殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

はちあわせ

2008年11月22日 16時52分10秒 | 不倫…戦いの記録
手術は午後2時からと聞いていました。

しかし、当日は休みをとっていたので

1時間ほど早めに行きました。


早く行けば、承諾書のサインや術後の衣類の準備などが早く進行します。

夫は30分も早く、手術室へ運ばれて行きました。


3時間ほどかかると聞いていたので

私は個室のベッドの上に座ってサザエさんの漫画を読んでいました。
       

2時少し前、誰かがツカツカと慣れた様子で病室に入って来て

ベッドの周りに張り巡らせたカーテンを

いきなりサーッと大きく開けました。


「…」


          「…」




両者、状況を把握できずにお見合い。




         「…どなたですか?」



「…あの…手術は2時からじゃぁ…」

       「少し早めに行きましたよ」


「そ、そうですか。失礼します」


その女性は、そそくさと部屋を出て行きました。


          開けたカーテン、しめろよ…



見知らぬ人ではありません。

あの裸の写真の人でした。


ラブホテルらしきベッドや床の上で

横になり逆さまになり

顔を半分隠してみたり、髪を乱してみたりして写っていたので

顔はうろ覚えでしたが

ブロンズ色をした大きなドクロの指輪には

はっきりと見覚えがありました。

カエルの死体のように開いた足に添えた

右手人差し指にはめられていたものです。


カーテンが開いた時

まずそのドクロと目が合いました。

あんな奇妙な指輪をする人間は、そうたくさんはいません。


ドアの外で、なにやら大きな声がします。

そっとのぞいて見ると、その女性と義母でした。


「ちょっと!待ちなさいよっ」

 
女性が小走りに階段のほうへ向かう後ろ姿が見えました。


        そっとドアを閉める…


義母は肩で息をしながら病室へ入って来ました。


「さっきEさんがここへ来たでしょ!」

          「Eさんて?」

「赤いセーター着た、派手な人よっ!」

      「あぁ…」
 
「なによっ!声かけたのに、無視すんのよっ!」

      「誰…?」

「K病院の看護師よ。

 何しにうちの子の病室なんかへ…」


K病院は、夫の懐かしき最初の相手が勤めていた病院です。

近場のしろうとを漁る夫の恋の旅路は、振り出しに戻っていたのでした。


義母は血圧や中性脂肪の薬をもらいに

相変わらずそこへ通院しています。

買い物に次いで、義母が張り切るサロンのような場所でした。


E子はそこの看護師で、義母とも仲が良いそうです。

実家が小さな店をやっているらしく

義母は彼女に頼まれれば

宝くじや食品などを買っていたと言います。


「年賀状も、買って買って、言うから

 たくさん買ってやったのに!

 子供が三人もいて

 亭主が安月給だから大変とか言って同情させてさ! 

 それをなに?あの態度」


義母の沸点は、いつもちょいとズレています。

「何しに来たのか聞いてるんだから

 答えりゃいいじゃないの、ねぇ」



        答えられねぇだろ…



「もう何も買ってやらんっ!」



       「…お義母さんもサザエさん、読もうや」


しぶしぶ漫画を受け取った義母ですが

老眼鏡忘れたわ…とつぶやいていました。
   
コメント (2)
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