我らが敬愛するマーク・ゲイティスの現時点での最新出演作、
"Mapp and Lucia"が2014年12月29・30・31日にBBC Oneにて放送されました。
おそらく日本ではソフト化も放送もされない気がするこの作品。
コミュニティーの中心人物の座を巡る、女と女の血なまぐさい(笑)バトルが繰り広げられます!
この記事では、一話ごとのあらすじと、簡単な見所を紹介します。
(どこかで放送されたら一番いいのですが、)UK版DVDの購入等を検討されている方は参考になさってください!
まずは"舞台裏"について簡単に紹介。
■BBCによる再ドラマ化■
E. F. ベンソン原作のこの物語は、1980年代に一度Channel 4でドラマ化され、
「ミス・マープル」等で知られるジェラルディン・マクイーワンが主演しました。
BBC版では、マクイーワンが演じたファッショナブルで見栄っ張りなエミリン・"ルチア"・ルーカスを
「フォー・ウェディング」のアナ・チャンセラー、
ルチアと張り合い、激しく火花を散らすエリザベス・マップを
「ハリー・ポッター」シリーズや「ブラックアダー」のミランダ・リチャードソンが演じています。
脚色を担当する「ホワイトチャペル」「リーグ・オブ・ジェントルマン」のスティーヴ・ペンバートンが
ルチアの親友ジョージィー役で出演。
スティーヴとは久々のドラマ共演となるマーク・ゲイティスが
英領インド軍を退役したベンジィ少佐に扮しています。
(左からアナ・チャンセラー、スティーヴ・ペンバートン、ミランダ・リチャードソン)
■舞台■
"Mapp and Lucia"は原作が出版された1920年を舞台に主にアッパー・ミドル・クラスの人々の交流を描いています。
劇中に登場する町、ティリング(Tilling)は、作家のBensonが実際に住んだイースト・サセックスにあるライ(Rye)という町がモデル。
またベンソンが暮らした家、通称「ラム・ハウス(Lamb House)」も「マラーズ(Mallards)」という名に変わっています。
今回のドラマ化では、このナショナル・トラストに管理されている文化財「ラム・ハウス(Lamb House)」で撮影が行われました。
Meet the stars of the BBC's Mapp and Lucia on location
撮影中の写真あれこれ。
source:http://www.ryenews.org.uk/culture/rye-stars-television-jewel, http://www.dailymail.co.uk/
■"ジェンツ"、久々の共演作■
脚本家であるスティーヴ・ペンバートンはこのシリーズの大ファンで、
脚色を担当するだけではなく、キャストとして参加出来ることになり、
毎日自分をつねって現実であることを確認していたそうです。
Steve Pemberton on adapting the scripts - Mapp and Lucia - BBC One Christmas 2014
スティーヴは、学生時代からの友人で「リーグ・オブ・ジェントルマン」の"同僚"でもあるマークと
Bretton Hall Collegeで初めて出会った時を回想。
彼の本棚にある"Mapp and Lucia"シリーズを見つけたマークが
僕もこのシリーズ好きだよ、と言ったことが2人の間を繋ぐ「瞬間接着剤」になったと語っています。
つまり、"Mapp and Lucia"がなければ「リーグ・オブ・ジェントルマン」もなかったかもしれません!
2人は撮影現場で毎日「僕らが30年後に"Mapp and Lucia"を作ってるなんて、信じられる?」と
お互いに言い合っていたそうです。
あと1日なのが寂しい。Au reservoir! #MappAndLucia pic.twitter.com/AHFiEdpGMu
— ミウモ (@notfspurejam) December 30, 2014
"Mapp and Lucia"の中でのスティーヴ&マークと、Bretton Hall College時代のスティーヴ&マーク。
それでは、それぞれのエピソードを紹介しましょう。
Mapp & Lucia: Trailer - BBC One Christmas 2014
■第一話■
1年前に夫を亡くしたルチアは、住み慣れた町ライゾーム(Riseholme)を離れ、
親友のジョージィーと共に、新天地としてサセックスにある海辺の町ティリングに向かっていました。
そこには、以前ライゾームを訪れに来た女性、エリザベス・マップが
クイーン・アン様式の美しい家「マラーズ」に住んでおり、
夏の間、ルチアへ自宅を貸してくれることになったのです。
静養地での新生活に胸踊らせるルチアでしたが、
屋敷の主人であるエリザベスは、「ティリングの女王」の如く振る舞うことを好み、
洗練された有閑マダムのルチアたちを見せびらかして、自慢の種として利用しようと考えていました。
エリザベスが、Riseholmeでのルチアたちのあいさつ"Au reservoir"を盗んで、我が物顔で町の人々に広めていたことが判明し、
彼女の行動を警戒し始めるルチアとジョージィー。
「マラーズ」を借りている間も、気ままに家の中を行き来し、
庭の手入れにうるさく口出しをしてくるエリザベスに、
ルチアは彼女の行動を封じ込めるための作戦をジョージィーに打ち明けます。
町の人々がルチアの夕食会に毎晩招待される中、ひとりだけ除け者にされたエリザベス。
苛つきながら来客の様子を観察していたある日、
ルチア主催の慈善イベントが開かれることを知ります。
「マラーズ」に乗り込んで、自慢の庭を祝宴に使うことに反対するエリザベスに、
まったく怯まないルチアは、自分が館の主人である間はしたいようにするつもりだと言い放ちます。
言いくるめられて引き下がったエリザベスは、
ルチアのイベントに対抗して、病院への寄付金集めのガラクタ市を開くのですが…。
《見所》
"Au reservoir"というのは、実はフランス語では全く通じず、
"au revoir"の聞き間違えで、単に「貯水池」という意味。
つまり、上品なフランス語を気取って使っている言葉が、
実は自分の無知さを晒している、という皮肉な挨拶なのです。
エリザベスが盗んだこの挨拶が、すっかり町に浸透しているので笑ってしまいます。
大きな買い物かごを抱えてハイストリートを行き交う、町の人々もうわさ話が大好き。
エリザベスの親友ダイヴァ(「コンフェッティ!」のフェリシティ・モンタギュー)、
ボーイッシュな芸術家アイリーン(「ゲーム・オブ・スローンズ」のジェマ・ウィーラン)や、
牧師館の夫妻ケネス(「ヴェラ 信念の女警部」のポール・リッター)とエヴィー(ポピー・ミラー)も、
ルチアとエリザベスが庭のストリベリーを巡って諍いをすれば、すぐに仲間内で情報を共有します。
小さなコミュニティ独特の、流されやすい彼らの性質も滑稽に描かれています。
ルチアが滞在中は、エリザベスはダイヴァの家へ、ダイヴァはアイリーンの家へ、
アイリーンは漁師の家へ、漁師家族は海辺の小屋に移り住みます。
ビリヤードの玉のようにそれぞれの住まいを変えたため、
エリザベスが無断でガラクタ市を開くと、家の持ち主であるダイヴァも同じように激怒。
エリザベスは腹いせに、ルチアに打ち負かされた時と同じ言葉をダイヴァに言い放つのでした。
ルチアの親友ジョージィーは、当初は渋りながらも、
ルチアとの友好関係を守って共にティリングに滞在。
お洒落なジョージィーの出で立ちは、軍人的な隣人を求めていたベンジィ少佐をガッカリさせるのでした。
■第二話■
ルチアの慈善イベント成功の後、
エリザベスは隣人たちをトランプ・ゲームのための夕食会に招きます。
しかし、招待客は早々に席を立ち、ルチアの夕食会の方に向かってしまうのでした。
「夕食会の名ホスト」の座を奪われたエリザベスはすっかり意気消沈。
そんな中、アルジャーノン&スーザン夫妻の提案で、ルチアとジョージィーがティリングの美術展覧会に展示する絵を描くことに。
絵を完成させた2人は、審査委員のひとりであるエリザベスに作品を送りますが、
彼女は飾るスペースがないという理由をつけて、無断で絵を2人の元に送り返してしまいます。
不審に思ったルチアは、自分の絵を夫妻の目に止まる場所に置き、審査委員会に送った絵が返されて来たと告白。
アルジャーノンたちは絵を見た事がなかったため、エリザベスの仕業であることが皆にバレてしまいます。
結局、ルチアたちの作品は展覧会に出品されることになり、
エリザベスの絵をルチアが、ルチアとジョージィーの絵をエリザベスが購入することになるのでした。
冷たい視線に晒された上、またしても思惑が外れてしまったエリザベス。
彼女が家で寂しく食事の支度に取りかかっていると、そこに謎のインド人がやってきて…
The Guru teaches yoga - Mapp and Lucia: Episode 2 Preview - BBC One Christmas 2014
《見所》
回を重ねるごとに、エリザベスの意地悪はエスカレート。
一方のルチアも、上手く立ち回ってはいますが、実は絵が得意ではないために反則技を使っているのでした。
見栄っ張りの2人は、振る舞いは違えど、似ているところがありそう。
この回はジョージィーの妹、ハーマイオニーとウルスラも登場。
兄とは違ってデリケートさに欠けるゴルフ好きの妹たち。
彼女らをもてなすため、ジョージィーはベンジィ少佐にゴルフ指南を受けます。
お互いに苦手そうにしていた2人が、これを期に距離を縮めているのが嬉しい変化です。
そして、突如町に出現した"グル"を名乗る怪しいインド人ヨガ講師を利用して、
またしてもエリザベスは町の主役に返り咲こうとしますが、
ルチアと争っている場合ではなくなる、予想外の展開に。
■第三話■
ルチアはピアノ演奏会を企画し、町の人々を「マラーズ」に招待します。
「月光」の第一楽章をウットリと演奏するルチア。
ところが、エリザベスが第一楽章よりも難易度の高い、第二楽章も続けて演奏するようリクエストすると、
雰囲気が合わないからと受け流して、練習済みの「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」を演奏するのでした。
ルチアが見せかけだけの演奏家であることを確信するエリザベスは、
なんとか彼女の化けの皮を剥がそうと躍起になっていると、
アルジャーノンの妹で、カプリの伯爵夫人であるアメリアがティリングに滞在することを知ります。
しかも、アメリアがルチアとイタリア語で話したがっていると知って大喜び。
見せかけのイタリア語を話すルチアが、アメリアと会話することで恥をさらす事になると考えたのです。
Mapp tests Lucia's Italian - Mapp and Lucia: Episode 3 Preview - BBC One Christmas 2014
その頃ルチアは、エリザベスの予想通り、アメリアの来訪に危機感を覚えていました。
イタリア語が話せないと分かれば、町中の噂になることは間違いありません。
苦肉の策で、ルチアはインフルエンザに罹ったと仮病を使って家に籠ることに。
エリザベスはルチアの仮病の証拠をなんとか掴もうとします。
一方、町ではプリンス・オブ・ウェールズがティリングに立ち寄るという噂が流れていました。
皆、平静を装って野次馬にはならないと誓い合うのですが…
《見所》
今回登場するアメリアは「Silk 王室弁護士マーサ・コステロ」等のフランシス・バーバー。
恐怖を覚える程の豪快な高笑いと、
実はベンジィ少佐がエリザベスに好意を寄せている、なんていう、
町の人でも突っ込まないようなネタも把握しているアメリアのティリング事情通っぷりにビックリ。
エリザベスのルチアに対する執着具合が痛々しく思えてくる最終話。
でもなんだかんだ言って、本気で怒ってくれるダイヴァや不器用ながらも気にしてくれる少佐がいて幸せですね。
(少佐はエリザベスの一体どこが好きなんでしょうか…)
ダイヴァのファッションは、郵便ポストそっくりだったり、ソファーと全く同じ柄だったり、
エリザベスと服の色が被って姉妹のようになるところはアメリアでなくても笑ってしまいます。
(エリザベスがダイヴァの真似をしているようですが。)
ルチアに惹かれていて、ライゾームへ帰る彼女との別れを悲しむアイリーンも応援したくなります。
今回に限らず、一番機転の利くのに損な役回りなのはジョージィーでは…。
お宝を盗まれたり、お気に入りのお手伝いさんに失恋したり、妹たちに振り回されたり…。
絵もピアノも刺繍も上手いジョージィーは皆の中で一番センスもいいはずなのに、
ルチアを引き立てるべく献身的な所が健気です。
The One Showの"Mapp and Lucia"部分見た。見ただけで話は右から左に聞き流してたけど、ペンビィーの姿は捉えた。お髭は自前だったのかしら。 pic.twitter.com/ufwW8WsTCv
— ミウモ (@notfspurejam) December 18, 2014
■DVD情報■(2015年1月5日にUKで発売。)
BBC Shop, amazon.co.uk
■原作本■(BBC版ドラマに合わせて出版された、3作分のオムニバス。スティーヴの前書き付。)
Mapp and Lucia Omnibus: Queen Lucia, Miss Mapp and Mapp and Lucia (Mapp & Lucia) by E F Benson
amazon.co.uk、amazon.co.jp(kindle版もあります。)
■参考資料■
・BBC MEDIACENTRE Media packs…作品概要、キャラ紹介、出演者インタビュー掲載。 (2014年11月リリース)
・BBC MEDIACENTRE シノプシス 第一話、第二話、第三話。(2014年12月リリース)
・Mapp and Lucia - behind the scenes(動画)
・Rye News Mapp and Lucia関連
・Miranda Richardson on new adaptation of Mapp And Lucia: 'These characters are timeless' - Express, 29 November, 2014
・Mapp and Lucia, BBC1, review: Proof that middle-aged women can be interesting - The Independent, 29 December 2014