シャーロック・ホームズというと、女には目もくれないイメージがあります。
「SHERLOCK」の中でも「仕事と結婚している」と言い切ってますし。
(これはゲイではないと主張するためのコメントでもありましたが;)
例えば、「ボヘミアの醜聞」で、接触しながらも逃げられてしまったアイリーン(イレーネ)・アドラーのことを
ホームズは「あの女 」と呼び、彼女の写真を報酬として受け取っています。
そんな経緯からロバート・ダウニーJrの映画では、アドラーをまるで峰不二子のような、
ホームズを惑わす存在のように描いていたり、
アドラーがホームズにとっての理想の女性なんだ、と解釈する人もいるようですが、
私はあくまで、事件解決に失敗した自分への戒めのために彼女の写真を持ち、
浅はかな女共の中にも侮れない人物がいるのだ、と忘れない意味で「あの女 」と呼んでいるのだと解釈しています。
現代のホームズも情緒に流される愚かな人間、
とりわけ恋愛に夢中になるなど、愚の骨頂のように思っているんじゃないかなあ…。そうに違いない。
そんなシャーロック・ホームズに好意を寄せる女性が、モリー・フーパー嬢です。
聖バーソロミュー病院の病理学者で、「glee」と猫を愛する彼女が、
シャーロックの前では髪型を変えてみたり、普段は付けない口紅を塗ったり、コーヒーを飲みに誘ったり、
彼女なりのアピールをしています。
彼女の気持ちを知ってか知らずか…いや、知ってるんでしょうけど、
その好意を利用して彼女の管理するモルグの遺体を、観察したり鞭で打ったりするシャーロック。
(もしかしたら221Bの冷蔵庫に入っていた生首もモリーの協力なのだろうか…)
そしてモリーは彼への好意を断ち切るためか、ついに新しい恋に走ります!
221Bの地下室に置かれていたスニーカーの、靴底に残された花粉を分析中のシャーロック。
その様子を伺いにきたモリーを追って、彼女の彼氏がラボを覗きこむわけですが…
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
Jim from IT
Oh, sorry.
ああ、ごめん、お邪魔かな。
Molly
jim, hi! come in!
ジム、いいえ!さあ、入って!
Jim, this is Sherlock Holmes.
ジム、こちらシャーロック・ホームズ。
Jim from IT
Ah!
ああ!
Molly
And um...
それから… こちら…
John
John Watson, hi.
ジョン・ワトソンです。
Jim from IT
Hi. So you're Sherlock Holmes.
どうも。君がホームズか。
Molly's told me all about you.
モリーから聞いてるよ。
Are you on one of your cases?
また事件の調査?
Molly
Jim works in IT upstairs. That's how we met. Office romance.
ジムはうちの病院のIT部門で働いてるの。職場恋愛。
Sherlock
Gay.
ゲイ。
Molly
Sorry, what?
なんですって?
Sherlock
Nothing. Hey.
いやあ、別に。Hey.
Jim from IT
Hi.
Hi
(upending a dish) Sorry! Sorry!
(トレイをひっくり返す) う、ごめん!ごめん!
Well I better be off.
…じゃあ僕はこれで。
I'll see you at the Fox. About six-ish?
後でフォックスで会おう。6時頃は?
Molly
Yeah.
ええ。
Jim from IT
Bye. It was nice to meet you.
じゃあ。会えてよかった。
Sherlock
...
...
John
You too.
…こちらこそ。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
嗚呼、これがまさかモリアーティだとは!
私は愚かにも気付きませんでした…恥ずかしい。
(彼はこの別れ際でクライマックスのプールと同じ「Well I better be off. 」という言い回しを使っています。)
というのも、この場面でのジムの登場は、シャーロックとの面会という目的があった一方で、
モリーにとっても必要な面会だったからです。
つまり、自分を相手にしない男(シャーロック)につき合っている相手(ジム)を紹介して気を引こうという意図が見えるからです。
(…そう思っているのは私だけかもしれませんが。)
普通、職場恋愛なんてそんなに開けっぴろげにしたがらないものだと思いますが、
(それともそれって日本だけ?)
モリーは訊いてもいないのにわざわざ「職場恋愛!」と堂々と伝えています。
それまでの彼女のささやかなモーションを思えば、
「私たちつき合ってるの!」アピールが、シャーロックの気を引くためと考えてもおかしくありません。
しかし悲しいかな、シャーロックは妬くどころか彼氏をゲイ呼ばわり。
モリーとしては計算が違う上に、思わぬ衝撃の事実?ですよね。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
Molly
What do you mean gay? We're together.
つき合ってるのに、ゲイなんて。
Sherlock
And domestic bliss must suit you, Molly.
君は家庭を持つのが合ってるんだ。
You've put on three pounds since I last saw you.
体重も1.5キロ増えたし。
Molly
Two and a half.
1キロよ。
Sherlock
Mm. Three.
1.5。
John
Sherlock...
シャーロック!
Molly
He's not gay! Why'd you have to spoil...? He's not.
彼はゲイじゃない。何で意地悪を? ひどい。
Sherlock
With that level of personal grooming?
見た感じ、ゲイにしか思えん。
John
Because he puts a bit of product in his hair?
整髪料を付けてるからか?
I put product in my hair.
僕だって付けてるぞ。
Sherlock
You wash your hair. There's a difference.
君は髪を洗うから別だ。
No, no. Tinted eyelashes. Clear signs of taurine cream around the frown lines,
彼は眉を描いて、皺取りクリームを塗ってる。
those tired clubber's eyes. Then there's his underwear.
目もクラブ通いで疲れている。それにあの下着。
Molly
His underwear?
下着が何?
Sherlock
Visible above the waistline. Very visible. Very particular brand.
ウエストの上にかなりはみ出させているし、いかにもなブランドだ。
That plus the extremely suggestive fact that he just left his number under this dish here
しかもトレイの下に、自分の電話番号を書いたメモを置いていった。
and I'd say you better break it off now and save yourself the pain.
さっさと別れた方が、泣かずに済む。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
酷すぎるw
体重の「three pounds」「two and a half」ってやりとりは、
「ボヘミアの醜聞」の冒頭でもワトスンに対して使われていましたね。
ワトスンに、君は結婚は向いているようだ、前に会った時から「seven and a half pounds」太ったみたいだし、
と言って、ワトスンは「Seven!」と訂正しています。
モリーもジムとの交際で幸せ太りしてたんでしょうか…。
聖典の「第二の汚み」的に言うなら、「女性担当」のジョンもさすがに皮肉まじりに苦言を呈します。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
John
Charming. Well done.
優しいね。
Sherlock
Just saving her time. Isn't that kinder?
はっきり言った方が、親切だろ?
John
Kinder? No. No, Sherlock. That wasn't kind.
いや、今のは言えないだろう、親切とは。
----------------------------------------------------------------------------------------------------------
よりにもよって、英国一のコンサルタント探偵と英国一の犯罪コンサルタント両方に想いを寄せてしまうとは。
モリーが本当に気の毒w
聖典のホームズは、情報を得るために恐喝王ミルバートンのメイドと婚約(「犯人は二人」)していましたが、
ジムがモリーとどんなデートをしていたのかも、気になります。
そもそもどこで口説きのテクニックを得たんですか?
私も試しに口説かれてみたい(笑)!
モリーにとっては有り難迷惑ですが、シャーロックはここでも鋭い推理力を発揮しています。
ジョンとの出会いの場面と同様、着ているものや身体的特徴でパーソナリティを分析するのは
シャーロックの十八番と言ってもいいですよね。
このシーンは、仮に、モリーの彼氏がジムでなかったとしても、
シャーロックの推理と、女性に対する態度を説明する場面として重要です。
そんな場面に、何気なく最強の敵を登場させてしまっているところに、この脚本のすごさを感じます。
それにしても、ジムは何のためにゲイのフリなんてしていたんだろう?
今までモリーとデートする時にも眉描いてタウリン・クリーム塗ってたんでしょうか。
わざわざクラブ通いして目を充血させてたりして…。
別に、電話番号置いて行かなくても、ネット上でやりとりしてるわけだし。
プールでも語ってましたが、これもゲームの一環だったってことですね。
シャーロックと接触するためだけに、モリーの彼氏になり、ゲイにもなる。
それほどまでに僕は君を意識している、というメッセージ。
ポンドでは換算出来ない、彼なりの気味の悪い茶目っ気を発揮したんでしょう。
あとは、シャーロックと接触した後にモリーと別れやすくするためかな。
こてこてのゲイルックに身を包んでシャーロックの前に現れ、
彼にゲイであることを見抜かせ、モリーにショックを与えるため。
でもモリー、連絡が取れなくなったジムに対してブログで
「あなたがゲイであろうと気にしてないわ」ってメッセージ残してるんですよね。
モリー(T_T)
シャーロックに近づくために身分を偽ってモリーに言いよったジムと、
ジムがゲイだと言い切ったシャーロック…どっちが罪が重いだろう?
仕事の為ならいくらでも嘘をつく、彼らのような人種にとっては、
正直な自分の見解を明かすこと自体が優しさなのかもしれませんね…。
シャーロックの小芝居と変装については、また追々。
次回は、燃えてきたぜ!の巻です。
「SHERLOCK」の中でも「仕事と結婚している」と言い切ってますし。
(これはゲイではないと主張するためのコメントでもありましたが;)
例えば、「ボヘミアの醜聞」で、接触しながらも逃げられてしまったアイリーン(イレーネ)・アドラーのことを
ホームズは「あの
そんな経緯からロバート・ダウニーJrの映画では、アドラーをまるで峰不二子のような、
ホームズを惑わす存在のように描いていたり、
アドラーがホームズにとっての理想の女性なんだ、と解釈する人もいるようですが、
私はあくまで、事件解決に失敗した自分への戒めのために彼女の写真を持ち、
浅はかな女共の中にも侮れない人物がいるのだ、と忘れない意味で「あの
現代のホームズも情緒に流される愚かな人間、
とりわけ恋愛に夢中になるなど、愚の骨頂のように思っているんじゃないかなあ…。そうに違いない。
そんなシャーロック・ホームズに好意を寄せる女性が、モリー・フーパー嬢です。
聖バーソロミュー病院の病理学者で、「glee」と猫を愛する彼女が、
シャーロックの前では髪型を変えてみたり、普段は付けない口紅を塗ったり、コーヒーを飲みに誘ったり、
彼女なりのアピールをしています。
彼女の気持ちを知ってか知らずか…いや、知ってるんでしょうけど、
その好意を利用して彼女の管理するモルグの遺体を、観察したり鞭で打ったりするシャーロック。
(もしかしたら221Bの冷蔵庫に入っていた生首もモリーの協力なのだろうか…)
そしてモリーは彼への好意を断ち切るためか、ついに新しい恋に走ります!
221Bの地下室に置かれていたスニーカーの、靴底に残された花粉を分析中のシャーロック。
その様子を伺いにきたモリーを追って、彼女の彼氏がラボを覗きこむわけですが…
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Jim from IT
Oh, sorry.
ああ、ごめん、お邪魔かな。
Molly
jim, hi! come in!
ジム、いいえ!さあ、入って!
Jim, this is Sherlock Holmes.
ジム、こちらシャーロック・ホームズ。
Jim from IT
Ah!
ああ!
Molly
And um...
それから… こちら…
John
John Watson, hi.
ジョン・ワトソンです。
Jim from IT
Hi. So you're Sherlock Holmes.
どうも。君がホームズか。
Molly's told me all about you.
モリーから聞いてるよ。
Are you on one of your cases?
また事件の調査?
Molly
Jim works in IT upstairs. That's how we met. Office romance.
ジムはうちの病院のIT部門で働いてるの。職場恋愛。
Sherlock
Gay.
ゲイ。
Molly
Sorry, what?
なんですって?
Sherlock
Nothing. Hey.
いやあ、別に。Hey.
Jim from IT
Hi.
Hi
(upending a dish) Sorry! Sorry!
(トレイをひっくり返す) う、ごめん!ごめん!
Well I better be off.
…じゃあ僕はこれで。
I'll see you at the Fox. About six-ish?
後でフォックスで会おう。6時頃は?
Molly
Yeah.
ええ。
Jim from IT
Bye. It was nice to meet you.
じゃあ。会えてよかった。
Sherlock
...
...
John
You too.
…こちらこそ。
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嗚呼、これがまさかモリアーティだとは!
私は愚かにも気付きませんでした…恥ずかしい。
(彼はこの別れ際でクライマックスのプールと同じ「Well I better be off. 」という言い回しを使っています。)
というのも、この場面でのジムの登場は、シャーロックとの面会という目的があった一方で、
モリーにとっても必要な面会だったからです。
つまり、自分を相手にしない男(シャーロック)につき合っている相手(ジム)を紹介して気を引こうという意図が見えるからです。
(…そう思っているのは私だけかもしれませんが。)
普通、職場恋愛なんてそんなに開けっぴろげにしたがらないものだと思いますが、
(それともそれって日本だけ?)
モリーは訊いてもいないのにわざわざ「職場恋愛!」と堂々と伝えています。
それまでの彼女のささやかなモーションを思えば、
「私たちつき合ってるの!」アピールが、シャーロックの気を引くためと考えてもおかしくありません。
しかし悲しいかな、シャーロックは妬くどころか彼氏をゲイ呼ばわり。
モリーとしては計算が違う上に、思わぬ衝撃の事実?ですよね。
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Molly
What do you mean gay? We're together.
つき合ってるのに、ゲイなんて。
Sherlock
And domestic bliss must suit you, Molly.
君は家庭を持つのが合ってるんだ。
You've put on three pounds since I last saw you.
体重も1.5キロ増えたし。
Molly
Two and a half.
1キロよ。
Sherlock
Mm. Three.
1.5。
John
Sherlock...
シャーロック!
Molly
He's not gay! Why'd you have to spoil...? He's not.
彼はゲイじゃない。何で意地悪を? ひどい。
Sherlock
With that level of personal grooming?
見た感じ、ゲイにしか思えん。
John
Because he puts a bit of product in his hair?
整髪料を付けてるからか?
I put product in my hair.
僕だって付けてるぞ。
Sherlock
You wash your hair. There's a difference.
君は髪を洗うから別だ。
No, no. Tinted eyelashes. Clear signs of taurine cream around the frown lines,
彼は眉を描いて、皺取りクリームを塗ってる。
those tired clubber's eyes. Then there's his underwear.
目もクラブ通いで疲れている。それにあの下着。
Molly
His underwear?
下着が何?
Sherlock
Visible above the waistline. Very visible. Very particular brand.
ウエストの上にかなりはみ出させているし、いかにもなブランドだ。
That plus the extremely suggestive fact that he just left his number under this dish here
しかもトレイの下に、自分の電話番号を書いたメモを置いていった。
and I'd say you better break it off now and save yourself the pain.
さっさと別れた方が、泣かずに済む。
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酷すぎるw
体重の「three pounds」「two and a half」ってやりとりは、
「ボヘミアの醜聞」の冒頭でもワトスンに対して使われていましたね。
ワトスンに、君は結婚は向いているようだ、前に会った時から「seven and a half pounds」太ったみたいだし、
と言って、ワトスンは「Seven!」と訂正しています。
モリーもジムとの交際で幸せ太りしてたんでしょうか…。
聖典の「第二の汚み」的に言うなら、「女性担当」のジョンもさすがに皮肉まじりに苦言を呈します。
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John
Charming. Well done.
優しいね。
Sherlock
Just saving her time. Isn't that kinder?
はっきり言った方が、親切だろ?
John
Kinder? No. No, Sherlock. That wasn't kind.
いや、今のは言えないだろう、親切とは。
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よりにもよって、英国一のコンサルタント探偵と英国一の犯罪コンサルタント両方に想いを寄せてしまうとは。
モリーが本当に気の毒w
聖典のホームズは、情報を得るために恐喝王ミルバートンのメイドと婚約(「犯人は二人」)していましたが、
ジムがモリーとどんなデートをしていたのかも、気になります。
そもそもどこで口説きのテクニックを得たんですか?
私も試しに口説かれてみたい(笑)!
モリーにとっては有り難迷惑ですが、シャーロックはここでも鋭い推理力を発揮しています。
ジョンとの出会いの場面と同様、着ているものや身体的特徴でパーソナリティを分析するのは
シャーロックの十八番と言ってもいいですよね。
このシーンは、仮に、モリーの彼氏がジムでなかったとしても、
シャーロックの推理と、女性に対する態度を説明する場面として重要です。
そんな場面に、何気なく最強の敵を登場させてしまっているところに、この脚本のすごさを感じます。
それにしても、ジムは何のためにゲイのフリなんてしていたんだろう?
今までモリーとデートする時にも眉描いてタウリン・クリーム塗ってたんでしょうか。
わざわざクラブ通いして目を充血させてたりして…。
別に、電話番号置いて行かなくても、ネット上でやりとりしてるわけだし。
プールでも語ってましたが、これもゲームの一環だったってことですね。
シャーロックと接触するためだけに、モリーの彼氏になり、ゲイにもなる。
それほどまでに僕は君を意識している、というメッセージ。
ポンドでは換算出来ない、彼なりの気味の悪い茶目っ気を発揮したんでしょう。
あとは、シャーロックと接触した後にモリーと別れやすくするためかな。
こてこてのゲイルックに身を包んでシャーロックの前に現れ、
彼にゲイであることを見抜かせ、モリーにショックを与えるため。
でもモリー、連絡が取れなくなったジムに対してブログで
「あなたがゲイであろうと気にしてないわ」ってメッセージ残してるんですよね。
モリー(T_T)
シャーロックに近づくために身分を偽ってモリーに言いよったジムと、
ジムがゲイだと言い切ったシャーロック…どっちが罪が重いだろう?
仕事の為ならいくらでも嘘をつく、彼らのような人種にとっては、
正直な自分の見解を明かすこと自体が優しさなのかもしれませんね…。
シャーロックの小芝居と変装については、また追々。
次回は、燃えてきたぜ!の巻です。