The Game is Afoot

ミステリ関連を中心に 海外ドラマ、映画、小説等々思いつくまま書いています。

ビリー・ワイルダー版「シャーロック・ホームズの冒険」 : 最後に

2016-06-13 | ビリー・ワイルダー版S・ホームズ
― ”The Private Life of Sherlock Holmes”  ― 
ビリー・ワイルダー版 「シャーロック・ホームズの冒険」:感想追加とSpecial Featuresに関して少々




冒頭で書きました様に、この作品を初めて見たのは随分昔の事だったのですが妙に気に
入っておりました。 
その後BBC版Sherlockに嵌りこみ、正典の読み直し、グラナダ版の観直し等繰り返して
いた後 改めてこの作品を見た時に又違った目で見る様になってきました。
そして今回の「忌まわしき花嫁」を観た時に 又新たに色々思い返す点、気付いた点が出
て来たので DVDで詳細に見直す事にした訳ですが、いや~予想以上でした。 今回初
めて気付いた点も多く 新鮮な目で見る事が出来ました。

何より、ワイルダー監督の正典に対する敬愛を感じ、単なるコメディータッチのパスティー
シュとは言えない細かい拘りを感じたと共に、BBC版でのモファティスがこの作品を如何
に愛しているかオマージュ感が只事では無いですね。
コミカルな部分を含み、ワイルダーらしいシャレたセリフも盛り込み、そしてタイトルにもあ
る様にホームズの私生活を描いている盛り沢山の内容でした。
ただ・・・・ これも最初に書いたのですが、ホームズ役がねぇ~。 どうもイメージが違うん
ですよ。 キリッとしたシャープさに欠けるというかね。 これは好みの問題かもしれないし、
メイクのせいもあるかしらって感じもあるんですけど(厚塗り、アイシャドー濃い)これも当時
の傾向なのかも知れないと感じつつ、コミカルな役処をこなしたワトソンの方が印象が強くってね。
何かと邪険に扱われながらもホームズの事を気に掛けるワトソンが凄く良かったです。
そして、何と言ってもマイクロフトは素敵でした。決まってます。
何やかんや言っても40年以上前の作品ですから、グダグダ言っても仕方ないですね(笑)

粗筋の途中で気付いた点を少しずつ書き込んでは来ましたが、一番感じた事はBBC版 ”A Scandal
of Belgravia” 「ベルグレーヴィアの醜聞」のアイリーン・アドラーはキャラクター及び設定
を含めほとんどがこの作品のオマージュだと感じました。
この作品でのイルゼは多分正典のアイリーンをイメージしているのではないかと思いますが、
ワイルダー監督は正典アイリーンのキャラクターを膨らませ、よりドラマチックな展開にして
います。
2人の類まれな知性の競い合いと 、強い自信に満ちた女性に対す淡い恋心を伴った敬愛を持ち
ながら そんな女性に欺かれる、そして異国で処刑された事がマイクロフトによってホームズに
伝えられる、衝撃を受けたホームズが窓辺に佇む後姿・・・・これら全てBBC版に踏襲されて
います。 例の ”The Woman” と呟くシーンですね。

アイリーン・アドラーと云えば、以前から何度も載せた事があるのですが、あのホームズの
懐中時計に入れられている写真に関して、ず~っとアイリーンだと思い込んでいたんですよ。
でも、今回改めて観ていると、どうやらアイリーンではなさそうですね。
イルゼかとも思われるけど、チョット若い様な気もするので 若くして先立った婚約者なのかしら?
とも思われます。


それと、これも改めて良く観ていると、ワトソンの私物ボックスにあったホームズの遺品の中に
ある楽譜には、”For Ilse von H.” (Sherlock Holmes)「イルゼ・フォン・H.に捧ぐ」となって
います。 やはりホームズはイルゼに対しては心に秘めた想いがあったんだな、と改めて切ないし、
そう言えば BBC版でもシャーロックはアイリーンの曲を作曲してましたねぇ。



ヴィクトリア女王登場は 「新ロシア版名探偵シャーロック・ホームズ」にも踏襲されていました。
女王と云えば、チョット気になったのが マイクロフトが女王に対して ”Ma'am "と言っている
のですが、女王なら ”Her Magesty “ と云うべきなのではないかしら?
と些細な事ですが・・・ただ、この敬称は ジョージ5世が定めた勅許状が基本的な指針となるとの
事(らしい)ので、時代設定的には問題ないのかとも思いましたが、本当はどうなのか良く分かり
ません(スミマセン)

他にもまだまだ書き洩らしている点もあるかも知れませんが、 取りあえずこの辺にして・・・・
DVDにはSpecial Featuresが収録されていて、これは今回初めて観る機会を得ました。
サー・クリストファーのインタビュ-等幾つか収録されている中で 一番興味深かったのは
カットされた部分が一部紹介されていた点でしたね。
実際に撮影されたのは4時間近かったのに殆ど半分になってしまった訳で、その削除さ
れた部分がこれまた面白そうなのです。 

カットされたエピソードは、
※ ”The Curious Case of the Upside Down Room” 「逆さまの部屋の珍事件」
※ ”Holmes Recounts an Affairs of the Past”「私生活の秘密 :学生時代を語るホームズ」
※ ”The Dreadful Business of the Naked honeymoners”「裸のハネムーンカップルにご用心」

どれもコメディー色が強く出ているエピソードだそうですが、いずれにしても勿体無いと思います。
観てみたかったです!
モファット氏は 「まるでシャーロッキアンへのヴァレンタインギフトだよ!!」と語っていた様
ですが、自身が筋金入りのシャーロッキアンであったワイルダー監督だからこそこんなに素敵な
パスティーシュを作ったんですね。  凄いです!!


↑ ワトソンのトルコ帽はグラナダ版「空き家の冒険」でも引用されていたのですが、正典の何処かに
書かれていたのか全く記憶にないのです・・・・


↑ 何といっても感動したのはこのシーン。 ワイルダー監督ちゃんとこのシーン撮影していたんです。

これは以前何度も載せた事があるのですが、正典「白銀号事件」のパジェット版挿絵にある場面で
グラナダ版も同じ場面を使っていました。
 
そして、BBC版「忌まわしき花嫁でも」(何度も同じ画像ばかり載せてスミマセン!)



参考までに、この作品のノベライズも出ています。
「シャーロック・ホームズの優雅な生活」 創元推理(東京創元社)刊
かなり良く書かれているとの事ですが、未読です。

改めてSharlock のこれまでのシーズンを又観直してみようかな? 多分又違った視点で見られる
のではないかと思います。

最後にワイルダー監督を含む撮影中の画像です。


今度こそ、これで終わります。
思い入れが多く随分長くなってしまいましたが、お付き合い頂き有難うございました。




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9 コメント

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驚きました! (かいと)
2016-06-15 19:41:25
今晩は。 実は昨晩コメント入れようとしたらどうしても接続出来ずどうしたのかと悩んでいたのですが、後でこちらのブログのメンテナンスだった様だと知りました。今日は通常通りだったので一安心(笑い)
所で、長丁場お疲れ様でした。
丁寧に説明して頂いたので お蔭さまで実際にこの作品を見ていない私にも詳細理解出来ました。 以前伺ってはいたのですが、思った以上にBBC版への影響が大きい事を知り驚きと同時に感動さえ覚えました。 特に、ベルグレーヴィアはオマージュ度が大きいんですね。色々と思い出しながら読ませて頂きました。それにしても映像関係者にはシャーロッキアンが多いんですね。改めてこの作品見たくなりました。又何時かテレビで見られるのを待ってみます。
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私も驚きました (Ocicat)
2016-06-16 16:03:05
かいとさん、こんにちは。
一昨日の件ですね、そうなんですよ。goo blogのメンテナンスだったんです。
ワタクシも夜ログインしようとしたら全くイン出来ずビックリしました。 結局メンテ後のアク
セス集中の為なんだろうと 早々に諦めましたので、一昨日は一度もログインせずって状
態でした。

ワイルダー版、長々お付き合い頂き 何より有難いコメントを頂き嬉しい限りです。
この作品を見た後、再度BBC版を見ると又新たな気付きがあるかも知れませんね
シャーロッキアンには及びもしませんけど ワタクシも子供の頃から好きで慣れ親しんだ
シャーロック・ホームズは奥が深いです。
これからも拘って行くと思いますので、又ご意見ご指摘頂ければ励みになります。
よろしくお付き合い頂下さいませね♪
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お疲れ様です! (Misty)
2016-06-16 20:45:47
こんばんは。
まとめお疲れ様です!本当に、ワイルダー監督のこだわりやモファティスのこれでもかというオマージュが発見できて楽しませていただきました。

イルゼが去っていく時の表情、本当に美しいですね…改めて画像を見せていただくと、しみじみと感じられました。そう言えば、以前どこかのモファティスのインタビューか何かで、Γベルグレービア」の最後でシャーロックにアイリーンを助けさせたのは、この映画で最後にイルゼが処刑されてしまったことが残念だったから、自分達の話では助けたかった…みたいな話があったと思うんです。ソースもちゃんと思い出せないあやふやな話で申し訳ないんですけど。

懐中時計の写真は私もてっきりアイリーンだと思ってましたが、確かによく見ると何だか若くて可愛い感じの女性ですよね。元婚約者とかだったら、本当にこのホームズは女性に興味がないというより、単に女運がなかったということかも?

削除された部分、見てみたかったですね~どれもすごく面白そうなタイトルだし。残念です!

ところで、Γルイス」なんですが、2話まで見ました。ハサウェイ…ルイスがいなくなって大丈夫なんでしょうか…上司にも心配されてましたが(笑)でも、かなり成長したのかな。家族とのわだかまりを克服しつつあるようなのも、ルイスのおかげですね。明日ぐらいには最終話見られるかなと思います。Yam Yamさんの感想もお聞きしたいので、できたらそのうち記事にしてくださいね♪
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ご覧頂き感謝です! (Ocicat)
2016-06-17 17:24:42
Mistyさん、こんにちは~!
長々書いてしまいましたが お付き合い下さいまして有難うございました♪
でも、久し振りにジックリこの作品に触れられて自分でもとても楽しみました。

アイリーンの最後に関するモファティスの話・・・そんな事言っていたんですかぁ。 知りま
せんでしたよ。
でも、あの最後に関してはアレですね、放送直後から何度も出ていた「あれはアイリーン
が見た最後の夢だった」説、時々再燃するようで、最近も何処かで湧き出ていましたよ。
ベネディクトが色々あからさまに繰り返して言っていたけど、あの設定は「実際はどうだっ
たんだろう?」って妄想に留める方が良い様に思うんです。 設定自体ツッコミどころ満載
だしね(笑)

そして、そうなんですよ、あの懐中時計の写真は今回初めて気付きました。
>このホームズは女性に興味がないというより、単に女運がなかったということかも?
わはッ! ホントにね。 仰る通りかも。 傷つく事が多かったから女性不信になったのか
も知れませんね。 可哀想で益々悲哀が漂います。

「ルイス」とうとう終わってしまいました(涙)
もう最後ご覧になったでしょうか? 寂しいです。
でも、最後があまり辛い終わり方でなくて一安心です。 なんか又続きを制作するのも可
能かと感じさせるラストシーンでした。 でも、「モース」と同じ33話で幕を引く決心をしたケ
ヴィン父さんの英断に敬意を表したいです。
最近の再放送でも「モース」の最終回を何度か観てしまったのですが、もう観る度胸が痛
くなり涙、涙です。(何度見てもね)
ハサウェイの姿が凄く寂しそうだったけど、良い終わり方だったと思います。
そう言えば最終話にアノ「メアリーの元カレ」デイヴィッドが出てましたね。
S9再度ODで観直そうと思っています。

あれ?Mistyさんが感想書いて下さるもんと期待しているんですけど・・・・

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デイビットー! (Misty)
2016-06-18 12:20:37
こんにちは。
ルイス見終わりました♪
それにしてもデイビット!!Yam Yamさんに教えてもらうまで分かっていませんでした~“なんかこの人見たことあるような…?”としか思ってなかった大ボケな私です(汗)大学教授でもっとパリッとした感じだし…印象全然違って。そう考えると、やっぱり役者さんってすごいですね。いや、これなら黒幕説十分いけますよ!…とか、余計なことまで考えてしまいました。それにしても、役名デイビットって偶然なのか脚本の遊び心なのか…局が違いますけどね(笑)

ラスト、すごくさりげなくて、かえってしみじみしました。一度は行かないと決めたルイスにΓ行くべきです」と言ったのがハサウェイだというのもね…この二人の関係って、さりげなくお互いを思いやったりサポートしながら、つかず離れず、でも深く信頼しあっている…という感じで、ある意味現実的に理想の形なのかな~という気もしました。シャーロックみたいにエキサイティングではないかもしれないけど、最後まで事件は事件としてなかなか面白く、二人もしっかりと静かな絆で結ばれている感じで、寂しいけど穏やかな気持ちで見られました。

…って、ここで感想書かせてもらって気がすんじゃった気もしますが(笑)ちょっとぐらい感想書くかも知れませんけど、分かりません~Yam Yamさんこそ、お願いしますよ!

ところで、Γベルグレービア」のラストは、私も個人的な好みとしては曖昧なままの方がいいなと思ってます。アイリーンの最後の夢というか妄想?というの、いいですね~モファティスの話はソースもはっきり思い出せないし、聞かなかったことにしておいてください。(すみません…今さら?)ともかくベネさんの案は一番やめて欲しいです(涙)
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すみません、重複したような… (Misty)
2016-06-18 12:25:08
今投稿したコメント、重複してるような…反応が遅いから二回ボタンを押してしまったせいだと思うんですが。すみません…ひとつ削除お願いします。
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デイヴィト~! (Ocicat)
2016-06-18 16:51:55
Mistyさん、こんにちは~!
暑いですねぇ。 って、あれ?Mistyさんのお住まいの地方はどうですか?

ところで、ルイス見終ったんですね? 早かったですね(笑)
ラスト、仰る通りですね、さり気なくて却って感慨深いです。
ルイスとハサウェイの関係は お互いを思いやる気持ちと信頼感が徐々に深まって行き 
なんかホントに理想的ですね。 言葉の端々にさり気なく気持ちが表現されていて、ずっと
思っていたし、何度も書いたように このドラマの良さはセリフの良さもあった様に思いま
す。 オシャレだし、楽しいし・・・2人の掛け合いがホントに良かったな~と改めて感じさせ
られました。
デイヴィッド!でしょ? 大分印象が違って きりっとしていたので同じ人の様に見えな
かったですよね。 やはり英国の役者さんって皆凄いです。(AXNミステリーが特集を組
むのも理解出来ますね)。 そうそう、黒幕説ね(笑)、結構いけそうですね。

私も又観直して、頭を冷やしてから書くかも(かも・・・です)知れませんが Mistyさんも機
会があったら是非!

「ベルグレーヴィア」のベネディクト説は私も却下です。 何故かあの説に拘ってましたね、
何度も言っていたし・・・。 時々意固地になってませんか?あの方。
そう言えば(って、又話が逸れますが)、「忌まわしき花嫁」のBehind the scenesで撮影
の合間にベネディクトがズボンを脱ぎながらストリップティーズをやっている映像ご覧にな
りましたか? 先日偶然見つけてひっくり返りました(笑) 何やってるんでしょう、あの方
は・・・

あ、それからダブリの分削除させて頂きました。 全然気になさらずに。私もたまにやっ
ちゃうんです(汗)
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ベネディクトのストリップ (Misty)
2016-06-19 23:07:03
こんばんは。
暑いですね~もちろん、うちの辺りも暑いですよ~
暑さに弱いので、妙に疲れた感じがします。

ベネディクトのストリップ…見ましたよ~私も最近になって見たんですが。まぁ楽しく撮影してるんだな~というのはいいんですけど、いつもあんな調子なんでしょうか?私あんまり撮影中のことを知らないのでよく分からないんですが。

私が気になったのは…ちょっと脚が…太もも辺りが…ピチピチに見えたんですけど…あれは筋肉?それとも…あんまり深く考えない方がいいでしょうか。

意固地になったベネディクトがモファティス相手に“シャーロックを女性と幸せに”キャンペーンしてないかちょっと心配なんですけど…これも、あんまり考え過ぎずに待つしかないでしょうかね。
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ベネディクトのストリップ (Ocicat)
2016-06-20 16:57:11
Mistyさん、こんにちは~!
先ず最初に 返信を強要する様なコメントを書いて申し訳ありませんでした(汗)
有難いコメントを頂き、ついつい嬉しくて色々書いてしまい Mistyさんに気を使わ
せてしまってゴメンナサイ・・・反省しています。 お許しを!

ところで、ベネディクトのストリップ。 ご覧になったんですね。
今迄の撮影Behind the scenesも結構楽しんでいるみたいだけど、あれはチョット
ね。 サービス精神旺盛なのか、それとも・・・・

あ、やはり気になりましたか? 太ももピチピチでしたよね。
私もチョット、あれ?だったんですけど・・・ あの頃から既にキテたんでしょうか?
なんかねぇ、昔のあのスリムでたおやかなお姿は何処へ~! でも、見なかった事
気付かなかった事にしましょうね(涙)。

”シャーロックを女性と幸せにキャンペーン”? なんかやりそうで怖いです。
又ジャニーン? 赤いドレスの女性?
色々想像、妄想すると怖い事、心配な事ばかり出て来るんですけど、待つしかない
ですね。 もうまな板の上の鯉(あれ?違うか)。
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