで、蓋の反りをある程度防げるのでは、と思っていましたが残念ながら…。
最初は四隅が持ち上がってしまって、そこから蒸気が漏れてしまうので、なかなか温度が上がりませんでした。
酒まんじゅうの蒸し上げはとてもデリケートなので、高い温度で一気に蒸し上げないとうまく膨らまなかったり、表面が荒れてしまったりします。
また、温度が上がらないからと、強火のままだと蒸気が多すぎて、やはり表面が水っぽく荒れてしまいます。
また、外売りの温め直しの際も、ただでさえ気温の低い屋外で、いつまでたっても温度が上がらないのでは、丸セイロより逆に効率が悪くなってしまいます。
とにもかくにも、木の反りをなんとかして、保温性、気密性を高めないことには、見せかけばかりの張り子の角セイロになってしまいます。
端に縦方向に継ぎ木をしてもらうことで、四隅が持ち上がる問題は解決しましたが、今度は付けてもらった木自体が反ってしまいました。
結局、市販の蓋が反らないのは、高級な柾目の木(まさめ:木の中心に近い部分の材木。木目が平行で、反りづらい)を使っているからだろう、という結論に達しました。
でも結局お金をかけて解決するのでは面白くない、そこは頭の使いどころです。
木の反りを無くすことができないのであれば、反ることを前提にした対策をしてしまおう!というわけで、蓋の裏面に木枠をつけてもらいました。
これで、木枠自体で反りも防ぐし、多少反ってもセイロと蓋との間に蒸気の抜ける隙間がほとんどできません。
これが大成功!セイロの中の温度はぐんぐん上昇。あっというまに90度を超えて99度まで到達、弱火にしても90度以上を保つことができました。
これにて、角セイロとの長い闘いが、ようやく一段落しました。
(他に、蒸し中のまんじゅうに蓋から落ちる水滴の問題がありましたが、これはコンロ自体に傾斜をつけることで解決しました。)
<作ってもらってみて>
市販のセイロがあんなに高いのにも、ちゃんと理由があることがわかりました。
と、言っても、自作できないわけでは無いこともわかりました。
さて、今までの丸セイロ+麹箱だと、セイロひとつに付きまんじゅう5~7個。
その丸セイロが7個あったので、一度に作れる量はせいぜい35~49個。
「生地づくり」→「包み」→「発酵」→「蒸し上げ」のセットを一日に何度も繰り返さねばならず、大変効率の悪いものでした。
それが、今回大型のホイロが完成し、角セイロを10個作ってもらったので、一度に(理論的には)160個のまんじゅうが作れるようになりました。
一度に160にはまだ挑戦していないですが、100個近くが4時間位でサクっと作れるようになって本当にびっくりしました。
夢は思い続けていれば叶うものですね。
というか、この場を借りて、父に感謝です。
→その後の角セイロ