自慢じゃありませんが、私の根性は
あまり無いばかりか腐っています。
その頃、友人のご主人が亡くなりました。
お酒に関して問題が多かったので
美人の彼女は、美しい眉をひそめていつも言っていました。
「あなたのところは女だから、相手が必要じゃないの。
探してる間だけでも小休止できるわ。
でも、酒は…酒ときたら、どこにでも売っているのよぅ!」
なるほど…と妙に納得していた私でした。
友人のご主人は、少々酒乱のケがある上に
お酒が原因で肝臓が深刻な状態でした。
家で飲むと妻子がうるさいので
実家に泊まって飲む毎日…酒で別居というわけです。
女房が飲ましてくれないと訴えれば
親が「かわいそうに」といくらでも飲ませるのだそうです。
体のために酒を控えてほしい気持ちは
いつしか、飲むことそのものが家族への裏切り…という方向に
変換されていくようです。
彼女は離婚を決意しました。
実家暮らしのご主人のほうにも異存はなく
サインをもらって市役所へ行ったのですが
記入モレがあり、また出直すことになってそのまま帰りました。
その夜、ご主人は実家で急死しました。
籍を切ってなかった彼女は新築の自宅のローンが消え
遺族年金や各種手当て、生命保険金を手にしました。
離婚後の経済的不安が一気に解消したわけです。
「やったわ!」
彼女は心底嬉しそうでした。
そして私に言うのです。
「うちの旦那、厄年だったの。
あなたのところも、あと2、3年でしょう。
待ってみる価値あると思うわ。
今まで無茶苦茶して家族を苦しめた人間が
元気で長々と生きられるわけないわ」
とてもそんなふうには見えない…と言うと
「今まで辛抱したんだから、もう2、3年くらい何よ!」
ローンも無く、遺族年金もあまり期待できない身の上…
夫の死を望むというより
一つの区切りとして、それまで様子を見てもいいかな…と考えました。
神様が本当にいるなら、夫をそのままにしておくはずはない…
とも思いました。
さて、350万円を欲しがっているNですが
片方の言うことだけを聞いて支払う馬鹿はいません。
夫の帰りを待って話を聞いた上で
またこちらの意向を連絡するということで、帰ってもらいました。
夜、帰宅した夫に話すと
「そんなに使ってない…」
「じゃあ、使ったことは使ったんだね?」
「あいつが旦那に浮気されて悲しんでいたから
旅行やなんかにつきあってやってただけだ」
「あっちは子連れで?」
「うん。置いて行くわけにいかないだろう」
「自分の子は留守番させて?」
「一緒にってわけにいかないだろ」
そりゃまあ、そうだけど…
よその家族と父親気取りで遊び歩いていたのか…
Nのお産をはさんで今までつきあっていたのか…
我が子とお産に関することとなると、野生の血が騒ぐというか
コントロールがきかなくなるのに驚きですが
私も居なかったのですから、大きなことは言えません。
そんな私の気持ちに気付いてか
「行きがかり上…っていうのを
わざとと、とらえないでくれよ」
夫は予防線を張ります。
「金の要求をしてくるなんて…。
離婚の相談にのってやったり、いろいろしてやったのに
フトいヤツだ…」
「よその離婚に首突っ込んでる段じゃないだろっ!」
法律に詳しいわけではありませんが
Nの要求に多少無理があるのはわかります。
Nは夫に甘えているのです。
なんとなくかわいらしいと思ってしまうのは
ついしたたかなI子と比べてしまうからかもしれません。
夫は二股かけているうちに、自然とI子から離れたようでした。
とにかく新しいのがいいのです。
数日後、Nから電話がありました。
「あの、お金のことですけど、もういいです」
「え…?」
「よく考えたら、私の横領から始まったことだし
もし大きいことになったら、私、奥さんからも訴えられますよね」
「そんな気はありませんよ。面倒臭いから」
「私、なんだか、そちらへうかがったことでスッとしました。
請求書送った時は、私一人だけ損してるみたいな気持ちになってたんです。
ごめんなさい。忘れてください」
あんたはスッとしたろうけど…
いらないと言われれば払いたくなるような気持ちを押さえながら
長いことおしゃべりしていました。
以後、時々Nから連絡があります。
すっかり友達になってしまったような錯覚が今も続いています。
もう大きくなってしまったあの赤ちゃんは、夫の子ではなかったようです。
あまり無いばかりか腐っています。
その頃、友人のご主人が亡くなりました。
お酒に関して問題が多かったので
美人の彼女は、美しい眉をひそめていつも言っていました。
「あなたのところは女だから、相手が必要じゃないの。
探してる間だけでも小休止できるわ。
でも、酒は…酒ときたら、どこにでも売っているのよぅ!」
なるほど…と妙に納得していた私でした。
友人のご主人は、少々酒乱のケがある上に
お酒が原因で肝臓が深刻な状態でした。
家で飲むと妻子がうるさいので
実家に泊まって飲む毎日…酒で別居というわけです。
女房が飲ましてくれないと訴えれば
親が「かわいそうに」といくらでも飲ませるのだそうです。
体のために酒を控えてほしい気持ちは
いつしか、飲むことそのものが家族への裏切り…という方向に
変換されていくようです。
彼女は離婚を決意しました。
実家暮らしのご主人のほうにも異存はなく
サインをもらって市役所へ行ったのですが
記入モレがあり、また出直すことになってそのまま帰りました。
その夜、ご主人は実家で急死しました。
籍を切ってなかった彼女は新築の自宅のローンが消え
遺族年金や各種手当て、生命保険金を手にしました。
離婚後の経済的不安が一気に解消したわけです。
「やったわ!」
彼女は心底嬉しそうでした。
そして私に言うのです。
「うちの旦那、厄年だったの。
あなたのところも、あと2、3年でしょう。
待ってみる価値あると思うわ。
今まで無茶苦茶して家族を苦しめた人間が
元気で長々と生きられるわけないわ」
とてもそんなふうには見えない…と言うと
「今まで辛抱したんだから、もう2、3年くらい何よ!」
ローンも無く、遺族年金もあまり期待できない身の上…
夫の死を望むというより
一つの区切りとして、それまで様子を見てもいいかな…と考えました。
神様が本当にいるなら、夫をそのままにしておくはずはない…
とも思いました。
さて、350万円を欲しがっているNですが
片方の言うことだけを聞いて支払う馬鹿はいません。
夫の帰りを待って話を聞いた上で
またこちらの意向を連絡するということで、帰ってもらいました。
夜、帰宅した夫に話すと
「そんなに使ってない…」
「じゃあ、使ったことは使ったんだね?」
「あいつが旦那に浮気されて悲しんでいたから
旅行やなんかにつきあってやってただけだ」
「あっちは子連れで?」
「うん。置いて行くわけにいかないだろう」
「自分の子は留守番させて?」
「一緒にってわけにいかないだろ」
そりゃまあ、そうだけど…
よその家族と父親気取りで遊び歩いていたのか…
Nのお産をはさんで今までつきあっていたのか…
我が子とお産に関することとなると、野生の血が騒ぐというか
コントロールがきかなくなるのに驚きですが
私も居なかったのですから、大きなことは言えません。
そんな私の気持ちに気付いてか
「行きがかり上…っていうのを
わざとと、とらえないでくれよ」
夫は予防線を張ります。
「金の要求をしてくるなんて…。
離婚の相談にのってやったり、いろいろしてやったのに
フトいヤツだ…」
「よその離婚に首突っ込んでる段じゃないだろっ!」
法律に詳しいわけではありませんが
Nの要求に多少無理があるのはわかります。
Nは夫に甘えているのです。
なんとなくかわいらしいと思ってしまうのは
ついしたたかなI子と比べてしまうからかもしれません。
夫は二股かけているうちに、自然とI子から離れたようでした。
とにかく新しいのがいいのです。
数日後、Nから電話がありました。
「あの、お金のことですけど、もういいです」
「え…?」
「よく考えたら、私の横領から始まったことだし
もし大きいことになったら、私、奥さんからも訴えられますよね」
「そんな気はありませんよ。面倒臭いから」
「私、なんだか、そちらへうかがったことでスッとしました。
請求書送った時は、私一人だけ損してるみたいな気持ちになってたんです。
ごめんなさい。忘れてください」
あんたはスッとしたろうけど…
いらないと言われれば払いたくなるような気持ちを押さえながら
長いことおしゃべりしていました。
以後、時々Nから連絡があります。
すっかり友達になってしまったような錯覚が今も続いています。
もう大きくなってしまったあの赤ちゃんは、夫の子ではなかったようです。