だから、ここに来た!

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中世の港町ライ/ラム・ハウス(1)内装編

2015-05-04 | 2015年春、英国の旅
■4月21日、続き■

イーストボーンからアシュフォード・インターナショナル行きの列車に乗って、古きよき港町ライへと向かいます。
港町と言っても、現在は海岸が後退しているので、海は遠くなってしまいましたが、
かつては貿易で栄えた街です。(密輸も盛んだったとか。)
英国内でも観光地として知られているようで、
電車もロンドンからイーストボーンへ向かった時よりも混雑していました。



途中、海岸線やヘイスティングスの驚く程びっしりと丘に立ち並んだ住宅を見ながら、
1時間弱で目的地のライに到着。



そもそも、何故私がライに来ようと思ったかというと、
昨年(2014年)BBCで放送された"Mapp and Lucia"というドラマの舞台になっていたからです。
ドラマ自体、かなり皮肉が効いていて面白かったのですが、
舞台となっている街もとても美しく、是非一度行ってみたいと思ったのです。
最近では日本の旅行会社でも「女子に一押しの観光スポット」として紹介されていたりします。



こじんまりとした可愛い駅舎。
横にはカード等のお土産も扱っているカフェが併設されています。







駅前の通りは至って普通の小さな街らしいパブや商店が並んでいますが、
少し奥に入っていくと、赤い煉瓦造の建物が並んだ街並になってきます。



色々な観光サイトにも載っていましたが、
ライの歩道は玉石が並んだ石畳で、足裏を刺激してきます。
歩くところを選んで側溝の上を進んで行けば、凸凹道が苦手な人も大丈夫。



少し歩くと、14世紀のハーフティンバーと呼ばれるテューダー様式の建物も見る事が出来ます。



そして、この街でもっとも美しいと言われるマーメイド・ストリート。



この道は後でゆっくり見るとして、時間が限られていることもあるし、まず一番見たいところから廻る事にします。
その場所とはナショナル・トラスト(歴史的建築物の保護を目的とした団体)が管理している「ラム・ハウス」です。



ラム・ハウスは「鳩の翼」「ねじの回転」等の作家ヘンリー・ジェイムズが住んでいた家として知られています。
そして、前述した"Mapp and Lucia"の原作者で怪奇作家でもあるEFベンソンが暮らした家でもあり、
"Mapp and Lucia"に登場する家「マラード」のモデルでもあります。



ドラマで見たままの風景!
この内部は、3月から10月の火曜・金曜・土曜しか見る事が出来ません。
金曜・土曜は予定が入っていたので、どうしてもこの21日に見る必要がありました。



中に入り、入場料(ナショナル・トラストの会員でなければ£6)を払うと、
ナショナル・トラストのおばさま3人がお出迎え。
どこから来たのか問われて、日本からだと伝えると、日本語のしおりを出してきてくれました。
写真撮影OKとのことなので、ここぞとばかり2つのカメラを駆使して写真を撮りまくる私。



入ってすぐの玄関に、さっそく"Mapp and Lucia"の小道具が置いてありました!



ルチアと親友のジョージィ、エリザベス・マップが被っていた麦わら帽子ですね。花飾りが綺麗!

←実際の一場面

玄関奥の廊下には、ラム・ハウスを訪れた著名人の肖像が飾られています。



その中の一部、左はHGウェルズ、右はジョージ・バーナード・ショー。



階段はあるけど、上には上がれないみたいですね。ドラマの中では壁紙や窓も変えていたみたい。
建物を損傷から守るために壁紙や緩衝剤、カーペットを使って、実際とはあえて異なる内装にしているようです。



玄関から向かって右の部屋は客間。ここにもルチアの衣装が展示されていました。
こんなに撮影関連のものが置いてあるとは想像してなかったなー!




見栄っ張りなルチアらしい、パリジャン風の30年代当時ではモダンな洋服。
(もっとも、ドラマに出てくる全員が見栄っ張りなのですが。)



テーブルの上部には、ヘンリー・ジェイムズの肖像画。
同じ部屋には彼の70歳の誕生日記念で作られた胸像もあります。



ラム・ハウスは元々ライの町長をしていたジェームズ・ラムが暮らしていた家です。
その後、19世紀末にこの家を気に入ったヘンリー・ジェイムズがロンドンから転居。
のちに家を買い取り、ナショナル・トラストに寄付されるまではジェイムズ家が管理していました。
先ほどの廊下に飾られていた彼の友人の作家たちも、この部屋から外を眺めたのでしょうね。



ライ沖で船が座礁して立ち往生となったジョージ一世もこの家に泊まったとか。
ひときわ目立つ大きな肖像画が飾られています。
本棚に並ぶのはヘンリー・ジェイムズ所蔵の書籍。
(EFベンソンに関する物が蔵書くらいしかないのが残念。でも彼が書いた本は購入出来ます。)

玄関を挟んで反対側は電話部屋。



電話部屋というくらいなので、電話がありますが、主に来客用の書斎として使っていたようです。
この部屋の壁には、マサチューセッツにあるヘンリー・ジェイムズの墓の拓本や、
前述のジョージ一世が滞在中にちょうど生まれたジョージ・ジェイムズが、
王から受け取った洗礼盃の写真が飾られています。



あとは、戦時中に破壊されてしまったガーデンルームの模型が。



左側は入って来た入口の横にあったはずの出窓ですね。
この部屋にも、"Mapp and Lucia"の小道具が置かれています。




左上から時計周りに、マップの手袋、ジョージィの煙草入れ(イニシャル入り!)、TATTLE MAGAZINEの写し、
ルチアがバートレット牧師に宛てた手紙、マップがルチアに宛てた(展覧会用の絵を返却した時の)手紙。

お次は、客間の奥… 階段の横に、円形の窓が印象的な食堂があります。



ドラマの中でもこの部屋がよく出てきました。



ここにはエリザベス・マップの衣装が。



底意地悪いエリザベスが着ていると分かりませんでしたが(笑)、
ピンク色が柔らかい印象の、意外と可愛らしい服ですね。



テーブルの上には、ドラマの撮影中の様子をまとめた冊子が置いてありました。



先ほどの電話部屋で模型が作られていたガーデンルームは1940年代の爆撃によって破壊されてしまいましたが、
ドラマでは撮影のためにわざわざ庭に増築され、ルチアや街の人々が憩う場として使われていました。



←これは本物のガーデンルームのタイルの破片。



爆撃によって、ラム・ハウスだけでなく、周辺の建物もかなり損傷を受けたようですね。
改築の様子を伝える記事もスクラップブックに収められていました。



その他、19世紀初頭の陶器が食堂に彩りを添えています。



ヘンリー・ジェイムズ直筆の手紙や手直し入りの原稿の写し等、
様々な資料に目を通しつつも、食堂の外に見える景色が気になって仕方ありません。
扉から差し込む陽の光。庭から聞こえる談笑の声。
続いては、緑が眩しいとっておきの庭へ足を踏み入れます。

つづく…
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