夫に事情説明を求めましたが、要領を得ません。
「知らない…わからない…」
と言いながら、脂汗をダラダラ流しています。
「わからないなら、放っておいていいんだね」
「う…ん」
「払わないよ」
「うん…自分で何とかする」
自分で…と言うのですから
しっかり心当たりがあるのでしょうが
私も首を突っ込んだばかりに
大金を失うような事態になってはたまりません。
放っておくことにしました。
離れた町に越して来て
心安らかな日々が送れるのは確かですが
全く雑音が聞こえないのも不気味なものです。
それから数日後の日曜日でした。
「今、駅にいるんですけど」
電話をかけてきたのは請求書の主…Nと名乗る女性でした。
とにかく会って話がしたいというので、仕方なく駅へ行きました。
車で待っていたNさんは、赤ん坊を負ぶい、幼児の手を引いていました。
若いですが、やつれた感じの地味な人でした。
「お呼びだてしてすみません」
「どんなご用件ですか?」
「あの…請求書をお送りしたと思うんですけど。
ご主人にも何度も請求しました」
「見ました。でも、お支払いする理由がわかりません」
「困るんです。払ってもらえないと…」
寒空の下に子供を立たせておくのも忍びないし
そこらの店へ入って話すような用件でもなさそうです。
夫も子供たちもそれぞれ出かけていた自宅へ誘いました。
「私、N工業の嫁です」
「あぁ、あそこの…」
たまにですが取引のある会社の奥さんでした。
「ご主人と交際してました」
「…」
「うちの主人、女性問題がすごくて、愛人を会社に入れたりして…」
どこかで聞いたような話もあるもんです。
「自暴自棄になっているところへ
こちらのご主人に優しくしてもらったのでつい…。
だって奥さんは九州へ行かれて別居中だったんでしょ?」
「それが350万とどういう関係が?」
「私、経理を一人でやっていたので
お宅のご主人と遊んだり旅行に行ったりするのに
ヤケになって会社のお金を使ってたんです。
同時進行で離婚することになって
調停で決まった慰謝料が200万
当面の生活費として舅が150万くれました。
それを全部、穴埋めに使ってしまったんです」
「…」
「もうじき実家に帰るんですけど
その分を返してもらえたらなと思って」
「350万全部、うちの主人が原因ですか?」
「はっきりとは計算していませんが
とにかくそれだけ足りなかったんです」
それに…Nさんは赤ん坊を抱き直して言いました。
「この子、どっちの子かわからないし…」
私もその四ヶ月になるという男の赤ちゃんのことは気になって
最初から観察していました。
しかし、夫家の血筋の特徴である濃さや骨太さ
天パーが見受けられないので、安心していたところでした。
「そのお子さんの血液型は?」
「O型です。私もO型。うちの主人もOだから
わからなくなったんですけどね」
うちの夫はB型だとでも言い張ってやれば良かったのですが
このNさんという人、あまりにも天然で
こちらも正直に対処してやりたい気持ちになりました。
「じゃあ、こちらの希望を言いますね。
まず現物支給として、うちの主人と再婚していただくというのは
どうですか?」
「あ~…」
彼女は首を振って言いました。
「私、あんまりタイプじゃないんです。
あの頃はどうかしてたんです。
うちの人じゃなければ誰でもよかったというか…。
それにもう、こちらのご主人とは別れましたから」
需要と供給は合致しないようです。
リサイクル失敗。
「知らない…わからない…」
と言いながら、脂汗をダラダラ流しています。
「わからないなら、放っておいていいんだね」
「う…ん」
「払わないよ」
「うん…自分で何とかする」
自分で…と言うのですから
しっかり心当たりがあるのでしょうが
私も首を突っ込んだばかりに
大金を失うような事態になってはたまりません。
放っておくことにしました。
離れた町に越して来て
心安らかな日々が送れるのは確かですが
全く雑音が聞こえないのも不気味なものです。
それから数日後の日曜日でした。
「今、駅にいるんですけど」
電話をかけてきたのは請求書の主…Nと名乗る女性でした。
とにかく会って話がしたいというので、仕方なく駅へ行きました。
車で待っていたNさんは、赤ん坊を負ぶい、幼児の手を引いていました。
若いですが、やつれた感じの地味な人でした。
「お呼びだてしてすみません」
「どんなご用件ですか?」
「あの…請求書をお送りしたと思うんですけど。
ご主人にも何度も請求しました」
「見ました。でも、お支払いする理由がわかりません」
「困るんです。払ってもらえないと…」
寒空の下に子供を立たせておくのも忍びないし
そこらの店へ入って話すような用件でもなさそうです。
夫も子供たちもそれぞれ出かけていた自宅へ誘いました。
「私、N工業の嫁です」
「あぁ、あそこの…」
たまにですが取引のある会社の奥さんでした。
「ご主人と交際してました」
「…」
「うちの主人、女性問題がすごくて、愛人を会社に入れたりして…」
どこかで聞いたような話もあるもんです。
「自暴自棄になっているところへ
こちらのご主人に優しくしてもらったのでつい…。
だって奥さんは九州へ行かれて別居中だったんでしょ?」
「それが350万とどういう関係が?」
「私、経理を一人でやっていたので
お宅のご主人と遊んだり旅行に行ったりするのに
ヤケになって会社のお金を使ってたんです。
同時進行で離婚することになって
調停で決まった慰謝料が200万
当面の生活費として舅が150万くれました。
それを全部、穴埋めに使ってしまったんです」
「…」
「もうじき実家に帰るんですけど
その分を返してもらえたらなと思って」
「350万全部、うちの主人が原因ですか?」
「はっきりとは計算していませんが
とにかくそれだけ足りなかったんです」
それに…Nさんは赤ん坊を抱き直して言いました。
「この子、どっちの子かわからないし…」
私もその四ヶ月になるという男の赤ちゃんのことは気になって
最初から観察していました。
しかし、夫家の血筋の特徴である濃さや骨太さ
天パーが見受けられないので、安心していたところでした。
「そのお子さんの血液型は?」
「O型です。私もO型。うちの主人もOだから
わからなくなったんですけどね」
うちの夫はB型だとでも言い張ってやれば良かったのですが
このNさんという人、あまりにも天然で
こちらも正直に対処してやりたい気持ちになりました。
「じゃあ、こちらの希望を言いますね。
まず現物支給として、うちの主人と再婚していただくというのは
どうですか?」
「あ~…」
彼女は首を振って言いました。
「私、あんまりタイプじゃないんです。
あの頃はどうかしてたんです。
うちの人じゃなければ誰でもよかったというか…。
それにもう、こちらのご主人とは別れましたから」
需要と供給は合致しないようです。
リサイクル失敗。