たすくの空中散歩

千葉県我孫子「石臼と麦」店主、相澤たすくの農作業や工作や
日々の一喜一憂を記録していきます。

七草セルフリフォーム日記20~二階DK床剥がし

2020年12月31日 10時00分50秒 | 一喜一憂
前回


壁の塗装や風呂のリフォームが無事に終わったので、二階のダイニングキッチンの床を張り替えます。
写真で見るとわかりませんが…


この床、体感ではっきりとわかるくらい(私の場合、行き来するたびにふらっと酔ってしまうくらい)床が傾いているのです。

その傾き、というよりゆがみの原因は何なのか?開けてびっくりドキドキ…

と、その前に
部屋の柱それぞれに、水平の基準線をひいておきます。


ハウスを建てる時に知った方法、バケツに水を張って、チューブをたらして、ちょっと吸い取ります。すると…


あら不思議、バケツの中の水面の高さと、チューブの中の水面の高さは必ず同じ高さになります。水引きというそうです。
超アナログながらすごい!!
このしくみを利用して、部屋の真ん中にバケツを置いて、部屋の柱にしるしをつけながら一周します。これですべてのしるしは水平になるしくみ。


壁塗りが無事に終わった日に、いよいよ床開封の儀。
腐ってたりしませんように…


開いたー!!
よかった、木は無事だし、構造もシンプルだった!いわゆる根太直貼り工法ですね。
今はこの床のようにへこみができたりするので、根太(床を支える構造材)の上に合板などの下地材を張った上に床材を張るのが一般的だそうです。


釘が斜め打ちで入っているので、抜きながらはずすのは困難。半ば壊しながら開けます。


この端っこがやっかいでした。
床材の上に壁材が噛んでいるのです。


カッターでえっちらおっちら…


コツがわかってくるとどんどん外せました。それにしても床の廃材の量が想像以上でした!
セルフリフォームの難関の一つは、いちいち発生する業務サイズのゴミ。
そのことについても、どこかでお話しできたらと思います。


キッチンシンクをどかします。


ここの壁も何らかの方法で綺麗にする予定。


シンクはまだ使うので、どかしながらの作業になります。


シンク下はこんな感じ。


無事に全部剥がせました。


各柱につけた印から、床を支えていた根太材までの距離を測って、どこがどれだけ傾いているのかの数字を出していきます。

これが、予想を超えたとんでもない事態に…

続く…

七草セルフリフォーム日記21~2階DK水平直し①
七草セルフリフォーム日記 目次


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種子法廃止と種苗法改正、実際のところどうなのかまとめ②

2020年12月21日 19時13分31秒 | 一喜一憂
前回

さて、名前が似ていて紛らわしいのですが、種苗法の改正に遡ること数年前、国会でひとつの法案が可決されました。それが、2017年「種子法の廃止」法案です。
その採決が、あっという間にいつのまにか決まってしまっていたらしく、今回の種苗法の改正にまで尾を引く、不信の原因となっているようです。

では、その種子法とは何なのか、というと
ーーー
種子法=正式名称「主要農産物種子法」
昭和27年に、米・麦・大豆の主要作物について、優良な種子の安定的な生産と普及を「国が果たすべき役割」と定めた法律。
自治体ごとの奨励品種の選定の義務化や、その原原種・原種・一般種子の生産と安定供給に各自治体が責任も持つことが定められている。
ーーー
ようは、国民にとって欠かせない主要農産物の種子に関しては、公共の財産として税金を使って守っていこう、というような取り決めの法律です。

で、廃止の理由がこちら

農林水産省HPより「主要農作物種子法を廃止する法律案の概要 背景 法案の概要」

…なのですが、概要は種苗法の改正とは対照的に、わずか1ページ。
正直あまり、「どうしても廃止しなければならない理由」が伝わってこない。
なんとなく、もやのかかったようなはっきりしない感じ。

要約すると、
「品種改良の技術、品質は安定期に入っていて、公的に保護しなくてはならない時期は終えた。
今後は国際的な競争力をつけるために民間のノウハウを取り入れていきたいのだが、種子法があることで、民間に不利になっているから廃止したい。」
というような感じ。

で、同時に進められている「農業競争力強化支援法」の8条4項で、これまでの研究データや素材も民間に提供しなければならない旨が書いてあるそうで、

農業競争力強化支援法 | e-Gov法令検索

とにかく、政府としては、今まで公共事業としてやってきた主要農産物の種子生産を民間に任せたい、と。
そういうとらえ方で合っているのかどうかは定かではないのですが、そうとらえることもできます。

種子の品質維持、安定供給とは、そのまま食の品質維持、安定供給に関わる重要な問題です。
そんな大事な案件を、わずか1ページのいろんな意味で薄い説明文だけで、国民に周知させて議論される時間の余地も与えないままにいつの間にか決めてしまった、とあれば、やはり「なにか後ろめたい本当の目的があるのでは?」と勘繰りたくもなります。
折しも世界では、特定の大企業による、種子の権利の囲い込みによる独占的な販売が進められているという現実があるのです。
公共の利益を追求する国営事業から、株主の利益を追求する海外の民間企業へ日本の種子の主導権が握られたら、と思うとやはり心穏やかではいられません。

というわけで、種苗法の改正に反対している人たちというのは、この種子法の廃止に反対している(いた)人たちで、「種子法の廃止に種苗法の改正を加えることによって、海外の企業の支配に有利な環境が完成する」ことを危惧されているのです。

確かに、裏でコソコソ日本の公共の財産をジャンジャカ売りに出してばかりいる今の政府のことですから、すること成すこと、全部悪だくみに見えてきてしまうのは仕方ないのかもしれません。

オススメ図書→「日本が売られる」堤 未果 (幻冬舎) 

しかしながら、種苗法の改正に関しては、政府の公式説明を読む限り、大変中身のある、説得力のある改正であり、どうもただ単に悪だくみであるようには思えません。

というわけで、種子法の廃止法案採決時のことについて、さらに詳しく調べていくと、どうやら採決の際にもちゃんと反対意見があり、種子法の廃止によって危惧されること、懸念点に対する牽制として、付帯決議(ふたいけつぎ=法的な強制力はないけれど、政府が尊重しなければいけない決まり)が議決されていることがわかりました。
そして、そこでは

・特定企業の独占にならないようにすること
・種子の多様性を確保すること
・引き続き財源を確保するために、財政需要の周知を徹底すること

などの、思わず「なんだ、政治家わかってるじゃない!」と嬉しくなってしまうような内容に加えて

・今後も優良な品質の種子の流通を確保するため、種苗法に基づいて適切な基準を定め、運用すること
・国外に流出することなく適正な価格で国内で生産されるように努めること

という、おそらく種苗法改正への起点となったのではないかと推測される文面が見つかりました。


と、いうことは…
そもそも種苗法の改正とは、種子法の廃止への反対意見から生まれたものである可能性があり、その種苗法の改正に反対するということは、実は種子法の廃止に反対することに反対することになってしまっていて、「日本の種子を守る」という本来の目的に対して自己矛盾してしまっているのではないでしょうか?



もしそうだとするならば、種苗法の改正についての概要説明が、やたらと気合の入った、理論整然とした中身のある内容なのに対して、改正反対派の皆さんの意見がスジの通らない、論点の定まらないものになっていたことなどにも納得がいきます。

結局のところ、実際のところはどうなのか、なんてわかりませんが、とにかく、種子法の廃止に関しては、採決の際には、ちゃんと懸念点に対する牽制が付帯決議というはっきりと残る形で表明されていること、そして、世間での危機感の強まりから、各自治体ごとに、種子法に代わる条例が新たに制定されてきていること(これは反対運動の皆さんのお陰かもしれない)などから、ひとまず、すぐにでもえらいことになるような感じではなさそうです。


<同じ国、同じ時代に生まれて>

どんな政策にも、メリットとデメリットがあります。
普段、ただの消費者でいると気づきにくいことかもしれませんが、
政治とは常にトレードオフです。
何かをするには何かを犠牲にしなくてはならず
あちらを立てればこちらが立たず

政治家の皆さんは、何をやっても文句を言われる立場の中で、それぞれ好き勝手言う国民の膨大な意見を取りまとめて、何かひとつの方針を出さなくてはいけない、という、たとえ大金もらえても誰もやりたくないような無理難題に日々向かい合っているわけです。

そして、反対の意見の人も、賛成の意見の人も、「日本の未来をより良くしたい」という共通の目標を持っていて、歩みゆく未来もまた同じはずです。

一見悪だくみにしか見えないようなTPPや天井知らずの規制緩和や公共事業の民営化も、それを一生懸命進めようとしている人たちには、彼らなりの正義や、責任もあるのです。

だから、そういった一つ一つの政策の「枝葉」に反対するよりも、それらをたどった先の「幹」を突き止めなければならないのではないでしょうか。

彼らを駆り立てる資本主義経済とは何なのか?
実際の人々の暮らしを犠牲にしてまで推し進めなければならない経済成長とは何なのか?
それで一体、我々はあと何年、何百年、国内総生産量を増やし続けなければならないのか?

コロナ渦が、現在の社会の抱える問題を浮き彫りにした今こそ、もっと根本的なことに疑問を投げかけてみる良い機会なのかもしれません。

おかげ様で、この記事を書くにあたっていろいろなことを学ばせていただきました。
山田正彦さんには、お会いしたことがないので、人柄とかはわかりませんが、「タネはどうなる」は今でも私の大好きな本です。
そんな本の最後の言葉で今回の記事を締めくくりたいと思います。

「政治家に任せるのではなく、私たちが主役である」


種子法廃止と種苗法の改正、実際のところどうなのかまとめ・完




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種子法廃止と種苗法改正、実際のところどうなのかまとめ①

2020年12月07日 13時23分41秒 | 一喜一憂
ある日、いつものようにスマホでニュースを見ると…あれ?

「種苗法改正、有名俳優が反対ツイート。反対の声拡がる。」

あらら…またですか…。もうバレバレだから、逆効果だからやめればいいのに…。
先日の「#検察庁法改正案に抗議します」が、調べればすぐわかるようなヤラセであったことは明らかになっているが…

で、一体何のための話題づくりなんだろう、と記事を開いてみると、ありゃ!?何だ山田さんじゃん!?

実は、小豆の不作→花粉とミツバチ→除草剤+遺伝子組み換え産業→TPP

の勉強の流れで、元農林水産大臣の山田正彦さんの「タネはどうなる~種子法廃止と種苗法運行で」という本を、つい最近読んでいたのです。
この本には、種子法廃止の懸念について、TPPとも関連して、今、日本の農産物=食料にどんな動きがあるのか?それにどう対処するべきなのか、などなど、大変勉強になりました。

本を読む限りでは、本当に日本の未来、特に農業の未来を考え、そして実際に行動されていて、こんな立派な(元)政治家もちゃんといるんだなーと尊敬していたのですが…。
その山田さんが、「なにやら不穏な動き」の渦中にあって、種苗法改正への反対コメントを寄せているのです。いわく「種苗法改正は自家採種一律禁止(新品種)の悪法!」。

うーん…。

というわけで、よい機会だったので、種苗法が実際のところどうなのか。うちの自家採種や自家苗づくりはどうなってしまうのか調べてみました。


<驚愕の事実!>

で、二次情報はあてにならないので、農水省に直接聞いてみようと思って、ホームページをひらくと、種苗法改正についてまとめたPDFがあって、それを読んでびっくり!!

なんと…自家採種も自家苗も全然まったく大丈夫でした!!

いや、逆にびっくりしました。
これに反対って何?どこが?どうして?

それにしても今回、農水省の作成した概要PDFが、わかりやすくて良い!
要点がまとまっており、私が聞こうとしていたことや、世間に広まっている誤解や懸念に対しても、はっきりと回答している。
どうせまたあいまいに回答して、のらりくらりと悪いことでもたくらんでいるのかと思ったら、ほんとにばっちり!
文面を読む限りでは、種苗法改正、問題ナシ!!でした。


<種苗法の課題と改正のポイント>

そもそも種苗法とは、新品種を研究開発する人が、その事業を安心して維持継続できるように、つくった人の権利を守るための法律。ようは著作権とかの種苗版な感じのようです。
ところが、その法律が今まであんまり厳しくなかったために、問題が発生していました(基本、日本人は特許とか権利の主張とかには疎い←誉め言葉)。

課題:日本で開発された品種が無作為に海外に流出し、産地化されることで、
1.輸出ビジネスに支障が出る
2.逆輸入されて、国内でのビジネスに支障が出る
3.適切な環境で管理されていない低品質な種苗が広まることで、品種のブランド品質・価値の維持に支障が出る

主にこれらのことを改善・防止するために改正するというわけです。

改正のポイント
1.種の育成者が、国内栽培限定、とかの「利用条件」を付けることができるようにする。
2.これまでは許諾不要だった種苗の自家増殖を「許諾性」にする。

これにより
→海外への流出と利用に法的な制限をかける。

ただし

3.これらのことは、今後新たに登録される「新品種に限る」ことであり、しかもその新品種の許諾も一定期間が過ぎれば無効になる。

つまり
→改正以前に登録された品種に関しては自家採種も自家増殖もこれまでどおり。

というわけで、細かいことは書いてあるので読んでください。

農水省HPより
● 種苗制度をめぐる現状と課題~種苗法改正法案の趣旨とその背景~


< それでも「自家採種ができなくなって農家が困る」と思っている方へ >

そもそも「今の農家はほとんど自家採種していない」という事実をお伝えしたいと思います。

現在一般的に販売されている種のほとんどはF1種と言って、撒いた一年目だけものすごく品質が良くなる、一代目だけスーパー種。
そのかわり、そこから自家採種して翌年まくと、とたんに品質が暴れだしたり、自家採種自体ができないようになっていたりする、子孫をうまく残せない特殊な種です。

自家採種に向いた固定種(いわゆるフツーの種)は、生育のスピードや形状にバラつきが出るので、出荷に使う農家はかなりの少数派(作物の種類によっては固定種が主流のものもある)。
つまり、自家採種をしているプロ農家自体が少数派(サツマイモや果樹の接ぎ木など、自家増殖する場合が多い作物もある)なのです。

かつての農家は「種は自分で採る」のが当たり前。現在の農家は「種は毎年買う」のが当たり前。
逆に、自家採種が原則禁止になったとしても、あんまり困らないかもしれない今の農業にさみしさを感じる次第です。

関連過去記事→たすくの空中散歩「野口のタネ~いのちのリレー 」


<世にも奇妙な種苗法改正反対運動>

PDFには「誤解に基づく現場の懸念」という項目で、反対派の皆さんがおっしゃっていることの多くも、すでに公式に回答済みで、解決済みのはずなのです。
それなのに、山田さん、改正成立後の最新ブログでも「日本の農業根幹を揺るがす世界に例のない自家 増殖採種一律禁止というとんでもない法律」なんておっしゃってる…。
何が残念って、そうなってくると、本に書いてあることもどこまで信用してよいのかわからなくなってしまうのです。良いこと沢山書いてあるのに…。

さらに珍妙なことに、そのスジの通らない謎の反対意見を、TPP反対でまっとうなことを言っていた人たち、報道各社、果ては農業新聞から、現代農業の最新号まで、まるで、よその記事をそのままコピー&ペーストしたような、似たり寄ったりの中身のない反対意見を述べている。
一体全体、今、日本はどうなっているんだ…?という感じ。

次第に私も、「え?間違っているのは自分なの?」と、自分自身の価値判断を信用できなくなってきてしまいました。
あれ?こんな話どこかで聞いたことがあるぞ…。そう、同調行動だ!!

ーーーーー
『同調行動』

圧倒的多数意見に対して、たとえ真逆の意見を持っていたとしても、自分の価値判断や記憶に自信が持てなくなってしまい、まわりに意見を同調させてしまう現象のこと。

オススメ図書→『ヘンテコノミクス』 佐藤雅彦 (著),菅俊一 (著),高橋秀明 (イラスト)
ーーーーーー

戦争中の日本とか、警察の尋問による冤罪づくりとか、ホント、怖いんだなーと実感しました。
反対運動ってやつも、よっぽど最初に明確な目的を定めておかないと、いつのまにか「反対することが目的」みたいになりがちですよね。

自分の意見を持つこと、主張することは大切だと思うけど、反対運動とかは苦手です。


<種子を「守る」ということ>

タネの流出に関しては、膨大な時間とコストと労力をかけた方が報われるようなしくみをつくることは当然ですが、「旅先で見つけた良い種を、持ち帰って増やす」という行為自体は人間の発展への本能的なもので、人類が世界中でそれをしてきたおかげで、今我々はジャガイモもトウモロコシもなんでも食べられるわけです。

あくまで私見にすぎませんが、今回の種苗法の改正は、

「優良な種苗が社会全体に広まることは阻害せず、かつ、開発者の権利や利益(研究事業の維持・継続資金でもある)が守られる」
そんな理想的な種苗の法律の国内版(国際的にはまだ不完全版?)、な感じなのではないかと思っております。

確かに、今回の改正で、実際にどれだけの効果が上がるかはわからない。
だけど、少なくとも意味ある一歩を踏み出せたのではないでしょうか?

無事に改正成立して、一安心しました。


<その背後にあるもの>

と、一応種苗法改正に関する記事がなんとかまとまったところで、事態をややこしくしているものについて触れなくてはなりません。
なぜ一見問題なさそうな種苗法改正が、今回こんなにも荒れたのか。
それについて語るには、種苗法改正に先立つこと数年前の出来事、「種子法の廃止」にまで話を遡らなければなりません。

②へ続く…



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