E子の四人目の赤ちゃんが
夫の子供かそうでないか
もう案じてみる気はありませんでした。
そんなことを心配するのは無駄というものです。
まだ起きてもいない問題を予測して気をもむのは
夫を責めたい気持ちが残っているからです。
10ヶ月前には完全に別れていたのか確かめたい。(ヤツは言わない)
反応が見たい。(ヤツは反応しない)
苦しめばいい。(ヤツは苦しまない)
もしそうだったらどうするのか、答えが聞きたい。(ヤツは考えてない)
以前の私だったら、きっとそうやって苦しんでいたでしょう。
それは、女特有の思考回路なのかもしれません。
当人たちが気にしていないのだから
こちらがあれこれ先回りして気をもむ必要はありません。
Nの赤ん坊の時に一度ひととおりは考えたので、今度は気が楽でした。
義母の知人に、ある金持ちのお妾さんがいます。
大きな家を建ててもらい、二人の間に生まれた娘を育てました。
表札は、彼の名字です。
義母がいつも通販で買っているお茶を分けてほしいということで
両親の家に同居していた頃は、時々私が届けに行っていました。
もうかなりのお年ですが
白髪を金髪に染めていつも原色の服を着た
後ずさりしそうなほど派手なおかたです。
行くといつも歓待してくれます。
一人暮らしで寂しいのでしょう。
「主人がいつ来てもくつろげるように
人づきあいは最小限にしてるの」
意地も筋金入りです。
彼女の娘は、県外の医師に嫁いでいました。
本妻の子供として。
どうしても医者と結婚させたかったからだそうです。
お見合いの前段階から、妾腹の子供という事実は隠されました。
ばれたらいけないので、結婚式には出られませんでした。
もちろん里帰りも、本家だけです。
自分は本来存在していないはずの人間なので
めったに会うことはできないそうです。
「でも、娘の幸せのためだから後悔はしてないわ。
私は主人を一筋に愛して、娘という愛の証を残したんだもの」
彼女はいつもそう言って胸を張るのでした。
たいして親しいわけでもない、ただの「お使い」の私にまで
わざわざ口に出して言うのは
自分にそう言い聞かせたいからだと思いました。
彼女の言う「主人」は、義父の友人です。
その彼が家に来た時、しみじみ言っていました。
「我が人生に悔い無しと言いたいけど
”あれ”と関係して子供を生ませたのだけは
墓場に行っても消せない汚点だよ。
うちの子たちにも申し訳なくてね。
いまさら放り出すわけにもいかなくて、面倒見てるけどね」
かたや愛、かたや汚点。
この温度差に背筋が寒くなり、思わず義母と顔を見合わせたものでした。
燃え立つ瞬間は同時でも
男女の保温機能の違いが
様々な悲劇を生む恐ろしさを知った一件でした。
囲われる立場の女性を何人か知っていますが
みんなおしゃれで家事上手
細やかな気配りのできる可愛いタイプの女性です。
そして先のことをあまり深く考えない。
自分より先に相手が死んだら生活は…なんてくよくよしないのです。
ケセラセラを地で行くのが
逆に男性の注意を引き、保護を一身に受ける秘訣かもしれません。
それがプロの愛人…。
男性というのは
自分だけが楽しめる「お店」を持ちたいという願望があるのかもしれません。
酒場だったり、隠れ宿だったり、ヒーリングルームだったり。
我が家の場合は「ママさん」の手腕がいまひとつの上
お客の払いが悪くて、もはや独身寮のおもむき…。
その器もない者に限って、高級クラブを高望みするのです。
甘いんじゃ…
さてさて、前置きが長くなりました。
夫の様子をうかがう習慣のなくなった私ですが
あらぬ方向から、不審な動きがあぶり出される結果となりました。
義母の機嫌が悪いのです。
時折電話をかけてくるのですが
話していてなんだか様子がおかしいので、聞いてみました。
「お礼を言ってほしくてあげてるんじゃないけど
息子にことづけたおせちのセットやお餅くらいは
ひとことおいしかったと言ってほしい…」
「…?」
もらい物が多いので、仲が復活してからは
義母は夫を介してよく食品を届けてくれました。
この正月は、当番出勤をしたので、両親に会っていませんでした。
そういえばこのところ、貢ぎ物が届いていません。
「悪い…知らない。でも気持ちだけ頂きますわ。
ありがとう」
「えぇ~っ?お歳暮にもらった海苔の詰め合わせはっ?
クッキーはっ?」
「知らね…」
「もしかして…ク…クリスマスのブーツも…?ケーキも?」
義母は孫が大男になった今でも
クリスマスにはケーキと
お菓子の入ったあのギンギラの紙で出来たブーツを買ってくれるのでした。
「よそでサンタさんしたんじゃないの?」
夫の子供かそうでないか
もう案じてみる気はありませんでした。
そんなことを心配するのは無駄というものです。
まだ起きてもいない問題を予測して気をもむのは
夫を責めたい気持ちが残っているからです。
10ヶ月前には完全に別れていたのか確かめたい。(ヤツは言わない)
反応が見たい。(ヤツは反応しない)
苦しめばいい。(ヤツは苦しまない)
もしそうだったらどうするのか、答えが聞きたい。(ヤツは考えてない)
以前の私だったら、きっとそうやって苦しんでいたでしょう。
それは、女特有の思考回路なのかもしれません。
当人たちが気にしていないのだから
こちらがあれこれ先回りして気をもむ必要はありません。
Nの赤ん坊の時に一度ひととおりは考えたので、今度は気が楽でした。
義母の知人に、ある金持ちのお妾さんがいます。
大きな家を建ててもらい、二人の間に生まれた娘を育てました。
表札は、彼の名字です。
義母がいつも通販で買っているお茶を分けてほしいということで
両親の家に同居していた頃は、時々私が届けに行っていました。
もうかなりのお年ですが
白髪を金髪に染めていつも原色の服を着た
後ずさりしそうなほど派手なおかたです。
行くといつも歓待してくれます。
一人暮らしで寂しいのでしょう。
「主人がいつ来てもくつろげるように
人づきあいは最小限にしてるの」
意地も筋金入りです。
彼女の娘は、県外の医師に嫁いでいました。
本妻の子供として。
どうしても医者と結婚させたかったからだそうです。
お見合いの前段階から、妾腹の子供という事実は隠されました。
ばれたらいけないので、結婚式には出られませんでした。
もちろん里帰りも、本家だけです。
自分は本来存在していないはずの人間なので
めったに会うことはできないそうです。
「でも、娘の幸せのためだから後悔はしてないわ。
私は主人を一筋に愛して、娘という愛の証を残したんだもの」
彼女はいつもそう言って胸を張るのでした。
たいして親しいわけでもない、ただの「お使い」の私にまで
わざわざ口に出して言うのは
自分にそう言い聞かせたいからだと思いました。
彼女の言う「主人」は、義父の友人です。
その彼が家に来た時、しみじみ言っていました。
「我が人生に悔い無しと言いたいけど
”あれ”と関係して子供を生ませたのだけは
墓場に行っても消せない汚点だよ。
うちの子たちにも申し訳なくてね。
いまさら放り出すわけにもいかなくて、面倒見てるけどね」
かたや愛、かたや汚点。
この温度差に背筋が寒くなり、思わず義母と顔を見合わせたものでした。
燃え立つ瞬間は同時でも
男女の保温機能の違いが
様々な悲劇を生む恐ろしさを知った一件でした。
囲われる立場の女性を何人か知っていますが
みんなおしゃれで家事上手
細やかな気配りのできる可愛いタイプの女性です。
そして先のことをあまり深く考えない。
自分より先に相手が死んだら生活は…なんてくよくよしないのです。
ケセラセラを地で行くのが
逆に男性の注意を引き、保護を一身に受ける秘訣かもしれません。
それがプロの愛人…。
男性というのは
自分だけが楽しめる「お店」を持ちたいという願望があるのかもしれません。
酒場だったり、隠れ宿だったり、ヒーリングルームだったり。
我が家の場合は「ママさん」の手腕がいまひとつの上
お客の払いが悪くて、もはや独身寮のおもむき…。
その器もない者に限って、高級クラブを高望みするのです。
甘いんじゃ…
さてさて、前置きが長くなりました。
夫の様子をうかがう習慣のなくなった私ですが
あらぬ方向から、不審な動きがあぶり出される結果となりました。
義母の機嫌が悪いのです。
時折電話をかけてくるのですが
話していてなんだか様子がおかしいので、聞いてみました。
「お礼を言ってほしくてあげてるんじゃないけど
息子にことづけたおせちのセットやお餅くらいは
ひとことおいしかったと言ってほしい…」
「…?」
もらい物が多いので、仲が復活してからは
義母は夫を介してよく食品を届けてくれました。
この正月は、当番出勤をしたので、両親に会っていませんでした。
そういえばこのところ、貢ぎ物が届いていません。
「悪い…知らない。でも気持ちだけ頂きますわ。
ありがとう」
「えぇ~っ?お歳暮にもらった海苔の詰め合わせはっ?
クッキーはっ?」
「知らね…」
「もしかして…ク…クリスマスのブーツも…?ケーキも?」
義母は孫が大男になった今でも
クリスマスにはケーキと
お菓子の入ったあのギンギラの紙で出来たブーツを買ってくれるのでした。
「よそでサンタさんしたんじゃないの?」