殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

うさんくさ町・字・芝居小屋

2008年11月03日 10時01分27秒 | 不倫…戦いの記録
夫が家を出て三ヶ月…

三割ほど削られてはいるものの、夫の給料は支給されており

自分のパート代と合わせるとおいしい金額になりました。


いないから…とゼロにしたら出て行かれる…

かといって全額支給もシャク…

ゼロや全額にして「生活できない」

または「申し訳ないから会社で働く」と言われるのが一番都合が悪いのです。

娘の位置が不安定になるからです。


夫がいない今、免許を取って現場で働くと言われても断れません。

取りたての女性を入れた実績があるのですから。

それがこの三割減という

生かさず殺さずの微妙な金額に現れているのは明白でした。


余計なことは言わずに

ありがたく頂戴しておくのが一番です。

あれこれ理由をつけては奪われるデート代の出費がないのは

うれしいことでした。


夫がいた頃にはごく日常的だった細かいこと…

パートからの帰りが少し遅くなると

私の洗濯物だけ取り込まれずに外でひらひら…

なにか気に入らないことがあると

間違えたふりをして犬のごはんを私の茶碗で与える…

などということも無くなり、物心両面で満たされていました。


        このまま帰って来るな…

夜空の星に心から祈る私でした。



しかし、おごる平家は久しからず。

このパラダイス生活にも暗雲が立ちこめて参りました。


        
ある晩、その男はやって来ました。

義父がここ何年か親しくしている人です。

ごま塩ロングのポニーテールに

作務衣を着込んで数珠ブレス。

いつの間にやら町に住み着いて

小商いのかたわら、自伝と思想の自費出版も一、二冊。

やたら人当たりが良くて

人格者ぶってるけど、はっきりした素性は誰も知らない…。

そう、どこの町にも一人はおられる「うさんくさいお方」。


挨拶もそこそこに、明るく本題を切り出しました。

「ご主人が、帰って来ても…いいかな~?」


        おまえはタモリか…


無反応の私に、今度はいきなり土下座。

「お願いします!お父上、お母上のお気持ちを察してあげてくださいっ!」


他人が玄関先で土下座をしても止めもせず、両親は目頭を押さえています。

臭い田舎芝居なのでした。


      「やめてください。

       ここはお義父さんの家なんだから

       帰らせたいのなら、帰らせたらいいでしょう。
  
       こういう回りくどいことをしないでください」



「じゃあ、そういうことで明日…」

おじさんはケロッとして立ち上がりました。

両親は診察後の患者のように頭を下げ

「ありがとうございました」



      なんだ、こいつら!むかつく~!


    「主人が戻ったら、私も身の振り方を考えます」


「そんなにスネないで

 また元どおり、みんなで楽しく暮らせばいいじゃん。

 僕は平和の使者なんだから。

 平和の使者が、せっかく来たんだからさ

 みんな仲良く…ネ」



            アホか…こいつ…



    「今ここで土下座に押されて

     なあなあになってしまったら

     また同じ問題で人様にご迷惑をかけるでしょう。
     
     お義父さんもお義母さんも、私に言いたいことがあるのなら

     よそへ頼まずに直接話し合えばいいんです」


両親はだまっていました。

彼らにもよくわかっているのです。

しかし、一旦息子のことはあきらめると断言したからには

私への説明と謝罪が必要です。

それに、我が子と孫を離したくない自分たちの希望を通すことは

嫁に死ねと言うのと同じ。


いつもながらボキャブラリ-の乏しさと、根拠のないプライドが

つい他人の手を借りて火に油を注ぐ行為となってしまうのでした。

そんな両親を見て、私も意固地になっていました。

なまじ天国を味わってしまったので

また元の生活に戻るのが嫌だったのです。


        「親には親の気持ちがあるでしょう。

         それはよくわかりますから

         思うようになさったらいいと思います。

         私は他人ですから

         他人としてどうすべきかを考えます」


「なにを~っ?!」

ごま塩ポニー作務衣うさんくさ男は

急に怒り出しました。

オレ様の土下座でコトが収まらないと都合が悪いようです。


「大の男に土下座までさせて、まだ勝手を言うのかっ!」



     「逆です…勝手に土下座したのはあなたでしょう」


「なんだっ!他人とか言ってえらそうに。

 うちの女房はなっ

 喧嘩しても私の家はここしか無いから

 出て行かないって言うぞ!」


     おまえの女房のことなんか知るか…



しかし、自費出版うさんくさ男としては

自分が出たからには早急に解決しなければ信用問題でした。


「ま、とりあえず息子さんと話をして

 彼の意見も聞いてみてから、僕が橋渡しをしますから」


と言うと、そそくさと帰って行ったのでした。 

 
コメント (2)
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