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キャロル・キングの半生を描くミュージカル"Beautiful"

2015-05-20 | 2015年春、英国の旅
■4月23日 続き■

実は、渡英する数ヶ月前から、旅行の前だというのに気分が落ち込む事が多く、
どうしたらいいのか分からない状態の日が何度もありました。
仕事もやりがいを感じないし、孤独感が募ってどうしようもなく、
何もしたくない時に、ふと聴きたくなったのがキャロル・キングの"You've Got a Friend"でした。

Carole King, You've got a friend


自分で自分を慰めるような気分でこの曲を聴くと、
少しだけ楽になった気がしたものです。

渡英したら、何かミュージカルを見たいと思っていましたが、
迷うことなく"Beautiful - The Carole King Musical"のチケットを予約しました。
キャロル・キングの半生を描いた、彼女の曲が満載の所謂ジュークボックス・ミュージカルです。
ちょうど直前に、オリヴィエ賞でもウエストエンド版に出演するKatie BraybenとLorna Wantが、
主演女優&助演女優賞を受賞したところでもありました。
Aldwych Theatreで上演されています。

Beautiful - Olivier Awards 2015


物語の冒頭はカーネギー・ホールで"So Far Away"を弾き語るキャロルの語りかけから始まります。
「ここにいるなんて信じられない。私は単なるブルックリンで作曲家を目指す女の子だったのに」
そこから、十代の頃の彼女の家へ時間は遡ります。

母親に反対されながらもブロードウェイの出版社へ自分の曲を売り込みに行くキャロル。
数多くの音楽関連会社が入居するブリル・ビルディングの一室で自作曲を披露すると
会社の設立者であるドン・カーシュナーに気に入られます。
同じ頃、大学でジェリー・ゴフィンと出会い、作曲家と作詞家としてコンビを組むことに。
音楽だけでなく、恋愛の対象としても強い繋がりを持っていた二人は、キャロルの妊娠を機に結婚。
2人で数々の名曲を生み出していくことになります。



恥ずかしながら、シンガーソングライターとしてのキャロル・キングは知っていましたが、
「ロコモーション」が2人の作詞作曲であることを初めて知りました。
それにジェリー・ゴフィンは昨年78歳で亡くなっていたんですね。割と最近だ…。

前半は同時代のヒット曲も登場しますが、
ニール・セダカのトゥーマッチなパフォーマンスが出てくると劇場に笑い声が起こりました。
それと、ガールズグループの振り付けがどれも綺麗でしたねー。
The Shirellesの "Will You Still Love Me Tomorrow"なんて手の振りが特に見事で見とれてしまいました。

Song Clip: Will You Love Me Tomorrow | BEAUTIFUL - THE CAROLE KING MUSICAL

これはブロードウェイ版。

キャロルたちは同じくコンビを組むシンシア・ワイルとバリー・マンと切磋琢磨しながら
それぞれドリフターズに"Up on the Roof"、"On Broadway"というヒット曲を提供。
順風満帆に見えた彼らのキャリアでしたが、
ジェリーが歌手のJanelle Woodsとつき合うために距離を置きたいと告白したことで結婚生活の方は破綻し始めます。
(このJanelleというのは架空の歌手らしいです。)



幕間にバーに行くと、ほとんど年上のおじさまおばさまばかり。
私世代の観客は少なかったです。
(Aldwych Theatreはヴィヴィアン・リーが舞台で「欲望という名の電車」を演じた劇場だったんですね。)

キャロル・キングは、この自分が主人公のミュージカルをなかなか見に行けなかったと
トニー賞で告白していましたが、ミュージカル雰囲気自体は明るいけど
決して明るい出来事ばかりではないから無理もないですね…。
単に恥ずかしかったのかもしれませんが。

演者も本人と全く同じ様に歌うことは出来ないわけですから、
モノマネではなく、芝居の中で違和感を感じさせずに歌うのは難しいでしょうね。
(映像でしか見てませんが)ブロードウェイ版のJessie Muellerは素晴らしかったですし、
ウエストエンド版のKatie Braybenも比べると少しクセはあるけど、聴き応えがあります。

Beautiful - The Carole King Musical opening night trailer

ウエストエンドの初日にもキャロル本人やシンシア&バリー本人が来てたんですね。

第2幕、
キャロルとジェリーはそれでも共作を続けていましたが、
不毛な結婚生活に耐えかねたキャロルが、ジェリーにJanelleとの関係を終わらせるよう説得を決意。
ところが、作詞活動に行き詰まったジェリーは精神衰弱のため倒れてしまいます。
入院したジェリーはキャロルに家へ戻ることと、彼女の希望で郊外に住むことを約束します。

ジェリーの退院後、郊外の新居にシンシアとバリーが訪問。
2人は新曲をキャロルたちに聴かせます。
しかし、彼らの曲を聞き、同じように曲を作れないことを嘆いたジェリーは家を出て、街へ向かってしまいます。
キャロルが彼の後を追い、シンシアたちから聞いた、彼と一緒にいたのを見たという女性歌手の部屋を訪れると、
そこにはシャツ一枚で寛いだ姿の元気そうなジェリーが出てくるのでした…。

ジェリーとの別れを決意したキャロルは、LAに移り住むことを決意。
ドン・カーシュナーやシンシアとバリーに、別れの挨拶として"You've Got a Friend"を歌います。



その後の彼女は私も知る通り「つづれおり」を発表し、
1971年にはカーネギー・ホールでのコンサートを成功されるわけですが、
「つづれおり」の曲が歌われ始めると、客席のおじさまたちがあちらこちらで足踏みを始めて、
女性よりも男性の方がノリノリなのが見ていて意外でした。

カーテンコールで"I Feel the Earth Move"が流れ始めると、
観客は一斉に席を立ち、手拍子を入れながら一緒に熱唱。
こういう時に音楽の力強さを感じます。



トニー賞とオリヴィエ賞以外に何も予習せずに見に行きましたが、
英語も思ったよりは聞き取り出来たし、分かりやすいストーリーだったので助かりました。

今まであまりにキャロル・キングのことを何も知らなかったことに気付きました。
才能溢れる人でも、私生活では苦しんだり、胸を痛めたりするものですよね。
元気になるために見に行ったつもりが、妙にしんみりしてしまう部分もあり、
音楽の良さにただただ喜びを感じる所もあり。

華やかなコーラス・グループへ提供した曲に比べると、シンガーとしての彼女の曲は、とても内省的です。
だからこそ、辛くなった時に寄り添うように心に響くのかもしれません。
時には静かに、時には足踏みや手拍子に合わせて。

この後、帰国の飛行機の中でも、「つづれおり」を聴きながら帰りました。
今でも悲しい時には、"You've Got a Friend"が欠かせません。たぶん、これから先も。


次回、グリニッジを歩く、の巻。
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コヴェント・ガーデン周辺でショッピング♪

2015-05-20 | 2015年春、英国の旅
まず、この日の本題に入る前に前日の話から。
4月22日にいつも利用しているホステルに着いたのは9時すぎ。
チェックイン自体は慣れているので簡単に終わり、いつもの最もチープなベッドのある部屋に向かいました。
(チープなベッドといっても、不潔でもないし、カーテンもついているのでプライバシーは守れるのです。)

今回は珍しく二段ベッドの上段に割り当てられたので、
上り下りがちょっと怖いな…と思いつつ、貴重品を一度ベッドの上に乗せて、
歩き疲れてヘトヘトな足で梯子を登ったそのとき、
「ガツーン!」という鈍い音が響き渡ったのでした。
「ん? なんだ?」
床を見下ろすと新品の望遠デジカメが床に落っこちているではありませんか。

「えっ?!」
慌てて降りて、電源を入れてみると「ズームエラー」の表示が出て起動しません。
「そんな〜!」←心の声じゃなくて、実際出てた声。
そのカメラは、この後のシャロコン用に新調した、買って1ヶ月も立っていないものでした。
(望遠じゃなきゃ遠くからトークの登壇者を綺麗に撮れないからね。)

翌日会う予定だった友達に「たった今カメラ落として壊した」と伝えると、
心配してくれて、修復するための方法を何パターンも教えてくれました。
しかし、どれを試してもうんともすんとも言いません。

今までクレジットカードが使えないようなピンチはありましたが、
それは交渉次第でなんとかなるし、解決する方法はいくらでもありました。
今回は自分では解決しようがないし、仮に現地で修理を出しても数日で直るはずもなく、
諦めるより仕方ありませんでした。

あまりにショックが大きくてTwitter上でも当たり散らすように嘆き悲しんで色んな方に慰めて頂きました…。
(その際にはご迷惑おかけしました…)
情けないですが、体力的に疲れていたのもあるし、実は体調もよいとは言えない時期だったので、
精神的にも堪えやすかったのかもしれません。


■4月23日■

次の日。ショックでふて寝して、風呂にも入らずに寝落ちてしまったので、
朝シャワーを浴び、早めに朝食を取りました。



朝食時の天気は曇り空。昨晩のこともあって、心も晴れません。
それでもこの日は友達のSuviと2年半ぶりに再会する日だったので、
悲しい気分でいるのは勿体ない、もう失敗は忘れよう!と心がけました。

Suviはフィンランドに住む日本語が堪能なホームズ・ファンで、スター・ウォーズやドクター・フーのファンでもあります。
彼女が日本に滞在している間に「シャーロック」を通じて知り合い、
フィンランドへ帰国する直前に初めて会ってから、その後もメッセージや手紙のやり取りをしたり、
日本の映画雑誌を送ってあげたり、フィンランドのお菓子を送って貰ったりしていました。
(メッセージのやりとりは英語だけど、会話は日本語。)

彼女は残念ながらシャロコンに行く予定がありませんでしたが、
ロンドン博物館で開催されていたシャーロック・ホームズ展を見にしばらく滞在するというので、
彼女の滞在期間に合わせて、私もシャロコンより少し前に渡英したのでした。



出発する頃には、いつのまにかすっきりとした青空に。
さすがロンドンの気まぐれな空模様。

Suviの滞在するおばさんの家と私の宿泊先は一駅隣で近かったので、
隣駅のホームで待ち合せすることになっていました。
電車に乗って行くと、すぐに姿が見えたので、そのまま一緒に中心部まで乗っていくことに。
2年半ぶりの再会!だけど、定期的にやり取りしているので、全然久しぶりな感じがしない(笑)。

二人とも、もう何度もロンドンに来ているので、
「どこか行きたいところある?」
「いや、これと言って…」な状態(笑)。
私は今回の旅でロンドンをまともに歩くのは初めての日だったので、
まず「オタクの聖地」(笑)、"Forbidden Planet"に寄りたいと提案。
あそこなら何度行っても楽しいですからね。

まずホルボーンで降りて、散歩しながらシャフツベリー・アベニューへ。
前日に歩き過ぎて、足が恐ろしいほどの筋肉痛でしたが、
お互いの近況を話しながら歩いていると楽しくて気になりませんでした。

"Forbidden Planet"でスター・ウォーズのコスチュームに関する本を読んだり、日本の漫画本を素見したり。
私は「ドクター・フー」シリーズ8のブルーレイが欲しかったのですが、値段を見てビックリ。
£50もするので、この日は断念。Amazonで買った方が安そう…。
代わりに細々とした「ドクター・フー」グッズを購入。



リストバンドと「ライト・アップ・ターディス・キット」。
写真では分かりにくいですが、ターディスは下にスイッチがあって頭が光るようになっています。
リストバンドを何処につけていくのかは自分でも謎…。

"Wolf Hall"のブルーレイも欲しくて、この近くの"Fopp"にも寄ってみたのですが、
DVDしかなかったので、こちらも断念…。

テレビオタクっぽい買い物は続けて断念せざるをえませんでしたが、
「ロンドンの中でどこが特に好き?」
「この辺!セブン・ダイヤルズ!それにコヴェント・ガーデンが好き!」
ということで、その後はコヴェント・ガーデン周辺をうろつきました。



食事処を探しつつ、途中で見かけた"magMA"で可愛い雑貨やステーショナリーを物色。
このお店は元々本屋さんのようなのですが、ナノブロックのような日本製のおもちゃも多く扱ってました。
ダブルデッカーやロンドンの街並をかたどった本立て等、洒落たデザインの雑貨が多かったです。

そして、セヴン・ダイヤルズを通りぬけ、コヴェント・ガーデンへ。
通りかかったボウ・ストリートにあるLa Ballerinaでランチをすることに。



私が頼んだのは、リングイネ・ペスカトーレとレモネード。
料理の写真を撮っていると「それは予備の方のカメラ?」と訊かれたので、
前日のカメラ故障の状況を話して、あとはお互いの仕事や学校の事を話し合ったのでした。

そして、いつものようにお互いのお土産を交換。
またフィンランドのお菓子&紅茶を沢山貰っちゃいました( ´ω` )v 
それに「これはもしかしたら苦手かもしれない…」という濃い味のサルミアッキ(真っ黒)も!
確かにかなり強いけど、私は割と平気(笑)。
(ちなみに私からのお土産は、和菓子とムービースターの「ホビット」特集号。)



腹ごしらえをした後は、コヴェント・ガーデン・マーケットへ。
昼を過ぎると太陽の陽射しも強くなって、朝曇っていたのが嘘みたい。



街を歩くと、派手なデザインが施された「ひつじのショーン」に出会いました。
Suviによると「ロンドンのあちこちにいるよ」とのこと。
どうやら病気で苦しむ子供たちのチャリティーのため、
有名人やデザイナーが作ったこれらの個性的なショーンたちを後でオークションにかけるようです。

マーケットの中では、初めてBenjamin Pollock's Toy Shopに立ち寄りました。



日本の駄菓子屋で売っているようなおもちゃや、"飛び出すカード"等、
昔懐かしいおもちゃばかりを取り扱っています。
紙で出来た小さい劇場は、紙芝居の大きさから、マッチ箱くらいのものまであります。
ここで暮らしたい!と思うような楽しさに溢れたお店。



この店で私が買ったのはパッケージがお洒落なブーブークッション(笑)。まだ使っていません。



"Pylones"でキッチュで鮮やかな小物を見たり、
アップルストアでApple Watchを触ってみたり、
"Paperchase"でカードや文房具を見た後、(写真は"Paperchase"で売ってた女王型スポンジ・笑)
マーケットの外側にあるモレスキンのショップにも寄りました。



日本でも買えるので、ここでノートを買うことはありませんが、
ショップごとに異なるスタンプが押せるらしく、
いつもモレスキンの3冊セットのノートを旅行先のメモ帳として持ち歩いているので、
スタンプだけ夢中で押し続けました(笑)。



(見た目が地味なので反転させてみた。)
ちゃんとロンドンやコヴェント・ガーデンにちなんだスタンプになっています。

そして、こちらも毎回必ず立ち寄る"The Cinema Store"を素見した後、
チャリング・クロス・ストリートにあるお菓子屋さん"HARDYS"でお土産を購入。
先ほどのおもちゃ屋さんと同様に、今まで何度も通ったことのある道なのに、初めて入りました。



私は同僚に頼まれていたターキッシュデライトと、家族にはロンドンの街並がデザインされたパッケージの板チョコを。
Suviはベイカー・ストリートの写真がデザインされた紅茶の缶を気に入って、
「缶にボンド・ストリートって書いてあるのに、写真はベイカー・ストリート… でもこれは買わなきゃ!」
と語気を強めて買っていました(笑)。



自分用にこんなお菓子も買いました。中に粉ラムネが入っています。
甘いラムネかと思ったらかなり強めの味。
こんなカラフルなお菓子や、バラエティに富んだチョコレート、紅茶があるので、
次回機会があれば、もっとゆっくり見てお土産を選びたいです。

2人とも夜はお互いに別のミュージカルを見る予定があったので、
それまでの時間、少し離れていますが、前回行ってすっかり気に入ったスピタルフィールズ・マーケットに行きました。

夕方過ぎてもまだお店はやっていると思い込んでしまうのが、東京暮らしの私の悪いクセ。
行ってみたものの、殆どのお店は閉店の準備をしていました。
「場所は分かったと思うから、今度は早い時間に来てみて(汗)」と言い訳しながら、
見て廻れるような、開いているお店を探す私。( ´▱`;)

「ここは日本にもあるでしょ?」と言われて、色彩豊かな雑貨が並ぶ"TIGER"の中に入ってから、
いつも行列の出来ている表参道の「フライング・タイガー・コペンハーゲン」を思い出しました。
日本では違う店舗名で展開してるんですね。
表参道で通りかかる時は「行列してまで入りたくないわー」と思っていた店ですが、
ここでは店の中にいるのはほんの数人程度で、ゆっくり見られます。
日用品からバラエティグッズまで、リーズナブルな値段なので、人気があるのもよく分かります。



残り時間は"Crêpeaffaire"でお茶して休憩。
「シャーロック」のS3の感想を話し合ったり、セルフィー・スティック(自撮り棒!)で写真撮ったり、
傾きかけた陽が暖かく差し込むベンチで、観劇までの時間を過ごしました。



数年前までは、自分がロンドンで(日本語ペラペラとはいえ)海外の友達と一緒に買い物して過ごすなんて思いも寄らなかったでしょう。
日本にいても人との付き合いなんてなかなか続かないのに、海を隔てて2年以上もやり取りが続いていて、
久しぶりに会っても緊張することなく、とても自然にリラックスして話し合えるのが不思議です。
(Suviは日本語を喋るからプレッシャーがあるかもしれないけど…)
おかげで、カメラの件の心の傷も癒えました。f^_^;

別れ際、「『さようなら』は嫌いだから『また今度』だね!」と言って、それぞれの劇場に向かいました。
次はフィンランドかもしれないし、日本かもしれないし、またロンドンかも。
いずれにしても、また一緒に過ごせる日が楽しみ。
楽しい一日をありがとう、Suvi!


次回は、"Beautiful: The Carole King Musical"を見に行った、の巻。
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