手術が終わり、意識不明の夫が病室に運び込まれました。
それぞれの思いから、冷やかに見つめる義母と私。
なにやらうわごとを言っています。
「今日は無理…もう少し…◎×<÷○√…」
「なんだって?何が無理だって?」
義母がいまいましそうに夫の耳元で言います。
まだ怒りがおさまっていないのです。
「今度はあの女が相手か!」
義母の尋問に
夫は知ってか知らずか、しかめっ面で首を振ります。
「…吐けっ!」
小さく、しかしドスをきかせて攻撃。
そこへ手術をした医師と看護師が説明にやって来ました。
「おや?吐き気があるようですか?」
「まぁ~おほほ…
いえ…ちょっとそう聞こえたような気が…」
義母、笑ってごまかす。
夫の枕元には膿盆が置かれました。
誰もいなくなると、再び…。
そのうち麻酔から覚めた夫は
いきなり起き上がって怒鳴りました。
「おまえら、帰れ!」
私たちはそそくさと退散したのでした。
外は薄暗くなっていました。
私は駐車券を車に置いたままなのを思い出し
印鑑をもらって無料にしようと
義母をロビーで待たせて車に戻りました。
「…」
「…」
向こうから歩いて来たE子とばったり。
出直して来たのでしょう。
車で待機していて
私たちが帰ったので、夫が連絡したのかもしれません。
「もう手術が終わって部屋にいますよ」
「そうですか…」
機械的に言って走り出すE子。
義母が待っている正面玄関でなく
通用口のほうへ行ったので、ホッとしました。
まさか不倫相手の女房に
尻の穴まで見られていようとは
夢にも思っていないでしょう。
少し気の毒な気分でした。
私はそれきり夫のところへは行きませんでした。
仕事が忙しかったし、遠いし
E子がいるので、いいだろうと思っていたのです。
E子の家から病院は近いのいです。
ついでに支払いもしてくれりゃいいのに…
しかし、数日後、夫は外出許可を取って帰って来ました。
「もう着る物がないんだぞ!」
「あれ?やってもらえないの?」
「誰にだよ」
洗濯はしてもらえないようです。
よく考えれば、旦那持ちでした。
しかし、家が無理ならコインランドリーでも…
と思うのは私の勝手でしょうか。
おいしいとこ取りだけでなく
これくらいの根性は持ってもらいたいものです。
入院中、夫は一日おきに帰って来ては
洗濯物の交換をして行きました。
E子と私が会わないように
早め早めに気を使っている様子でした。
忙しいことです。
半月後、退院して来た夫が
そっと白い封筒を差し出しました。
お礼状でもくれるのかしら…と思ったら
病院からの請求書でした。
ちっ…
それぞれの思いから、冷やかに見つめる義母と私。
なにやらうわごとを言っています。
「今日は無理…もう少し…◎×<÷○√…」
「なんだって?何が無理だって?」
義母がいまいましそうに夫の耳元で言います。
まだ怒りがおさまっていないのです。
「今度はあの女が相手か!」
義母の尋問に
夫は知ってか知らずか、しかめっ面で首を振ります。
「…吐けっ!」
小さく、しかしドスをきかせて攻撃。
そこへ手術をした医師と看護師が説明にやって来ました。
「おや?吐き気があるようですか?」
「まぁ~おほほ…
いえ…ちょっとそう聞こえたような気が…」
義母、笑ってごまかす。
夫の枕元には膿盆が置かれました。
誰もいなくなると、再び…。
そのうち麻酔から覚めた夫は
いきなり起き上がって怒鳴りました。
「おまえら、帰れ!」
私たちはそそくさと退散したのでした。
外は薄暗くなっていました。
私は駐車券を車に置いたままなのを思い出し
印鑑をもらって無料にしようと
義母をロビーで待たせて車に戻りました。
「…」
「…」
向こうから歩いて来たE子とばったり。
出直して来たのでしょう。
車で待機していて
私たちが帰ったので、夫が連絡したのかもしれません。
「もう手術が終わって部屋にいますよ」
「そうですか…」
機械的に言って走り出すE子。
義母が待っている正面玄関でなく
通用口のほうへ行ったので、ホッとしました。
まさか不倫相手の女房に
尻の穴まで見られていようとは
夢にも思っていないでしょう。
少し気の毒な気分でした。
私はそれきり夫のところへは行きませんでした。
仕事が忙しかったし、遠いし
E子がいるので、いいだろうと思っていたのです。
E子の家から病院は近いのいです。
ついでに支払いもしてくれりゃいいのに…
しかし、数日後、夫は外出許可を取って帰って来ました。
「もう着る物がないんだぞ!」
「あれ?やってもらえないの?」
「誰にだよ」
洗濯はしてもらえないようです。
よく考えれば、旦那持ちでした。
しかし、家が無理ならコインランドリーでも…
と思うのは私の勝手でしょうか。
おいしいとこ取りだけでなく
これくらいの根性は持ってもらいたいものです。
入院中、夫は一日おきに帰って来ては
洗濯物の交換をして行きました。
E子と私が会わないように
早め早めに気を使っている様子でした。
忙しいことです。
半月後、退院して来た夫が
そっと白い封筒を差し出しました。
お礼状でもくれるのかしら…と思ったら
病院からの請求書でした。
ちっ…